今週の全米No.1アルバム事情 #59 - 2020/12/26付
皆さんメリー・クリスマス!いよいよ世界的コロナパンデミック、大接戦の米大統領選、Black Lives Matter、消え去った東京オリンピックそして香港自治の危機など数々の歴史的出来事で震撼した2020年もあと一週間足らずとなりました。ワクチンの海外での認可など、2021年に向けてほのかな希望も見えて来てますが、とにもかくにも安全で心安まる新年を迎えたいものですね。
さて今年最終日付のBillboard 200、今週の1位に、今年5番目に大きい329,000ポイント(実売154,500枚)という力強い数字で初登場、文字通り有終の美を飾ったのは、先週の予想通り、12/11の発売前日に突然アナウンスされたテイラー・スウィフトの今年2作目の新作『Evermore』でした。前作『folklore』リリースから僅か4ヶ月でリリースされたこのアルバムで、テイラーはBTSに続いて2020年にナンバーワンアルバムを2作決めたことになります(そう考えるとBTSも凄いですね…)。でもこのポイントと売上はデジタル・ダウンロードオンリーの数字で、来週のチャートの集計期間にあたる12/18(もう一週間前かあ)にはCDがリリースされるらしいので、これ、来週もかなりの売上が予想されますねえ。何しろデジタルアルバムとストリーミングだけでこの規模のポイントを稼いだのは、2018年7月のドレイク『Scorpion』以来(732,000ポイント、実売160,000枚)以来らしいですから、来週はどうなるんでしょう。
そして同時にシングルの「Willow」(今回もテイラーと、ザ・ナショナルのアーロン・デスナーの共作です)も今週初登場1位。前作からのシングルで同じく初登場1位だった「Cardigan」のPVのの続編のような、幻想的でナルニアや指輪物語などを思わせるような耽美的でドリーミーな映像をバックに歌われる、ノスタルジックな感じの楽曲で、このアルバムが『folklore』の姉妹アルバムとの説明もしっくりくる、そんな感じ。そして今回は前作でも「Exile」をデュエットしていたボン・イヴェールの他、アーロンのバンド、ザ・ナショナルがフィーチャーされた「Coney Island」やLAの3姉妹ハイムをフィーチャーした「No Body, No Crime」など話題曲も満載。そうした前作から連続性の高いこのアルバムにファンは強く反応していて、ストリーミングでも2.2億回のオンデマンド・ストリーミング相当と、ヒップホップ系のアルバムレベルのストリーミング状態です。
これが8枚目のナンバーワンアルバムとなったテイラー、歴代2位のマドンナ(9枚)や1位のバーブラ・ストライザンド(11枚)を抜き去るのはもう時間の問題という感じです。こんな年の最後にこういうソリッドな作品とソリッドな売上ポイントを稼ぐテイラー、USAトゥデイ誌やバラエティ誌などはすでに『folklore』とこの『Evermore』を2020年年間アルバムの1位タイにするなどメディアの評価も絶好調。2020年はいろんな意味で大変な年でしたがテイラーに取ってはいい年になったようです。
そしてそのテイラーがいなければ今週間違いなく初登場1位だったね、残念だったね、というのがキッド・カディの7作目フルアルバムになる『Man On The Moon III: The Chosen』の2位初登場(144,000ポイント、実売15,000枚)。これは彼のムーン3部作の最終章という位置付けらしく、この前には『Man On The Moon: The End Of Day』(2009年最高位4位)、『Man On The Moon: The Legend Of Mr. Rager』(2010年最高位3位)と来てたから、毎回1ランクずつ成績がよくなってるっていう目出度い状況(笑)。
ちょっとこのアルバムで目を引くのは、通常のヒップホップ勢のポップ・スモークやスケプタ、トリッピー・レッドといった連中をフィーチャーする中、「Lovin’ Me」という曲では、今をときめくインディ系のシンガーソングライター、フィービー・ブリッジャーズをフィーチャーしてて、彼女、共作者にも名前を連ねてること。これがまたかなり自然にコラボしていて、ちょっとヒップホップテイストが薫るインディ・ロック、といった風情の楽曲がなかなかいけますなあ。どういう経緯でコラボすることになったかは不明ですが、今回グラミー新人賞部門と最優秀オルタナティブ・アルバムにノミネートされてて、自分も多分年間アルバムの上位に入れるフィービーに取ってはなかなか意義あるコラボになったのではないでしょうか。
そして今週はトップ10内初登場もうひとつ。こちらも一発屋かなーと思っていたら予想以上にヒップホップファンの支持が強力なんだなーと思った、”ホワッツ・ポッピン”の大ヒットを受けてジャック・ハーロウの満を持してリリースしたデビュー・アルバム『Thats What They All Say』が5位初登場(51,000ポイント、実売2,000枚)。実売2,000枚ってのが、いかにもヒップホップコミュニティ、それも多分ティーンエイジャー達に抜群に受けてるんだろうなあ(彼らはストリーミングで聴いて、トラックを購入したりしない)というのがわかるこの成績。このアルバムにはその大ヒット「Whats Poppin」も収録されてるし、まあ予想どおりの高位初登場ですね。このアルバムからはまだもう何曲かヒットが出る気がします。
ということで今週のトップ10のおさらいです。今週もまだ依然クリスマス・アルバムが強くって、圏外も40位くらいまで特にこれ以外初登場なしでした。でもテイラーは『Evermore』につられて『folklore』も3位に戻って来てしまいました。すごいな(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト)。
*1 (-) (1) Evermore - Taylor Swift
*2 (-) (1) Man On The Moon III: The Chosen - Kid Cudi
*3 (11) (21) folklore ▲ - Taylor Swift
4 (4) (89) Christmas - Michael Buble
*5 (-) (1) Thats What They All Say - Jack Harlow
6 (5)(12) My Gift - Carrie Underwood
7 (6) (24) Shoot For The Stars, Aim For The Moon - Pop Smoke
8 (7) (55) The Christmas Song ▲6 - Nat King
9 (2) (3) El Ultimo Tour del Mundo - Bad Bunny
*10 (10) (98) Merry Christmas ▲6 - Mariah Carey
さて来週の1位予想です。リリース対象期間は12/18-24で、クリスマスショッピング(ほとんどはネットでしょうけど)期間と重なるだけに、マスで人気のある盤が来るよなあ、と考えると本当は文句なくサー・ポール・マッカートニーの新譜が1位!と言いたいところですが、上にも書いたように『Evermore』のCDが18日にドロップされるというのがヤバい!来週は50%以上の確率でテイラーがサー・ポールの1位を阻止しそうだなあ、と思ってます。さて来週はもう今年最後の週。何とか大晦日までには来週の記事はアップして今年の締めくくりにしたいと思ってますのでよろしく。ではまた来週。
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