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【恒例企画#3】Boonzzyの第63回グラミー賞大予想#10〜ミュージカル、ビジュアルメディア&プロデューサー部門

さあいよいよこのBoonzzyの第63回グラミー賞大予想、全51部門の予想のうち、主要4部門に行く前の最後のポストになりました。今回は、ミュージカル部門、ビジュアル・メディア部門そしてプロデューサー部門の計5部門を一気に予想します。ではまずミュージカル部門。

43.最優秀ミュージカル・シアター・アルバム部門(主なソロイスト/プロデューサー/楽曲作者に与えられる賞)

× Amélie - Original London Cast (Audrey Brisson, Chris Jared, Caolan McCarthy & Jez Unwin / Michael Fentiman, Sean Patrick Flahaven, Barnaby Race & Nathan Tysen / Nathan Tysen & Daniel Messe)
○ American Utopia On Broadway - Original Cast (David Byrne / David Byrne / David Byrne)
◎ Jagged Little Pill - Original Broadway Cast (Kathryn Gallagher, Celia Rose Gooding, Lauren Patten & Elizabeth Stanley / Neal Avron, Pete Ganbarg, Tom Kitt, Michael Parker, Craig Rosen & Vivek J. Tiwary / Glen Ballard & Alanis Morissette)(受賞)

  Little Shop Of Horrors - The New Off-Broadway Cast (Tammy Blanchard, Jonathan Groff & Tom Alan Robbins / Will Van Dyke, Michael Mayer, Alan Menken & Frank Wolf / Alan Menken & Howard Ashman)
  The Prince Of Egypt - Original Cast (Christine Allado, Luke Brady, Alexia Khadime & Liam Tamne / Dominick Amendum & Stephen Schwartz / Stephen Schwarts)
  Soft Power - Original Cast (Francis Je, Austin Ku, Alyse Alan Louis & Conrad Ricamora / Matt Stine / David Henry Hwang & Jeanine Tesori)

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1959年の第1回グラミーからの歴史を誇る数少ない部門の一つ、ミュージカル・アルバム部門。その歴史で今年は初めてノミネート作品が6作品という事態になっているのが目を引きます。その顔ぶれは、映画のリメイク(『Amélie』)、大ヒット作品の改めてオフ・ブロードウェイでのリバイバル(『Little Shop Of Horrors』)、ベテランロックミュージシャンが最新アルバムをブロードウェイでシアトリカルに演奏して映画化した作品(『American Utopia On Broadway』)、90年代の大ヒットアニメ作品のミュージカル化(『The Prince Of Egypt』)、『王様と私』と真逆の視点で、アジア人にとってのアメリカ文化のステレオタイプを面白おかしくミュージカル化した作品(『Soft Power』)など、近来まれにみる多様なラインアップ。しかしその中でも一際光っていて、本来昨年6月授賞式開催予定だった第74回トニー賞(バーチャル開催が決まったものの、未だに開催日時が決定していない)でも最優秀ミュージカル、最優秀ミュージカル女優部門をはじめ15部門ノミネートされているのが、あのアラニス・モリセットの1995年の大ヒットアルバムを題材にした『Jagged Little Pill』。過去にその時代の現実を赤裸々に直接に描いた『ヘアー』『レント』といった名作ミュージカルと並び称されるほどの絶賛を博したこのミュージカル、残念ながら今はブロードウェイがコロナで閉鎖されてますから見ることはできませんが、コロナが開けたら間違いなく再開されるでしょうから、是非見に行きたいな、と思わせる作品のようです。ということで本命◎はまあこれで決まりでしょう。

対抗○は、トーキング・ヘッズのリーダー、デヴィッド・バーンが最新アルバム『American Utopia』(2019)や、過去の自分のソロ・アルバムやヘッズ時代の楽曲の数々をブロードウェイでワイアレスマイクをつけて演劇風にパフォーマンスした意欲的企画、『American Utopia On Broadway』に。このパフォーマンスの映画はあのスパイク・リーが監督してリリースするなど、スリリングな映像も楽しめそう。ヘッズ・ファンとしてはああこれも観たいな!そして穴✗は、2001年のカルト・ロマンス・フィルムのミュージカル・リメイクで、ロスでの公演を皮切りにブロードウェイを始め世界各国で公演後昨年はロンドンのウェストエンドで好評を博して2020年のローレンス・オリヴィエ賞(優秀なミュージカル作品に与えられるイギリスの賞)の最優秀ミュージカル、最優秀ミュージカル女優部門にノミネートされた『Amélie』につけましょう。この作品、日本でも元AKB48渡辺麻友さん主演で2018年に短期間上演されたらしい。知らんかった。

44.ビジュアル・メディア向け最優秀コンピレーション・サウンドトラック部門(アーティストとプロデューサーに与えられる賞)

○ A Beautiful Day In The Neighborhood - Various Artists (Nate Heller - compilation producer)
  Bill & Ted Face The Music - Various Artists (Jonathan Leahy - compilation producer)
  Eurovision Song Contest: The Story Of Fire Saga - Various Artists (Savan Kotecha - compilation producer)
◎ Frozen 2 - Various Artists (Kristen Anderson-Lopez, Robert Lopez, Tom MacDougall & Dave Metzger - compilation producers)
× Jojo Rabbitt - Various Artists (Taika Waititi - compilation producer)(受賞)

