在日コリアン問題ー朝鮮籍

在日コリアンという存在

第二次大戦が終わる1945年まで、朝鮮半島が日本の植民地だったことは良く知られています。植民地支配が終わるまでは、朝鮮半島の人は「日本人」として日本国籍を持っていました。
ただし、朝鮮半島出身者は、日本の戸籍とは異なる「朝鮮戸籍」に登録されました。でも国籍は日本。つまり「朝鮮籍」の「日本国民」だったのです。このように身分の差異を設けるのが、植民地統治の典型的な特徴の一つです。

戦争が終わるまで、日本本土で働いている朝鮮籍の人はたくさんいました。特に戦争が激しくなってからは、労働年齢の日本人男性が兵隊に取られ、炭鉱や港湾などで労働力が致命的に不足したので、朝鮮籍の人が多く働かされたのです。本土決戦に備える壕を掘らされた人たちもいます。

戦争が終わって朝鮮半島が解放され、1947年に日本最後の勅令として施行された「外国人登録令」の第11条では、「朝鮮人はこの勅令の適用については外国人とみなす」とされました。
こうして「在日コリアン」という存在が生まれるのです。

朝鮮半島の動乱

多くの「在日コリアン」は朝鮮半島に帰りましたが、それはそんなに簡単なことではなく、日本に残った人もたくさんいたのです。
朝鮮半島の状況は不安定で、1950年にはとうとう朝鮮戦争が始まったのです。
朝鮮戦争では、時期を追いながら朝鮮全土が戦場になっています。

また、この時期までに日本へ密入国してきた朝鮮の人もいて、朝鮮半島の南にある済州島から来た人が、特に知られています。
この島では、共産主義による統一国家を支持するデモが起きたため、韓国軍が島民を無差別的に虐殺していくという、悲惨な事件が1948年に起きています。(アメリカ支配下で起きた事件ですが、共産主義者をせん滅するためなので、アメリカはこれに加担しています。)

こうした混乱を逃れて日本に難民として密入国してきた人は、難民保護のルールもない時代なので、なんの保護を受けることもできないまま、日本に住む知人のところなどに身を寄せたのです。

「朝鮮籍」は北朝鮮と関係ないよ

日本政府は、ここまで書いたような在日コリアンの人たちに「特別永住権」を与えています。外国から観光や労働のために来日した人とは異なる、ということです。しかし、日本の国籍を与えることはしませんでした。

ここまで読むとわかると思いますが、朝鮮籍、という在日コリアンの人は、北朝鮮の国籍があるわけではありません。
そもそも北朝鮮と日本は国交がないので、「朝鮮籍」の人が北朝鮮の国籍を得ることもできません。
北朝鮮とは縁もゆかりもないひとだって、朝鮮半島にルーツを持つ人はみんな「朝鮮籍」だったのです。

1949年には、韓国政府から外国人登録に「韓国」という名称を使用するよう要請があって、本人からの申し出があれば国籍欄の記載を「朝鮮」から「韓国」に書き換えられる処置が取られました。
しかし、1951年からは、韓国政府の発行した書類を添付しなければ、書き換えが認められなくなっています。

朝鮮戦争という動乱の中で、在日コリアンの「国籍」は翻弄されました。
韓国よりも北朝鮮を支持する在日コリアンもいるでしょうが、ほとんどの在日コリアンにとって、韓国と北朝鮮の対立は関係ない話です。
しかし、南北対立の背景にある韓国とアメリカ、そして日本の関係は、在日コリアンに大きな影を落としています。


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