見出し画像

【2016年1月】心の何処か変な感じ――『秘密』

 深呼吸して、やっと心の衝動を収めた。いったいどうしたのだろう。
 すべては妄想。チェーンソーで死体を切ること。冷蔵庫に入れること。海にまで連れて、充と一緒にこれを捨てること。すべて妄想。一体どうした。チェーンソーの音まで聞こえるような気がするけど、妄想だなんて。
 今でも分からない。どっちが妄想か、どっちが現実。もしかして、充との関係も妄想なのではないのか。でも、今はどうでもいい。充は啓太のことが好き、一緒にいる。それだけでいい、そばにいて、それで。
 待て。たしか警察は冷蔵庫の中にいるのはネズミの死体一匹だ。だとすると、辻褄が合う。啓太は妄想のまま、ネズミの一匹を殺した。柳沢だと思って、冷蔵庫に入れた。それで、チェーンソーまでつかって、ネズミの死体を分解した。それもそうだ、もともと買ったチェーンソーは小さいし、ひとの死体を分解することは無理か。ならやはりそれはただの妄想。
 よかったな、箱の中に入れなくていいことは。けれども、どこかもったいない。もし喜多川や誰かみたいに、刑務所に入れたら、出る時もっと深い絆で繋いでいるだろうな。でも、今のままでもいい。充とちゃんと一緒にいて、喜多川みたいなひとで、優しい人だ。そして、啓太はあのだれかよりずっといい。なぜなら、充に「愛してる」と伝わった。
 読んだ後思った。榎本も充のことがすきなのではないか。それとも、ただの弟にしかみえないのか。
 そして、杉浦樹という男が本当に嫌い。どこかで酒を飲んで、男に襲われちゃえばいいのに。そうなると、一応彼らの父親であるあのひと、精神的にどう思う。二人の息子は…娘はでき結婚。人生最低。自分を冷蔵庫に入れてね、杉浦さん(名前忘れた)。
 思い出さなくてもいい。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?