booost technologiesが主導するサステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)のエコシステム/伊藤忠、BIPROGY、パーソルとの協業で、企業のSXを全方位でサポート
有価証券報告書でのサステナビリティ情報開示基準の草案が公表され、2027年3月期から大企業より順次、サステナビリティ情報開示の義務化が進みます。サステナビリティERP「booost Sustainability Cloud」を提供するbooost technologiesは、企業のSX推進をさらに加速させるべく、伊藤忠商事、BIPROGY、パーソルビジネスプロセスデザインとの資本業務提携を締結して協業をスタートしました。
booost technologiesはなぜ事業会社との協業を進めるのか、今後どのようなビジョンを描いているのか。booost technologies株式会社 取締役COO 大我猛に聞きました。
すべてはお客さまへの提供価値をさらに高めるため
――booost technologiesが他社と協業を進める理由について教えてください。
大我:
一言で言うと、お客さまのSXの実現に向けた提供価値を拡大させるためです。
私は前職のSAPにて、パートナービジネスやイノベーション事業の管掌をしており、数百社のビジネスパートナーと共に日本企業のDXを支えてきました。その市場規模は1兆円を超えており、単独ベンダーとしては最大規模になります。2017年にパートナービジネスの責任者に着任した際に、それまでのERP導入コンサルティングを中心としたパートナー戦略を見直して、企業のDXを実現するための新しい「デジタルエコシステム構想」を打ち出し、改革を進めました。
エコシステムとは、簡単に言うと「複数の企業やサービスが協力し合って、単独でやるより相乗効果で大きな価値を生み出す仕組み」のことです。たとえば Apple は、画期的な製品を次々とリリースして成長していますが、この成長はAppleだけで成し遂げたものではありません。ハードに関しては、Apple は企画・開発のみをおこない、製造は技術力のある他社に任せています。コンテンツに関してはメディア業界、ソフトウェアに関してはエンジニアコミュニティを巻き込んで拡充しています。コンテンツやソフトウェア提供のためにプラットフォーム「App Store」を作って、積極的にステークホルダーを拡大し、大きなエコシステムを築きました。これがAppleの成長を牽引しました。
私がSAPで掲げたデジタルエコシステム構想には大きく2つの柱がありました。「パートナーとのエンゲージメント強化」「オープンイノベーションのコミュニティ立ち上げ」です。
booost technologiesでは、企業のSXを実現するための新たなエコシステムを構築するつもりです。
SXエコシステムがもたらす包括的なサステナビリティシフトへの支援
――なぜbooost technologiesは、数ある戦略のなかから、エコシステム構築を重視している のでしょうか?
大我:
まずSXという大きな課題に立ち向かうには、DX同様にエコシステムが必要だと考えたからです。
2023年に富士キメラ総研が発表した調査レポートによると、2023年度のSX/GX関連ITソリューションの国内市場規模は、前年度比21.9%増の3,255億円で、2030年度には8,498億円に到達すると予想されています。加えて、SXエコシステムは、IT関連市場以外への広がりも予測されています。たとえば、脱炭素化を進めるための再生可能エネルギーはすでに2兆円近くの市場があり、ITソリューションと合わせることで一気に、2兆円越えの市場規模に膨れ上がるのです。
他にも、省エネソリューション、SX、GX人材など幅広い市場との接続が考えられ、とても一社だけのサービス供給では、市場のニーズに応え切ることはできません。そこで、私ども単独でサービスを提供するのではなく、複数の企業と連携することでSXを推進するための提供価値を上げ、日本全体のSXを推進していきたいと考えています。
