組織づくりにおいて「成長すること」が全てではないという考え方 UNROOF|岡 郁佳
障がい者雇用に向けた法的枠組みは年々整備されてはいるものの、まだまだ職業・職種の選択肢は少ない。2017年、「障がいがあるだけで仕事の選択肢が制限される社会を変えたい。」という思いから生まれた革製品ブランドが「UNROOF(アンルーフ)」だ。
一点一点丁寧につくられた本革ブックカバーや財布などの革製品は、お客様からの評価も高く、近年はYAMAP(ヤマップ)や中川政七商店など企業と共同でのものづくりも手がけている。
そのような取り組みが評価され今年1月、UNROOFは東京都認証「ソーシャルファーム認証事業所」に選出された。「ソーシャルファーム」とは、自律的な経済活動を行いながら、就労に困難を抱える方が、必要なサポートを受け、他の従業員と共に働いている社会的企業のことを指す。
今回は、障がいをもった人が自分らしく働ける環境について考えるUNROOF 事業代表の岡さんに話を聞いた。
個を全力で応援し、その人に合った働き方を一緒に考える
2017年の創業以来、身体・精神・発達といったさまざまな障がいをもつ人を「革職人」として雇用してきたUNROOF。一人ひとりに合った働き方を模索してきたという。
「例えば、光が苦手ならサングラスをかける。周りの音が気になるなら、イヤホンをつけて作業をする。公共交通機関を利用するメンバーに対して混雑時間を避けた通勤や在宅勤務を認めるなど、UNROOFで働く革職人たちは誰一人として同じ働き方をしていません。」
そもそも、障がいをもつ人の就職についてイメージがつく人はどのくらいいるだろうか。代表として採用活動も行う岡さんに、候補者のどこを見ているのか聞いてみた。
「採用活動においては、本人の 『やりたい』と思う気持ちが一番大切だと考えています。障がい者手帳を保有している方の中には、職場の待遇やコミュニケーションなど、そもそも働くことに不安を感じている人も少なくありません。しかし、『できることをやってみたい』という本人の意思は挑戦してみたいという姿勢をあらわしていると思います。意思をもって前に進もうとしている人を全力で応援し、その人にあった働き方を一緒に考えるのも私の役割です。だからこそ、どうやったら自分らしく働けるかを模索します。」
「成長が全てではない」という考え方
「働く」を考えた時、経験とともに適切な評価とキャリアアップをしながら仕事の幅を広げていくことが良しとされる風潮がある。しかし、岡さんの考えは違う。
「上にいくだけが成長とは限りません。できる状態を維持し、エキスパートに向かう。はたまたキープすることもとても重要だと思うんです。UNROOFの職人マップでは、特定領域の専門性を高めるための指標も可視化しています。」
「他にも具体的なお話をすると、先日体調の変化で突然仕事が手につかなくなってしまったメンバーがいました。本人も最初は理由が分からず、休んだり、勤務時間を調整したり、仕事の役割を変えてみたりしましたが、一向に体調はよくなりません。会話を重ねていくうちにわかったのは「数に追われる」仕事がメンバーにとって大きな負担になっていたということでした。」
仕事における数と質のバランスに悩む一人のメンバー。あなたが経営者だとしたら、どんな判断をするだろうか。
「UNROOFではなるべく“普通はこうだよね“という考え方に固執しないように気をつけています。一般的には成長することや正社員として働き続けることが“正しい“ような見方もされますが、その世間的イメージに固執せず、その人にとってのベストを作り出していきたいと思っています。」
求む!連携パートナー。障がいがあっても自分らしく働ける社会へ
型にはまらない働き方や考え方で、障がいがあっても自分らしく働く人をサポートしてきたUNROOF。今後は、ソーシャルファーム認証事業所として、経営の手腕が問われる。最後に今後の展望について伺った。
「これまで、働く人や仕組みについてお話してきましたが根幹にあるのはビジネスです。UNROOFでは、自社商品、委託生産、OEM生産という3つの柱を事業の中心において経営をしています。特に、OEM生産は今後注力していきたい事業の一つです。すでに、さまざまな企業様からお声がけをいただいていますが、革小物の価値を最大限に引き出すお手伝いができると考えています。また、連携パートナーが増えることで働くメンバーのやりがいにもつながります。アイデアを形にして、質の高いものづくりをしたい人、コツコツ手を動かして数多く商品をつくりたい人など多様な働き方を実現できる体制を整えていきたいと思います。」
現在、UNROOFでは革職人の募集をしている。今後、革職人以外の職種や働き方は増えていくのかも伺った。
「もちろんです。製造できる数が増えれば、自ずと検品や梱包、事務系の仕事など職種が多様化します。今後は、多くの仲間を受け入れられる体制を作っていきたいと考えています。地域や特別支援学校といったさまざまな場所と連携しながら、一人でも多くの障がいをもつ人に自分らしく働ける場を届けていくのが現時点での構想です。仲間を増やし、障がいを理由に仕事の選択肢が制限される社会を変えていくモデルケースになりたいですね。」
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