見出し画像

ビジネスレザーファクトリーの新たな挑戦_世界で通用するブランドになるために

ボーダレス・ジャパンが運営するバングラデシュの貧困問題を解決する革製品ブランド「ビジネスレザーファクトリー」は、これから新たな価値創出に向けて新たにCMO・COOを迎え共同代表制を取り入れることを決めました。

本記事では、ビジネスレザーファクトリーが挑む新たな「価値創出」と「新経営体制」についてお届けします。

※先日開催したキャリア採用説明会でお話した内容を記事化したものです

ビジネスレザーファクトリー誕生の背景

ビジネスレザーファクトリーが生産工場を構えるバングラデシュは、北海道の1.5倍ほどの面積に1億6000万人が暮らすとても過密な国です。農村での暮らしは厳しいため、狭い国土の中でも都市部に人口が集中し、失業率が非常に高いという課題を抱えています。中でも厳しい状態に置かれているのが、就学や就労経験がない若者やシングルマザー、障がいのある方といった雇用されにくい貧困層の人々です。

もしみなさんが、工場の経営者だったとして、次の方が「雇ってほしい」と工場にやってきたらどうしますか?

“シングルマザーで小さい子どもがいます。家族に身寄りがないため、託児所がないと働くことができません。働いた経験もなく、読み書きもできません。足に障がいがあり、ミシンを踏んだこともありません。”

彼女のような方が来た時に、皆さんは採用しますか?

実際はとても難しいと思います。なぜかというと、皆さんが悪い人というわけではなく、彼女のような方を採用すると、効率よく製造できないからです。

例えばTシャツを生産し、回転率の高いショッピングモールのようなところに納品する際に「障がいのある方を雇っていて、少し効率が落ちるため価格が高くなりますが、よろしくお願いします」と言ってもそうはいきません。「価格が高くなるなら、他の工場にお願いしますね。」と断られてしまう場合がほとんどです。

効率よく働けない、非効率な方たちが社会に置いてけぼりになっていくという実情があります。しかし、そういった方たちにも「自立して暮らしていきたい」という思いがあります。

そこで、就労に困難を抱える人に雇用を作るビジネスをやろうと決め、立ち上がったのが、「ビジネスレザーファクトリー(ビジレザ)」です。バングラデシュでのビジネスを考えたとき、注目したのが「牛」です。人口の約99%がイスラム教徒のバングラデシュでは、イードという宗教的な儀式があり、年に1回牛を神様に捧げます。日頃お肉を食べられない貧しい人たちにも分け与え、お肉をすべてしっかり食べた後、大量に出るのが牛皮です。

バングラデシュの「牛革」と日本の技術をコラボレーション

イードの後に大量に出る牛皮はバングラデシュ現地の資源になります。バングラデシュはアパレルで有名ですが、綿などを栽培する土地がないため、中国やインドから輸入し、加工賃を乗せて販売しています。このやり方では、バングラデシュへの収入は加工賃の部分のみになります。

しかし、牛皮という元々ある資源を使った商品を作れば、全てバングラデシュの収入になります。そして、イスラム教徒が多いバングラデシュにおいて、宗教的儀式で出される牛革を提供する役割を果たしていくことは、この国の可能性なんじゃないかと感じました。

僕らが事業を始めた15年ほど前、牛皮自体が原皮のままイタリアに輸出され、イタリアンレザーといった形で革靴に使用されることはありました。しかし、付加価値が全く乗らない状態で輸出するのではなく、この国で最後の商品づくりまで行なうことで、一つの産業を作れるんじゃないかと考えたんです。

最初は、革製品を作れる工場を探し、商品を発注して雇用を創出する商社のような役割を考えていました。多くの工場を見て回りましたが、そこにあったのは劣悪な労働環境でした。

働く人たちが全然幸せそうではなく、「ここに発注を多くして、いい雇用がたくさん作れるのだろうか」という違和感を抱きました。そこで、いい雇用を作るために自分たちで工場を作ることにしました。

他の工場が雇わないような障害がある方、子連れ出勤が必要なシングルマザーの方、 就労経験がなく、田舎から出稼ぎをして仕送りをする若い人たちに絞って採用する。既存の工場と違って安心して安全に働ける環境、そして確実に安定した収入が得られる、そういう工場を作ることにしました。

ところが、私たちは物づくりの初心者で、集まってくる人たちも全員未経験でした。そこで、日本の野村製作所という有名なハイブランドの生産を一手に引き受けるOEM会社に技術を学ぶために丁稚奉公に入りました。その技術をバングラデシュに持ち帰り、立ち上げたのがビジレザの工場です。

そのため、私たちはバングラデシュで全ての商品を作っていますが、プロダクトには日本の技術が満載です。 例えば、名刺入れの角の形が菊の花のようになっているのは、「菊寄せ」という技術を施しています。

