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今週の全米アルバムチャート事情 #242- 2024/6/29付

大谷翔平選手もHR量産体制に入って、今年もあっという間に半分過ぎようとしているし、そろそろ今年前半のアルバムのランキングでも考えなきゃな、と思っていた火曜日、知人の急な訃報が飛び込んで来てショックを受けてます。自分よりも数歳若い人で膵臓がんとのことで、とても他人事とも思えず、ただただ残念。一気にテンション下がってしまいましたが、やはり頑張って体調維持に治療に務めなければ、と改めて思った次第。いつもエネルギッシュで、食にこだわり、落語が好きだったOさんの御冥福を心よりお祈り申し上げます。

"The Tortured Poets Department" by Taylor Swift

さあ気を取り直して、今年前半最後のチャートになる全米アルバムチャート6月29日付のBillboard 200の首位ですが、何と今週テイラーの『The Tortured Poets Department』が先週からわずか1%しかポイントを下げておらず、結果126,000ポイント(うち実売は42%増の33,000枚)で、2位のビリーが84,000ポイントなので余裕でデビューからの連続首位記録を9週にして、デビューからの首位連続記録でドレイクの『Views』(2016)に並ぶ歴代5位タイになってます。ある程度予想された結果ですが、9週目のここに来てこの実売の増は何?と思って調べたところ、今回テイラーのサイトのみで販売の新しいCDバージョン2種類(スタンダードの16曲に、アコースティック・バージョンの「Down Bad」か「Guilty As Sin?」がボートラ追加されたもの)が販売されたことによるもののよう。うーんまだこの期に及んで追加のマーケティング・ブラストをかますのか、テイラー陣営。

現在ヨーロッパ日程を消化中のテイラーエラス・ツアーですが、ちょうど先週末でロンドン3日公演を終えて、今週金曜日28日からアイルランドのダブリンで再開、そこからオランダ、スイス、イタリア、ドイツ、ポーランド、オーストリアと回ってちょうどお盆の週にまたロンドンのウェンブリー・スタジアムで5日連続公演をやってヨーロッパツアーを完了する予定のようです。その間もまたライブ音源とかがどんどんSMSでリリースされたりするだろうし、ストリーミングは当面ゆっくりと減衰していくだろうから、もうあと1〜2週は10万ポイント台を維持しそうですね。ということは、デビューからの連続首位記録で4位にいるモーガン野郎の『Dangerous: The Double Album』にはどうやら追いつきそう。もうこの際モーガン野郎は抜き去って歴代3位タイの11週(ホイットニーの『Whitney』(1987))まで行ってしまえ!

"Hardstone Psycho" by Don Toliver

さて今週のトップ10は先週以上に賑やか。76,500ポイント(うち実売19,500枚)で3位に飛び込んで来たのは、先週うちのヒップホップ・ヘッズの息子が推していたドン・トリヴァーの4作目のアルバム『Hardstone Psycho』。これでアルバム4作連続でトップ10と、コロナ以前はトップ10レベルの出力を誇っていながらコロナ以降がっくり出力を落とすヒップホップ系が最近多い中、安定した人気と実績を維持しています。それもこれもまあ彼のラッパーとしての実力と、時には歌い、時には鼻歌ラップとスタイルに拘らないパフォーマンス、所属レーベルの社長でもあるトラヴィス・スコット並みにトラップだけではなく多様なトラックを乗りこなすヴァーサティリティ(多才さ)、それにプラス、奥さんのカリ・ウチズとの間に今年第一子が生まれてプライベートでも充実してるってのが大きいんでしょう。今回のアルバムに収録のムーディでエモなトラック「Deep In The Water」とそのMVは奥さんと息子くん(MVで可愛い手足が登場します)に捧げてるらしいです。

今回のアルバムは基本4曲ずつ収録されたディスク4枚組の全16曲収録で、デジタル・ダウンロード・バージョンのみもう1枚4曲入りのディスク5が含まれてます。それぞれのディスクに多分目玉と思われるトラックが配されていて、ディスク1『Thunder Road』はチャーリー・ウィルソン(ギャップ・バンド)とブロンクス・ドリルのサウンドメイカー、キャッシュ・コベイン(プロデュースも担当)をフィーチャーした「Attitude」(うちの息子のイチオシトラックですw)、ディスク2『Dead Man’s Canyon』はトラヴィス・スコットをフィーチャーした「Ice Age」、ディスク3『Twin Peaks』はフューチャーメトロ・ブーミンをフィーチャーした「Purple Rain」(プリンスの曲ではない)、ディスク4『Promise Land』は再びトラヴィスとの「Inside」、ディスク5『Stonehenge』ではリル・ウジ・ヴァートとの「Donny Darko」となかなか豪華なラインアップですね。トラックも王道トラップあり、ドリル系あり、オートチューンを使ったR&B風トラックあり、エモ・ラップありと、自由自在。いまどきのヒップホップアルバムとしてはいろんな間口をカバーしていて完成度も結構高い方ではないかと思います。この間のヴィンス・ステープルと並んで今年前半のヒップホップ系ではかなりいい線行ってると思います。