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さて去年から今年にかけてコロナの影響を受けているのはご存知の通り、グラミー賞に限った話ではなく、映画関係の各アウォードも授賞式の延期や、バーチャル開催への変更などを余儀なくされてますよね第93回アカデミー賞は当初2/28授賞式の予定でしたが、昨年6月に早々と4/25への延期を決めました(これによりグラミーも1/31から3/14に延期されました)。これによって対象作品は2020/1/1〜2021/2/28までに公開された作品に拡大、更には当初この期間に公開予定だったものがビデオ発売に切り替わった作品も対象になることになり、例年に比べるとかなり対象作品が多くなってます。なんでも2年にまたがる期間が対象になるのは、第6回以来87年ぶりというから今回の状況の異常さが判ります。ノミネーション発表は3/15の予定なのでまだ候補の行方も混沌としている状況。一方もう一つの映画アウォード、ゴールデン・グローブ賞も2/28開催に延期されましたが、こちらのノミネートは2/3に発表済。ただ通常1月第1週に授賞式のあるこのゴールデン・グローブの結果が、この部門や、次の部門のヒントになってたんですが、今回はグラミーの対象期間が2019年9月〜2020年8月とこれらの映画アウォードの対象期間と大幅にずれてるので、全く重なっている作品がなくて参考にならない状態。そんな中で本命◎を予想するとすると、昨年が『A Star Is Born』、一昨年が『The Greatest Showman』そしてその前が『La La Land』と、ここ数年の王道作品受賞の傾向を踏まえてシリーズ1作目も2015年第57回でこの部門受賞している『アナと雪の女王2(Frozen 2)』でしょうかね。主題歌「Into The Unknown」もよく昨年耳にしましたしね。

今回のノミネートにはキアヌ・リーブスが久々に懐かしいシリーズでおバカに徹してる『Bill & Ted Face The Music』とか、NBCの『Saturday Night Live』出身のコメディアン俳優、我らがウィル・フェレルが脚本・制作を担当したユーロビジョン・コンテストを題材にしたコメディ映画とか、珍しくコメディ作品が2つもノミネートされてますが、この部門過去にコメディ作品の受賞はないので残念ながらこれらは対象外でしょう。そうすると対抗○は、昨年92回アカデミー賞の助演男優賞部門ノミネートのトム・ハンクスが自分の世代(アラ還)のアメリカ人が子供の頃親しんだ国民的TV番組のホスト、Mr.ロジャースを演じた『幸せへのまわり道(A Beautiful Day In The Neighborhood)』あたりでしょうか。往年の番組冒頭でMr. ロジャースが赤いカーディガンに着替えながら歌う番組テーマソング「Won't You Be My Neighbor」あたりは自分世代のアメリカ人にとっては子供時代を思い出させる郷愁のメロディでしょうからね。

そして穴×は、スカジョーことスカーレット・ジョハンセンが素晴らしい演技を見せたともっぱら評判(彼女も去年のアカデミー賞の助演女優賞部門にノミネートされてました)の『Jojo Rabbitt』に。

45.ビジュアル・メディア向け最優秀スコア・サウンドトラック部門(スコア作曲者に与えられる賞)

  Ad Astra - Max Richter
  Becoming - Kamasi Washington
◎ Joker - Hildur Gu∂nadóttir(受賞)
× 1917 - Thomas Newman
○ Star Wars: The Rise Of Skywalker - John Williams

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このオリジナル・スコア部門についても、従来はゴールデン・グローブ賞のオリジナル・スコア部門との関連がみられたんですが、去年のグラミー賞対象期間短縮あたりからその傾向も崩れてきてます。そして前の部門同様、今年はそれにコロナによる延期が拍車をかけて、ゴールデン・グローブ賞のノミネート作とはカスリもしてませんGG賞で2作品ノミネートで話題の、ナイン・インチ・ネイルズトレント・レズナーがスコア担当した『Soul』と『Mank』はいずれも来年のグラミー賞対象)。ただし!昨年のグラミー賞の対象期間短縮で対象から漏れていた『ジョーカー』(2019年10月リリース)が今年は対象作品としてノミネートされてて、この映画のスコア担当のアイスランド人の女性作曲家、ヒドゥル・グドナドッティル(なかなか読めませんよねえ、この名前w)はこの『ジョーカー』で昨年のGG賞オリジナル・スコア部門を堂々受賞してるんですよ。しかも!ヒドゥルは昨年グラミーではこの部門、別の作品のHBOミニシリーズの『チェルノブイリ』で見事受賞してますから、グラミーではこの部門、2年連続受賞するのでは、と思わせるに十分な状況。従って本命◎は『ジョーカー』です。