ソーシャルインパクトは、どれだけの「雇用」を生み出せるか

働くことに困難を抱える人たちを採用するため、非効率でも工場経営として成り立つ仕組みを追求し続けてきた15年間でした。革製品を選んだ理由の一つに、革製品の生産工程の多さにあります。革を裁断し、1個1個のパーツを組み立てながら、ミシンで縫い、仕上げをしていく。そういった工程の多さは、多くの仕事つまり雇用を生むことができます。

工程を細分化し、いろいろなレベルの仕事ができるようになる独自の生産ラインを構成しました。就労経験がない方たちが入ってくるため、チームを作り、見習いをチームでトレーニングしながら、みんなで高め合っていくという形で、一人一人が技術者としてステップアップしていける体制を作りました。

働く人のサポート体制も充実させています。障がいがある方が車いすの状態で働ける環境を一人一人に合わせて作ったり、シングルマザーの方たちが働けるように託児所を運営したり。設備だけではなく、育児にかかる費用や学校への入学費用といった生活のサポートを行ない、働くだけでなく、機会提供や支援体制を整えています。

バングラデシュで作った製品をOEMという形で提供していくと、品質が非常によかったとしても、価格競争になった時にどうしても選ばれないことがあります。そこで、自分たちのプロダクトを最後の販売の部分までやっていこうと決め、オリジナルブランドの「ビジネスレザーファクトリー」が生まれました。

現在沖縄から北海道まで、全国19店舗を展開しています。1店舗できるたびに、30名から50名の雇用を作ることができ、僕らの事業は本当にバングラデシュの雇用創出に直結しています。

ビジネスレザーファクトリーは「日本一のエシカルブランド」へ

ビジネスレザーファクトリー(以下、ビジレザ)が、これからやりたいことはとてもシンプルです。

それは、「みんなが知っている日本一のエシカルブランドになる」こと。

ビジレザは多くのお客様にご愛用いただき、街を歩いていても商品を見かけることが増えてきました。商品の良さはもちろん、店舗のスタッフの丁寧な接客のファンになっていただいているケースがほとんどです。

私たちは、今までビジレザの商品がバングラデシュの貧困問題を解決することにつながるということを、あえて表に打ち出してきませんでした。社会貢献の意識で最初に購入いただくと、リピートされないのではないかと考えたからです。まずは「商品やサービスが素晴らしい」という思いをもって買ってもらうことが、工場で働く彼らの職人としてのプライドのためにも大切だと思ったんです。

しかし、これからは商品や接客サービスの良さに加え「エシカルな消費選択」を実現できるブランドとして打ち出していこうと思っています。エシカル消費の大切さはよく言われていますが、日常の中にエシカルな選択肢が並んでいないと、 なかなか実現することができません。

「まずは商品を知ってもらい、その後にエシカルについてを知ってもらえばいい」という考えは、とても事業的判断だったと思っています。本当にエシカル消費を社会に推進していくには、改めて「これはエシカルなプロダクトなんだ」と伝え、選択肢にしてほしいというプレイヤーが出てくることが大切なんじゃないかと思っています。ビジレザなら、その役割を果たせると考え、エシカルを大きく打ち出すことを決めました。

エシカルな取り組みを実現し、世界に通用するブランドに

ここからは、ビジレザのエシカルとは何を指すのかお話していきます。。まずは、前編でも紹介した働き手の話があります。そして、新たに3つのエシカルを実現していこうと思っています。

1つはジェンダーレスな商品。男性や女性の他にも、「いろいろな性があっていい」という考え方において、ジェンダーレスなデザインを追求し推進することにプロダクトチームで取り組んでいきます。

2つ目は、最近ヨーロッパを中心に注目されている「Right to repair(修理する権利)」です。例えば、スマホのカメラが壊れた時に、本当はカメラ機能だけ変えればいいにも関わらず、 スマホ自体を変えないといけない。買い替えることで売上を生み出すやり方ではなく、パーツ交換といった修理する権利があるべきだという考え方です。そこで、私たちは全てのプロダクトをリペアブルプロダクトに変えていこうとしています。

例えば、バッグ。僕たちはプロダクトのクオリティにとてもこだわっているので、YKKの高品質なチャックを日本からバングラデシュに送り、使用しています。しかし、高品質なチャックといえど、何年も使用すると摩耗してしまいます。

革製品は長く使用できる耐久性の高い商品にもかかわらず、チャックの摩耗でバック自体を買い替えなければならないことは、もったいないことです。摩耗したチャックの部分だけを取り換えられるように、現在プロダクトデザインチームが全てのプロダクトをリペアブルにするプロジェクトに1年以上動いてくれていて、そろそろ完成しそうです。

3つ目が、リサイクルレザーの利用です。革製品を作るとき、パーツを型抜いていく時、どうしても端材が残ります。端材は、再利用ができず焼却処分するしかないのが実情です。