"New World Depression" by $uicidboy$

続いて66,000ポイント(うち実売20,000枚)で5位に初登場してきたのは、いやーまた来たか〜って感じの(笑)ニューオーリンズ出身の白人ラップ・デュオ、スーサイドボーイズ($uicideboy$)の4作目のフルアルバム『New World Depression』。過去の3作もすべてトップ10ですが、今回の5位はキャリアハイ。前作『Sing Me A Lullaby, My Sweet Temptation』(2022年7位)の時も書いたけど、とにかくダウナーでエモなトラップ・トラックで、自己壊滅的だったり自殺願望だったりと暗いネガティブなリリックをラップする連中なので、個人的にはなかなか聴く気になれないのだけど、やっぱり今のアメリカの闇を反映してなのか、こうしてアングラ中心ながら根強い人気を持ってるんだよねえ、この2人。

昨日久しぶりに90〜2000年代に活動していた洋楽サークル「ミーンタイム」の元メンバーたちと久しぶりに呑んでた時に、このスーサイドボーイズの話になって「ある意味90年代のインセイン・クラウン・ポッセ(ICP)に似てるかも(超ネガティブで破壊的なパフォーマンスがスタイルであるという点で)」という話になってました。ICPの方はピエロのメイクしてヴァイオレントなステージやるんで、もっと色物で過激なんだけど、演ってる方も聴いてる方もメンタル的にはかなり共通してる部分があるだろうな、という感じがします。健全な音楽ファンにはあまり勧めませんが、時に「Are You Going To See The Rose In The Vase, Or The Dust On The Table(テーブルを見て、花瓶のバラが目に入るか、それともテーブルの上のゴミが目に入るか?)」なんていう皮肉なタイトルな曲のトラックなんかは、多分ゲームのSEなんかも使ってかなり凝ったことをしてるんで、ただの色物アクトではないあたりがかなり曲者ではあります。もう一曲、彼ららしいタイトルの「Us Vs. Them(我々と奴らども)」は先月一足先にHot 100にチャートインして、彼ら初のHot 100ヒットになってます

"Fathers & Sons" by Luke Combs

さて今週1位にチャレンジして欲しいなあ、と先週言っていたルーク・コムズの5作目フルアルバム『Fathers & Sons』は60,000ポイント(うち実売14,000枚)という思ったよりも地味な出力で6位初登場でした。アメリカでは父の日の2日前にリリースされたこのアルバム、前2作『Growin’ Up』(2022年2位)と『Gettin’ Old』(2023年4位)が、自分の子供の頃から今に至るまでの人生の道程を俯瞰しながら作ったアルバムだったのに対して、今回は一昨年、昨年と2年続けて授かった息子たちとの父親としての関係を、自分が子どもの頃の自分の父親との関係とダブらせながら書いたんだなあ、と思われる曲が並んでいて、世の父親たちにはちょっとホロリと来る、そんなコンセプトのアルバムになってます。

今週Hot 100で39位にジャンプアップ先行シングルの「The Man He Sees In Me(彼<息子>が俺をどういう男として見ているか)」は、「お父さんって何でも出来るんだね!」と信じてる息子を見ながら、いずれ彼が大人になって家を出る頃には精一杯父親であろうとしてきた、これまでのありのままの自分を見て、同じように自分の子供に接してくれますように、という、父親なら思わず「うん、うん」と頷きながら目をこすってしまうような、そんな歌。その他にも「In Case I Ain’t Around(もし俺がいなくなったら)」とか「Whoever You Turn Out To Be(お前が将来何になろうとも)」とか「Remember Him That Way(俺の覚えてる親父)」とか「My Old Man Was Right(親父のいう通りだった)」とか、もうタイトル見ただけで曲の内容が察することができる、ホッコリするようなアルバムですね。そしてそれを外連味のないカントリー調で、滋味あふれる歌声で歌うルーク。彼は今全米の父親たちのリスペクトとシンパシーを最も集めているシンガーでしょうねえ。スーサイドボーイズの後に聴くと本当に心が癒やされます(笑)。

