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DJ Boonzzyの第66回グラミー賞大予想#11〜ミュージカル&ビジュアルメディア部門

グラミー授賞式までいよいよ一週間を切って、当日のパフォーマンス・ラインアップもどんどん発表されてますね。前回お伝えしたU2に続いて、何と今回グラミー初出演になるジョニ・ミッチェルと、SZAのパフォーマンスが発表になりました!ジョニ・ミッチェルは今回最優秀フォーク・アルバム部門にもノミネートされてますし、そのアルバムに収録されてる、昨年夏のニューポート・フォーク・フェスティバルでの奇跡のカムバック・ライヴを受けての今回の出演ですから、会場が大いに盛り上がること間違いなさそう。当日が楽しみですね。では今回はミュージカルと、ビジュアル・メディア部門の予想です。


47.最優秀ミュージカル・シアター・アルバム部門(主なソロイスト/プロデューサー/楽曲作者に与えられる賞)

◎ Kimberly Akimbo - Original Broadway Cast ( - / John Clancy, David Stone & Jeanine Tesori / Jeanine Tesori & David Lindsay-Abaire)
✗ Parade - 2023 Broadway Cast (Micaela Diamond, Alex Joseph Grayson, Jake Pedersen & Ben Platt / Jason Robert Brown & Jeffrey Lesser / Jason Robert Brown)
○ Shucked - Original Broadway Cast ( - / Brandy Clark, Jason Howland, Shane McAnally & Billy Jay Stein / Brandy Clark & Shane McAnally)
  Some Like It Hot - Original Broadway Cast (Christian Borle, J. Harrison Ghee, Adrianna Hicks & NaTahsha Yvette Williams / Mary-Mitchell Campbell, Bryan Carter, Scott M. Riesett, Charlie Rosen & Marc Shaiman / Scott Wittman & Marc Shaiman)
  Sweeney Todd: The Demon Barber Of Fleet Street - 2023 Broadway Cast (Annaleigh Ashford & Josh Groban / Thomas Kail & Alex Lacamoire / Stephen Sondheim)

一昨年、コロナ後めでたく興行が開催されたブロードウェイでしたが、去年は5月から始まった全米脚本家組合によるストライキの関係で、6月11日の第76回トニー賞授賞式開催が危ぶまれる事態に。それでもショー・マスト・ゴー・オンということでミュージカル自体の公演は一部の中止を除いて行われ、トニー賞もストの関係で脚本なしにも関わらず、司会のアリアナ・ディボーズを始めスタッフの機転と努力で無事開催されたようです。そしてグラミーのミュージカル・シアター部門には、その76回トニー賞にノミネートされた新作3本とリバイバル2本がきっちりノミネートされるという完全シンクロ状態。グラミーのノミネート5作とトニー賞ノミネート作がこんなにきれいに重なったのは、2013年第55回以来11年ぶりのことでした。

まず新作の方からご紹介すると、通常より早く老化してしまう早老症を患うティーンエイジャーの女の子、キンバリーがクラスメート達との交流や、アルコール依存症の父や悪事をそそのかす叔母など問題ある家族を抱えながら、二度とない人生を幸せに生きるべく奮闘するという、トニー賞の最優秀ミュージカル受賞作『Kimberly Akimbo』。今回グラミーのアメリカン・ルーツやカントリー部門でも複数ノミネートされているブランディ・クラークと、同じくグラミーのプロデューサー部門ノミネートのカントリー系シンガーソングライター&プロデューサーのシェイン・マカナリーが音楽担当の、トウモロコシを育てることが先祖代々の生業である村の住人達が繰り広げるコメディ・ミュージカル、『Shucked』。そしてあのビリー・ワイルダー監督、マリリン・モンロー主演の1959年のコメディ映画『お熱いのがお好き』が原作のミュージカルだけど、マリリンが演じた主役シュガー役を黒人女優のエイドリアナ・ヒックスが演じ、最後はゲイやトランスジェンダーを祝福するメッセージで終わるという『Some Like It Hot』の3つ。

一方リバイバルの方は、1915年のジョージア州で、同僚のティーンエイジャーの女性をレイプの上殺害したかどで裁判にかけられたユダヤ人レオ・フランクが、一旦死刑宣告を受けながらも無期懲役の判決で救われたにもかかわらず、獄中でリンチを受けて死亡したという当時の反ユダヤ主義や南部の暴力的雰囲気を描いた社会派ミュージカル『Parade』(オリジナルは1998年)と、日本でも何度も公演されていてミュージカル・ファンにはお馴染みの、1970年の戯曲『Sweeney Todd』をベースにした、理髪師スイーニー・トッドの復讐の物語『Sweeney Todd: The Demon Barber Of Fleet Street(スウィーニートッド:フリート街の悪魔の理髪師)』(オリジナルは1979年)。最優秀トラディショナル・ポップ・ボーカル・アルバム部門でも2枚のアルバムでトリビュートされていた、楽曲担当のブロードウェイ・レジェンド、スティーヴン・ソンダイム逝去の直後に始まったこのリバイバルでは、主役のスイーニー・トッドをポップ・シンガーのジョッシュ・グローバンが演じていることでも話題になった作品です。