多くの革を焼却処分することに課題感を抱いていたところ、端材をリサイクルして新しいレザーを作るイタリアの企業が見つかりました。現在、その企業に僕らが最初の顧客になることを約束してバングラデシュに進出してもらう、もしくは自己投資が難しい場合は合弁会社を作る、投資が難しい場合は僕らが単独で投資して新しい会社を立ち上げるから技術提供をしてくれないかという3パターンを提示して話を進めている状況です。

僕らがリサイクルレザーを作れる工場を立ち上げることで、バングラデシュの革産業で今まで廃棄されていた端材を全て僕らが集め、リサイクルレザーとして出口を作ることに取り組もうとしています。

ビジレザが、1つ1つにこだわりをもった最高のエシカルブランドになるためのプロジェクトを進めています。

現在は、バングラデシュで作った革製品を日本のみで販売していますが、韓国のとある企業が取り扱いたいという話をいただき、少しずつ取引が始まっています。今後はアジア各地に販売拠点を広げていき、バングラデシュの工場の外で並ぶ人がいなくなるように雇用を拡大できる体制を作っていきます。

合わせて、アフリカや中南米にも雇用がなく、貧困状態の人々が多くいることから、バングラデシュと同様の工場を作りたいと思っています。アフリカで生産しヨーロッパで販売、南米や中米で生産し北米で販売するといった形が取れれば、移動距離も短くなり、環境負荷も軽減できます。将来的には、こうした形で世界中に雇用を生むエシカルブランドを実現していきたいと思っています。

世界的なエシカルブランドを共に創る仲間を募集

エシカルブランドとして世界展開を実現するために、新たな経営体制を作っていきます。エシカルブランドとしてのマーケティングを推進していくCMO、事業開発を推進していくためのCOO、そしてEC事業を大きく成長させるEC責任者、今後店舗開発を行なっていく店舗施工管理の責任者、僕らが魂を込めているプロダクトを開発するプロダクトディレクターを新しく迎え入れたいと思っています。

▼詳しくはこちらをご覧ください。

事業代表の齊藤からのメッセージ

私たちはバングラデシュの雇用を創出するというソーシャルインパクトを前面に出さない形でやってまいりました。ビジレザで働く仲間は、みんな「誰かの力になりたい」「社会を良くしたい」という思いをもって入社しているため、背景を全面に出せないことにもどかしさも感じていました。

しかし、革製品という数多のブランドがある中で、ビジレザというお客様に信頼していただけるブランドを築き、バングラデシュに雇用を創出する流れをしっかりと作り上げるということが第一にあったため、あえてそのようなスタイルをとってきました。

今では、ビジレザを選んでくださるファンのお客様が非常に多くなってきました。今のタイミングだからこそ、みんなで同じ方向を向き、もう一つステージを上げて「社会になるために何ができるのか」と考えた時に、「エシカルブランド」として「エシカル商品の選択肢になる」という新しいビジレザの未来が見えてました。

改めて、自分たちが創っていきたい社会や力になりたい人たちのことをしっかりと語り、堂々と胸を張って楽しく働くことができる、そういうタイミングに来たと思っています。

ビジレザには、アルバイトさんを含む140人ほどの仲間がいます。北海道から沖縄まで日本全国に店舗があり、実はオフィスのメンバーも東京や福岡、名古屋と各地にいます。離れていても、自信をもって言えることは、「全員が同じ思いを持って同じ方向に向かって進んでいる」ということです。

僕たちは日々「自分たちはなんでここに集ってるのか」ということを確認するようにしています。例えば、毎日の朝会で一人一人がタスク確認をする際にも、「その仕事は本当に僕たちに重要な仕事なのか」「ソーシャルインパクトの創出につながっているのか」ということを互いに確認し合ってフィードバックし合う文化があります。

働く目的や方向性を確認するために月に一度すべての店舗の店長が集う店長会や半年に一度合宿も行っています。メンバー一人一人が、自分の役割の中でビジネスファトファクトリーをどう体現していけるのかに取り組んでいます。

「このチームなら走っていける。」と感じていただける自信があるので、皆さんのエントリーをお待ちしています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

説明会の様子は、動画でもご覧いただけます。

採用情報


現在、ボーダレスでは世界14カ国で50以上のソーシャルビジネスを展開しており、新規事業開発やマーケティング・クリエイティブなど複数ポジションで採用強化中です。

カジュアル面談も受け付けておりますので、お気軽にご連絡ください。

●キャリア採用
●新卒採用(新規事業開発コース)
●インターンシップ

◇社会起業を目指す方はこちらをご覧ください
◇ボーダレスの最新情報をメルマガで受け取る

-LINEで説明会や新着求人情報も発信中です!-
●新卒向けLINE
●社会人向けLINE

TOPICS
ボーダレス・ジャパン、社会課題に取り組む学生を次世代リーダーに認定する「YOUTH FELLOW」制度を開始
Text: Kumi Sakata
Edit:Mikiko Mine

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?