"NA: The 2nd Mini Album (EP)" by Nayeon

そして今週トップ10もう一枚の初登場は、47,000ポイント(うち実売43,000枚で今週のアルバム・セールス・ナンバーワン)で7位に入ってきた、TWICEナヨンのセカンド・ソロEP『NA: The 2nd Mini Album (EP)』。2022年のファースト『Im Nayeon』に続く7位と好調なすべり出しです。なんですが、またまたKポップあるあるで、このアルバムもまたいつもチェックしてるGeniusのリリーススケジュールに載ってなかったんですよねーGeniusがKポップのリリーススケジュールをカバーしてないんだったら、ちょっと別のソースを本当に探さなきゃいけないなあ。

で、今回のナヨンのソロですが、前回のEPと違って、いわゆるTWICEっぽいメインストリームなポップ路線の曲は「HalliGalli」くらいで、ナヨンのラップっぽいパフォーマンスも聴ける先行シングルの「ABCD」をはじめ全7曲の殆どが、いつもよりエッジの立った、ヒップホップ・テイストもあちこちに感じられるマチュアな楽曲で固められてますね。聴いてて自分はクリスティーナ・アギレラの2000年代の作品あたりの「オトナの」女性ポップ・スターのイメージをモデルにしてるんじゃないかな、と思ってました。我が家のKポップファンの女性軍は「TWICEよりこのソロの方がいいね」なんて言ってましたので、今回全米でも受けがいいのはそういうTWICEとイメージを変えた辺りも当たってるのかもしれません。いずれにしてもこうやってBTSのメンバーに続いてTWICEのメンバーのソロアルバムが軽々とトップ10に入ってくるのがもう日常になっているのが、Kポップの存在感を改めて感じさせるところです。

"Speak Now" by Moneybagg Yo

ということで今週は一気にトップ10に4枚が初登場してますが、今週は圏外11〜100位にも大量6枚が初登場。長くならないように走り気味に行きますね。まずは13位にチャートイン、惜しくもトップ10を逃したのがメンフィス・ラップ・シーンでヨー・ゴッティの番頭的なベテラン・ラッパー、マニーバッグ・ヨーの5作目のフル・アルバム『Speak Now』。2021年コロナ期突入後にリリースした前作のフルアルバム『A Gangsta’s Pain』は初の1位を取ったんですが、その後2022年に出したヨー・ゴッティのレーベルCMGのコンピ『Gangsta Art』は11位、去年の自分のミックステープ『Hard To Love』も10位と、いまいち盛り上がりに欠けてるなと思ってたら、今回はとうとうトップ10にも入れず

ただ内容的にはトラックもテイ・キース、ボイ・1ダ、ウィージー、チャーリー・ハンサムといったヒット・プロデューサー達を配した卒のない作りですし、本人のラップもいつも通り手堅い存在感あるフロウを聴かせてるので、アルバムとしての出来はなかなかだと思います。思うに今週は上位に強めの新譜が多く入ってきた関係で割を食らってこの順位担ったのかなと。クリス・ブラウンをフィーチャーした「Drunk Off U」なんてエモな感じで迫ってる新境地ですし、南部ラッパーらしく最近流行りのカントリーとのハイブリッドの流れに乗ったモーガン野郎とのコラボトラック「Whiskey Whiskey」なんてのも喜ぶファンは結構いるんだろうなあ。

"Gemini!" by LUCKI

続いて20位に初登場してきたのは、シカゴのラッパー、ラッキー(LUCKI)の4作目『Gemini!』。フューチャーなみの何言ってるかよく判らん(笑)マンブル・ラップ系ながら、これで3作連続のトップ20入りですから、間違いなくしっかりしたファンベースが付いてるんでしょうねえ。まあブレイクするまでミックステープやEP出し続けるという下積みは結構長かったらしいし。

で、今回も相変わらずマンブル系ではあるんですが、これまでと比べると一番何言ってるかわかる割合が多い(笑)。トラックも前よりエモな感じのものが多い感じがして、ちょっとスタイルに変化をつけようとしているような気配は何となく感じます。シングルの「All Love」とか、ニキタ・ジャーメインっていう90年代のキラキラ系のR&Bシンガーのトラックをサンプリングしてて、こいつにしちゃ随分華やかな感じ。まあでもフューチャーとか楽しんで聴ける向きでなければ全編通して聴くのは辛いかもしれません。

