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06.死を見つめて---「もう一人のわたし」より

B:「もし、わたしがいつか死んだら、きみはどうなるの?」
A:「私たちは元の状態に戻るじゃないの?」
「ほら、死というのは、消滅することではなく、別の状態で生き続けると思うよ。」
B:「本当にそうであるなら嬉しいね。でも、それは誰も知らないじゃない?」
「だって、いったん死んだらそれきりで、あそこにいるとしても、帰って来て死後の世界を語ることはないだろう?」
A:「まあ、理論的にはそうだけど、最近は死後の世界を証明する科学的な実験とかいろいろ進んでいるよ、海外とかでもすごく話題になって。」
B:「そういえば確かに。でもそれ、人にも依るんじゃない?」
「ある人が別の世界を見えるが、他の人がそうではない、こんなケースもある。も、もし世界中の科学者たちが協力しあって、死後の世界を解明できるようなテクノロジーを開発したら、世界中のみんなにとってすごいことになるのにね!」
A:「そうだ、科学者はもっとこの方向に向かうべきだとわたしも思う。」
「亡くなった家族・友人・ペットがあの世界でどうやって暮らしているかが分かるし、そしてあの世のメカニズムまで究明できるかも。あるいは、死後の世界なんか一切ない、死んだら何もないことをはっきり証明できたなら、人々も天国や極楽への憧れをきっぱり切り捨てて、まじめにこの生を愉しむのでは?」
B:「全く同感だ。同じくテクノロジーであるのに、これまれはほら、医療のような死を減少させる、あるいは武器のように死を創るモノばかり開発されてきて、なんで死そのものについてもっと関心を寄せないのかな?」
A:「人間という連中はこんなもんだよ。このな風にプログラムされたんだから。」
「進化もあり得るが、稀にね。」
B:「もしわたしが科学者になれたらいいな。でもこの頭には難しすぎるよ、あれ程の数式とか、専門用語とか。」「とはいえ、彼らにもっぱら頼る気にならないし。だから悩ましくて、君に語りかけるほかないさ。」
A:「あやふやな感じ、するね。死というこのミステリーが晴れるといいな。でもそれが謎であるからこそ、ヴェールに包まれたような、一層芸術的なものじゃない?」
B:「もの悲しくても一握りの希望を捨てないみたいな感じだね。」
「そうね、もしすべてのことがはっきりとしていたなら、逆に意味なさそう。それに、何かを探し求めることこそ、この生に与えられた使命ではないのか?でもやっぱり、会いたいな。」(Aを見つめる)
A:「きっと会えるよ、そのうち。その日が来るまで、何か大切なものが見つかるといいね。」
B:「うん、」
A、B:「一緒に探そう。」