で、受賞予想ですが、この部門やはりトニー賞で最優秀ミュージカル部門受賞作が圧倒的に歴史的に強くて、過去65回中37回はトニー賞の最優秀ミュージカル部門(新作かリバイバル)受賞作が取ってるんです。ただ気になるのは去年はトニー賞受賞作『A Strange Loop』が受賞逃してるんですが、やはりここはトニー賞受賞作の『Kimberly Akimbo』が本命◎でいいでしょう。対抗○は同じくトニー賞最優秀リバイバル・ミュージカル部門受賞の『Parade』、と行きたいところですが、去年『Kimberly Akimbo』に次ぐ人気を呼んでいたという『Shucked』が、ブランディ・クラークシェイン・マカナリーという2人の今年のグラミー・ノミニーが絡んでて妙に気になるので、こちらを対抗○、『Parade』は穴✗にしておきます。

48.ビジュアル・メディア向け最優秀コンピレーション・サウンドトラック部門(アーティストとプロデューサーに与えられる賞)

○ AURORA - Daisy Jones & The Six
◎ Barbie The Album - Various Artists
✗ Black Panther: Wakanda Forever - Music From And Inspired By - Various Artists

  Guardians Of The Galaxy, Vol. 3: Awesome Mix Vol. 3 - Various Artists
  Weird: The Al Yankovic Story - Weird Al Yankovic

ミュージカルの次、ここからは映画またはTV映画対象の部門です。この部門は映画またはTV映画用に作られたコンピレーション・サントラ・アルバムへの賞ですが、対象作品のうち『バービー』『ブラック・パンサー:ワカンダ・フォーエバー』そして『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー Vol.3』の3つはもう皆さんよくご存知の作品なんでここで説明に必要はないですよね。その中でも、先日1月7日に授賞式があったゴールデン・グローブ賞では作品賞、監督賞、主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)にノミネートされ、結果最優秀オリジナル・ソング(ビリー・アイリッシュの「What Was I Made For?」)と映画興業売上功績賞(Cinematic & Box Office Achievement)を受賞した、グレタ・ガーウィッグ監督の『バービー』がやはり最強でしょうね。何といってもビリー・アイリッシュの曲とデュア・リパの「Dance The Night」2曲がSOYノミネート、更にこの2曲とニッキー・ミナージBarbie World」と主演男優のライアン・ゴスリングI’m Just Ken」と計4曲がこの後のソング部門のノミネートをほぼ独占してる、ってのはいかに何でも強力過ぎます。従って本命◎は『バービー』で間違いないでしょう。

一方対抗○ですが、ここは『』期のフリートウッド・マックをモデルにした、1970年代にスターダムの頂点に立った男女リードボーカルのスーパースター・ロック・バンド、デイジー・ジョーンズ&ザ・シックスの栄枯盛衰を描いた、アマゾン・プライム・ビデオ(APV)の6回ミニシリーズ『Daisy Jones & The Six』に付けました。このミニシリーズ、自分もAPVで観ましたが、主演のデイジー・ジョーンズ役のライリー・キーオ(昨年亡くなったリサ・マリー・プレスリーの実娘)とビリー・ダン役のサム・クラフリンの演技もさることながら、バンドメンバー役全員が1年間合宿して演奏とボーカルをトレーニングしてすべて吹き替え無しで撮影したという、リアルなバンド演奏ぶりがかなり胸に響く作品で、70年代ロックファンであれば間違いなく気に入る作品なので、まだAPVでやってると思うので一度観て下さい。また音楽の方も、過去2回(2016年58回、2018年60回)に最優秀プロデューサー部門にノミネート、前者の年にはプロデュースしたブリタニー・ハワードの『Sound & Color』で最優秀オルタナティヴ・ミュージック・アルバムを受賞しているブレイク・ミルズが全編共作・プロデュースし、ジャクソン・ブラウンマーカス・マムフォードなど西海岸ロック・シーンの重要人物達が関わっているので、楽曲的にも素晴らしい内容です。ちなみに自分はこのサントラ盤、昨年の年間アルバムランキング10位に入れました

残る穴✗はブラック・パンサーガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシーのどちらかで迷うところですが、基本既発表曲のコンピである後者よりは、スコアも手がけたルドウィグ・ゴランソンがプロデュースした新曲集である前者が相応しいかな。そこからのリアーナの曲が、この後のソング部門にもノミネートされてますしね。

49.ビジュアル・メディア(映画およびTV)向け最優秀スコア・サウンドトラック部門(スコア作曲者に与えられる賞)

○ Barbie - Mark Ronson & Andrew Wyatt
  Black Panther: Wakanda Forever - Ludwig Göransson
✗ The Fabelmans - John Williams
  Indiana Jones And The Dial Of Destiny - John Williams
◎ Oppenheimer - Ludwig Göransson