"One Hand Clapping" by Paul McCartney & Wings

ぐーんと下に下がって74位にチャートインしてきたのは、シニアの音楽ファンの間ではちょっとした話題になっていた、ポール・マッカートニー&ウィングスの『Band On The Run』の頃の1974年にアビー・ロード・スタジオで録音されたライブ音源を蔵出しした『One Hand Clapping』。これ、もともとはレコーディングの様子やメンバーへのインタビューを中心にしたドキュメンタリー映画製作を想定して行ったセッションだったらしいですが、諸般の事情で映画も音源もリリースされず、50年たった今回ようやく陽の目を見たというもの。

収録されてるのは、やはり当時出たばかりの『Band On The Run』からタイトル曲や「Jet」など5曲、「Let It Be」とかのビートルズ曲3曲、ポールのそれまでの曲などを中心にあとはロックンロールのカバー曲などで構成された楽曲群。バンドとして一番脂が乗ってる時期の録音だけに、演奏とかポールをはじめメンバーのパフォーマンスもかなりタイトで、単純にスタジオライブ盤としても充分楽しめる内容ですね。「Jet」のバックに「Band On The Run」で聴こえるような、全面リンダの操るムーグ・シンセサイザーがフィーチャーされてたり、エレピの弾き語りでエモに迫る「Maybe I’m Amazed」やムーディー・ブルースで有名な「Go Now」とか、なかなか聴いてて面白い演奏も多く、久しぶりに聴くウィングスは新鮮だなあ、と思ったものでした。

"Duality" by Lindsey Stirling

そのちょっと下、84位に登場していたのは、カリフォルニア州サンタ・アナ出身の女性バイオリニスト、リンジー・スターリングの7作目のアルバムになる『Duality』。バイオリン?と思ったあなた、いや自分も何でバイオリン?と思ったんですが、彼女実はいろんなカバー曲や自分の作品のバイオリン演奏を2000年代後半からYouTubeのチャンネルで公開してて、1400万人以上のチャンネル登録者がいるという、バイオリン・ユーチューバーなんですね。しかも彼女があのアカペラのペンタトニックスとコラボしてやった、イマジン・ドラゴンズの「Radioactive」のカバー動画は、2013年の第1回YouTubeミュージック・アウォードで「レスポンス・オブ・ジ・イヤー」を受賞、翌年リリースのセカンド・アルバム『Shatter Me』はこのBillboard 200で堂々2位の大ヒットになってたんですね。いやあ自分も全くアンテナにかかってなくて、知りませんでした。アメリカの女性版葉加瀬太郎、みたいな感じなんでしょうか。

さっそく聴いてますが、基本スケールの大きいドラマチックな自作曲を、壮大なアレンジとオーケストレーションをバックに彼女のバイオリンが唸りまくる、という内容で、あたかも壮大な自然をテーマにしたドキュメンタリー映画のサントラ盤を聴いてるような感じ。過去のアルバムではペンタトニックスの他、クリスティーナ・ペリダン+シェイ、ウィーザーリヴァース・クオモ、今や時の人なサブリナ・カーペンターエヴァネッセンスエイミー・リーなどなど、個性ある名の知れたボーカリストを毎回何人かフィーチャーしてたようですが、今回はボーカルをフィーチャーしてるのは2曲でいずれもあまり知られてないアーティストを起用してるので、もうリンジーのバイオリンのパフォーマンスが前面の、正しくリンジー・ワールド全開の内容。思うに映画とかミュージカルとか好きな人には結構受けるんだろうなあと思わせるような、想像力を掻き立てる演奏です。こういうのもたまにはいいかも。

"As It Ever Was, So It Will Be Again" by The Decemberists

そして89位には懐かしい名前が。2011年には6作目のアルバム『The King Is Dead』が全米ナンバーワンに輝いたこともあった、オレゴン州ポートランド出身のインディ・ロック5人組ザ・ディセンバリスツの6年ぶりになる9作目『As It Ever Was, So It Will Be Again』がチャートインしてきています。あのナンバーワンから3作連続、前作の『I’ll Be Your Girl』(2018年9位)まではトップ10に毎回送り込んでいたのですが、間が空いたのとその間にコロナ期もあり、その前後で大きく出力を落とすパターンにはまったロック系アーティストの一つとなってしまってます。

ディセンバリスツというと、2010年代初頭にマムフォード&サンズとかルミニアーズとかのブレイクで起きた、ネオ・フォーク・ムーヴメントに属するバンドの一つ、というイメージはあるのだけど、その中でも一番ロック寄りというか、何となく「Losing My Religion」のR.E.M.あたりと同じオーラをまとったバンド、っていうイメージが個人的にはあったなあ。でもマムフォードルミニアーズのようにその後も手堅い作りの作品をコンスタントにリリースするのではなく、『The King Is Dead』から15年で今回やっと3作目というペースなんで、コロナもあったしまあ今回のように順位が前作の9位からどーんと落ちてもまあ無理はないところ。でもね、今回の久しぶりのアルバム聴いて見ると、やはりあの頃感じた、「Losing My Religion」のR.E.M.的オーラをしっかりまとったような楽曲が多くて思わず聴き入ってしまいました。R.E.M.よりはかなりアコースティックですけど、今の自分の志向にも合ってるなあ、という感じでもう少し聴き込んだら今年前半のトップ20くらいには入れるかも知れません。