また、合わせてコミュニティは各人のSXに対する視野を広げる上で非常に重要です。すでにbooost technologiesでは、サステナビリティに関わる広範なリテラシーを共に高め合い、持続可能な社会・経済への構造的変革を本格的に目指すサステナビリティリーダーの集うコミュニティ「Sustainability Leadership Community(SLC)」を開設・運営しています。現在、500名を越えるメンバーが在籍しており、オンラインでの意見交換・ネットワーキング、会員向けレポート、四半期に一度のオフラインイベントなど、幅広く活動をしています。こうしたコミュニティとエコシステムがまた繋がることで大きな輪になり、ムーブメントとなることを期待しています。
3社との提携により始まる、SXエコシステム構築の第一章
――booost technologiesは2024年11月、伊藤忠商事、BIPROGY、パーソルビジネスプロセスデザインとの資本業務提携を発表しました。各社との提携の狙いについて教えてください。
大我:
まず背景として、現在の日本企業が「サステナビリティ2026問題」に直面していることがあります。「サステナビリティ2026問題」とは、サステナビリティ情報の開示義務化にあたって、多くの企業で着手が遅れており、その危機感も不足しているため、このままでは企業価値の低下につながってしまう懸念がある状況のことです。
2027年3月期から情報開示義務化が始まる見込みで、東証プライム市場の時価総額3兆円以上の企業は2026年からの対応が求められます。しかし、サステナビリティデータの収集・利活用を可能とする体制の構築や、その先にあるSX推進体制の構築について、危機感をもつ企業は少ないです。
⇩サステナビリティ2026問題については、こちらのnoteで解説しています。
この状況を打破するために「日本をSX先進国へ」プロジェクトを発足させました。本プロジェクトではSXに関する啓蒙活動を中心に行いますが、大企業が抱える課題の解決に向けて具体的な方策も必要となります。企業が直面している課題として、サステナビリティ情報を効率的に管理するシステム構築とSX人材の不足があります。
サステナビリティ情報は環境、人的資本と多岐に渡るため、企業の既存システムとの連携も求められます。伊藤忠商事のグループ企業である伊藤忠テクノソリューションズとBIPROGYは、システムインテグレーション事業に強みがあり、私どもが提供するサステナビリティERPと大企業の既存システムを連携させるパートナーとして最適だと考えました。
また、パーソルビジネスプロセスデザインは、多くのSX人材とのつながりや育成ノウハウがあり、不足するプロフェッショナル人材を増強するパートナーとして最適です。協力して、SXに関するBPOやコンサルティングサービスなどを提供し、より多くのお客さまへ価値提供できればと思っています。
前提として、この3社に共通するのは、サステナビリティ先進企業であるということです。各社共通してMSCIのESG格付けで「AAA」と評価されています。FTSE、 MSCIなどの主なESG投資関連の構成銘柄にも選定されています。こうしたサステナビリティに対する感度が非常に高く、共通の想いを持っていただいている企業と協業を進めていくことに対して、大きな期待を持っております。
――今後の展望を教えてください。
大我:
今回の提携は、SXエコシステム構築の第一章に過ぎません。今後、様々な業種の企業との連携を強化し、SX実現に向けたエコシステムを拡大してまいります。
合わせて、提携済みの企業との連携は、さらに深められればと考えています。たとえば、伊藤忠商事は、機械、エネルギー・化学品、食料など非常に広範な8つの領域で事業展開をおこなわれていますが、まずは幾つかの事業領域から連携を開始しました。協業を通して関係性を深め、他領域での連携も進めていければと考えています。
また、運営中のコミュニティ「Sustainability Leadership Community(SLC)」を介した、「サステナビリティ2026問題」に関する啓蒙・情報発信にも力をいれる予定です。記者会見を皮切りに、発信を始めていますが、正しい危機感を持つことができている企業はまだ少ないと感じています。同問題についてのさらなる認知拡大のため、コミュニティの力をフル活用していきたいです。
繰り返しですが、今はまだSXエコシステム構築に向けた取り組みはスタートしたばかりです。これからも、ダイナミックな施策を打ち続け、日本企業のサステナビリティ経営へのシフトに貢献し続けてまいります。今後の展開にご期待ください。