先ほどの部門は、映画またはTV映画用にいろんな楽曲(映画中に使われている場合もそうでない場合もあり)をオムニバス的に集めたサントラ・コンピ盤の賞でしたが、この部門は、その映画用に書かれたスコア音楽(昔風にいうと「映画音楽」ですねw)のアルバムのスコア作曲者に対して贈られる賞。今回大変面白いことに、ノミネート5作品のうち、マーク・ロンソンアンドリュー・ワイアットの『バービー』以外の4作品は、新旧の有力映画スコア作曲者の作品2作品ずつになっていること。一人はこの部門では過去33回ノミネート中、1976年第18回『ジョーズ』で初受賞以降11回受賞、特に1978年20回からは『スター・ウォーズ』『未知との遭遇』『スーパーマン』『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』『レイダーズ/失われたアーク』そして『E.T.』と実に6年連続受賞の金字塔を打ち立てているジョン・ウィリアムス。そしてノミネート2回、2019年61回の『ブラック・パンサー』が唯一の受賞と、この分野での実績は少ないものの、チャイルディッシュ・ガンビーノの2019年第61回グラミーSOYROY受賞曲「This Is Not America」の共作者・プロデューサーとしてのグラミー受賞など、音楽プロデューサーとしてもここ数年頭角を現してきているスウェーデンのルドウィグ・ゴランソン

実績だけから言うとジョン・ウィリアムスの圧倒的有利のように思えるのですが、彼は先ほど触れた6年連続受賞の後の昨年までの40年で24回ノミネート中4回しか受賞してないんですね。従ってこの勝負はまあ五分。そうなると2023年の映画関係の各賞の動向を考えると、ここはウィリアムスゴランソン、というよりも『オッペンハイマー』対『バービー』と見るのが妥当でしょう。そしてスコアという点で言えばこれはもうゴールデン・グローブ賞の最優秀スコア受賞済のゴランソンの『オッペンハイマー』が本命◎でしょうね。

ウィリアムスの作品はインディアナ・ジョーンズの最新作と、スピルバーグの自伝的作品『The Fabelmans』と作品的には地味なので、まあいいところ穴✗。対抗○はまさか本命◎共々ゴランソン、という訳にもいかないので、ここは『バービー』でしょうか。しかしこの部門、ゴールデン・グローブ賞でノミネートされてた『君たちはどう生きるか(The Boy And The Heron)』の久石譲さんがノミネートされてて欲しかったなあ。

50.ビジュアル・メディア(映画およびTV)向け最優秀ソング部門(作者に与えられる賞)

  Barbie World (From “Barbie The Album”) - Nicki Minaj & Ice Spice featuring Aqua (Naija Gaston, Ephrem Louis Lopez Jr. & Onika Maraj)
◯ Dance The Night (From “Barbie The Album”) - Dua Lipa (Caroline Ailin, Dua Lipa, Mark Ronson & Andrew Wyatt)
  I’m Just Ken (From “Barbie The Album”) - Ryan Gosling (Mark Ronson & Andrew Wyatt)
✗ Lift Me Up (From “Black Panther: Wakanda Forever - Music From And Inspired By”) - Rihanna (Ryan Coogler, Ludwig Göransson, Robyn Fenty & Temilade Openiyi)
◎ What Was I Made For? (From “Barbie The Album”) - Billie Eilish (Billie Eilish O'Connell & Finneas O'Connell)

最後は映画またはTV映画にフィーチャーされたオリジナル楽曲への賞ですが、先ほども触れたように、この部門のノミネート5作品のうち実に4作品がすべて『バービー』からの楽曲だという、ちょっとやり過ぎでないの?とも思えるノミネート状況です。で、自分はこのノミネートを見た瞬間にもう本命◎はビリー・アイリッシュの「What Was I Made For?」しかないな、と確信してました。その確信を裏付けるかのように、1月7日発表のゴールデン・グローブ賞でも、この曲が同じ『バービー』からのデュア・リパライアン・ゴスリングの曲を抑えて当然のごとく受賞してましたから、もうビリーが取るしかないと思ってます。正直、この次の主要部門予想でも触れますが、この曲、SOY受賞の可能性もかなり高い、と思ってますから

対抗○は、『バービー』からもう一曲SOYにノミネートされて(しまって)いるデュア・リパの曲かなあ。まあこの部門であればこの曲が取ってもまだ納得できますが、個人的にはこの程度の曲がSOYにノミネートされるんだったら何でザック・ブライアンの「I Remember Everything」がSOYにノミネートされないんだ!と未だに納得していません。

ということで『バービー』の曲はもうこれくらいでいい加減にして、穴✗はリアーナの『ブラック・パンサー:ワカンダ・フォーエバー』の主題歌「Lift Me Up」にしておきます。世が世なら穴✗ではなく楽曲的には充分対抗○レベルの曲なんですが、今年のこの部門、『バービー』だらけすぎますよね。

ということでいよいよ主要部門6部門(去年までの主要4部門+プロデューサー部門とソングライター部門)を残して全50カテゴリーの予想これで完了です。最後の予想も、今週の週末までにはアップしたいと思いますので、最後までよろしくお願いします。

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