"Dopamine" by Normani

今週最後の100位までの初登場は91位チャートイン、もう元フィフス・ハーモニーの、という修飾語はそろそろ外してもいいかなと思う、ノーマニ嬢の何とこれがソロ・デビュー・アルバムになる『Dopamine』。彼女、これまでキャリードとのデュエット・ヒット「Love Lies」(2018年全米9位、全英12位)やサム・スミスとのデュエット・ヒット「Dancing With A Stranger」(2019年全米7位、全英3位)といったヒットでも、結構存在感を放っていたので、とっくにアルバム出してたような気がしてました。ただ今回はそういったヒットが先行しているわけではないあたりがこの順位になった最大の要因なんでしょう。

でも内容を聴くとそれだけが理由ではないような気も。全13曲を自ら共作して、ガンナをフィーチャーした「1:59」、ジェイムス・ブレイクと組んだ「Tantrums」、そしてカーディBと共作してフィーチャーしている「Wild Side」と、エッジの効いたゲスト人選でこのアルバムに対する彼女の意欲は感じられますが、全体的には2000年代ヒップホップR&B的な曲調の曲が多くて、正直あんまり新鮮味とノーマニならでは、という感じがしない、というのが全体聴いた印象ですかね。先のヒット曲2曲での彼女の存在感を思うと、ヴィクトリア・モネと共作してる「Lights On」や、スターゲイトブランディと共作してる「Insomnia」のように、同じ2000年代風でもR&B王道に寄せた感じの曲の方が彼女のスタイルには合うような気がするんですが。「うーんいいけど惜しい」って感じでしょうか。

ということで今週は100位までに初登場が計10枚チャートインするという大賑わいのアルバムチャートでした。一方Hot 100の方ではとうとうポスティモーガン野郎の「I Had Some Help」を首位から引きずり下ろして、先週2位初登場だったサブリナ・カーペンターの「Please Please Please」が見事チャートイン2週目で首位獲得。先週この曲と3位の「Espresso」でトップ3の2曲を独占していたサブリナ、一気に2週目で首位を制するあたりにここのところの彼女の勢いを感じます。ちなみにUKチャートでは今週1位「Please Please Please」2位「Espresso」でトップ2曲独占の女性最年少記録(25歳1ヶ月10日)を樹立してます(これまでの記録は2019年2月にアリアナが「7 Rings」と「Break Up With Your Girlfirend, I’m Bored」で独占した時の25歳7ヶ月20日)。では今週のトップ10おさらいです(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。

1 (1) (9) The Tortured Poets Department - Taylor Swift <126,000 pt/33,000枚>
2 (2) (5) Hit Me Hard And Soft - Billie Eilish<84,000 pt/17,000枚>
*3 (-) (1) Hardstone Psycho - Don Toliver <76,500 pt/19,500枚>
4 (4) (68) One Thing At A Time ▲5 - Morgan Wallen <73,000 pt/1,506枚*>
*5 (-) (1) New World Depression - $uicideboy$ <66,000 pt/20,000枚>
*6 (-) (1) Fathers & Sons - Luke Combs <60,000 pt/14,000枚>
*7 (-) (1) NA: The 2nd Mini Album (EP) - NAYEON <47,000 pt/43,000枚>

*8 (10) (13) The Rise And Fall Of A Midwest Princess - Chappell Roan <46,000 pt/6,279枚*>
9 (3) (2) Brat - Charli XCX<45,000 pt/12,000枚>
10 (7) (180) Dangerous: The Double Album ▲6 - Morgan Wallen <44,000 pt/406枚*>

久しぶりにトップ10も圏外も初登場が大賑わいだった今週の「全米アルバムチャート事情!」いかがでしたか。最後はいつもの来週の1位予想(チャート集計対象期間:6/21~27)ですが、今週の感じだとまだまだテイラーの10万ポイント台は続きそうなので、対抗するには10万ポイントを確実に叩き出す出力が必要ですが、そんな対抗馬は見当たりませんねえ。ということでテイラーの10週1位はほぼ当確でしょう。トップ10にはひょっとするとケラーニが入って来るかも?というくらいです。ではまた来週。

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