え?おいおい、『ジョーカー』もいいけど、この部門常連で過去にも山程受賞している、映画音楽の巨匠ジョン・ウィリアムスが他ならぬスター・ウォーズ最新作『The Rise Of Skywalker』でノミネートされてるじゃないの、こっちが本命◎じゃなくていいの、って?ははあ、そう思われるのも無理はないですね。何しろジョン・ウィリアムスはこの部門過去33回ノミネート中11回の受賞という最多受賞記録保持者ですし、最盛期の70年代後半〜80年代前半には、1978年第20回から『スター・ウォーズ』、『未知との遭遇』、『スーパーマン』、『帝国の逆襲』、『レイダーズ/失われたアーク』、『E.T.』と6年連続受賞というこれまた不倒記録を持ってますからね。でもね、そのジョン・ウィリアムス御大、ことスター・ウォーズシリーズ作品でノミネートされた時の成績は何とこれまで3勝4敗と負け越してるんですよね。なので彼、一見強そうなんですが、ここは対抗○としておきましょう。そして穴✗は、1995年第37回に『ショーシャンクの空に』で初ノミネート(ちなみにこの年はジョン・ウィリアムス御大が『シンドラーのリスト』で受賞)から今回9回目のノミネートで、2001年第43回の『アメリカン・ビューティ』2014年第56回の『007スカイフォール』(あのアデルの主題歌の映画ですね)に続く3回目の受賞を、第一次世界大戦の戦闘シーンをワンカットカメラワークで描いた話題作『1917命をかけた伝令』のスコアで狙う、トーマス・ニューマンに。

46.ビジュアル・メディア向け最優秀ソング部門(作者に与えられる賞)

× Beatiful Ghosts (From “Cats”) - Taylor Swift (Andrew Lloyd Webber & Taylor Swift)
  Carried Me With You (From “Onward”) - Brandi Carlile (Brandi Carlile, Phil Hanseroth & Tim Hanseroth)
○ Into The Unknown (From “Frozen 2”) - Idina Menzel & AURORA (Kristen Anderson-Lopez & Robert Lopez)
◎ No Time To Die (From “No Time To Die”) - Billie Eilish (Billie Eilish O'Connell & Finneas Baird O'Connell)(受賞)

  Stand Up (From “Harriet”) - Cynthia Erivo (Joshuah Brian Campbell & Cynthia Erivo)

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そしてこのオリジナル・ソング部門も前の2部門同様、昨年・今年のゴールデン・グローブ賞のノミネートとはカスリもしてません。ただここでは、昨年のアカデミー賞のオリジナル・ソング部門のノミネートとは『アナ雪2』の「Into The Unknown」と実在した元黒人奴隷の女性運動家の一生を描く『ハリエット』の「Stand Up」の2作品が被ってます。じゃあこの2曲が本命◎、対抗○だろうって?いやいや多分そんなにストーリーは単純じゃないと思いますよ。何しろ今回この部門には、クリストファー・クロス以来29年ぶりに昨年主要4賞を総なめしたビリー・アイリッシュの007映画主題歌「No Time To Die」がノミネートされてますから。ビリーは今年も主要部門のROY、SOY及びポップ・ソロ部門に「Everything I Wanted」がノミネートされるなど存在感を発揮してますので、主要部門の受賞は仮に逃すとしても、こういうセカンダリーな部門では軽々と持って行ってしまうのでは、というのが自分の見立てです。なので、本命◎はビリー

従って世が世なら間違いなく本命◎を付けていたであろう『アナ雪2』の「Into The Unknown」は残念ながら対抗○止まりですね。穴×は、じゃあ『ハリエット』の曲か、というとそれよりも映画の評判は散々でしたが、今年のもう一人の台風の目であるテイラーアンドリュー・ロイド・ウェバーと共作した、実写版『キャッツ』の主題歌が可能性あるんじゃないかという気がします。まあでもこの部門はビリーの独壇場でしょう

47.最優秀プロデューサー部門(クラシック以外)

◎ Jack Antonoff
× Dan Auerbach
○ Dave Cobb

  Flying Lotus
  Andrew Watt(受賞)

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さていよいよ主要4部門を残して最後の予想部門のプロデューサー部門まで来ました。去年はビリー・アイリッシュ旋風の流れで、お兄ちゃんのフィニアスがぶっちぎりの存在感のまま、楽々受賞して、最年少プロデューサー部門受賞者の記録まで作ってしまいました。今年はその去年、フィニアスの影に隠れていた2人のプロデューサー、ジャック・アントノフダン・オーワーバックが2年連続セットでノミネートされているのが何といっても目を惹きますね。その他は近年クリス・ステイプルトンジェイソン・イズベル、ブランディ・カーライルらのグラミー絡みのアメリカーナ系の質の高い作品を手がけ、一昨年は『A Star Is Born』のサントラにも関わった、今のアメリカーナ・シーンを代表するプロデューサー、デイヴ・コブがやはり目立ってます。彼はこの部門では2回目のノミネート、グラミー賞自体は一昨年の第61回で、ブランディ・カーライルの「The Joke」の作曲者として、最優秀アメリカン・ルーツ・ソング部門を受賞してます。残るはサンダーキャットのアルバム『It Is What It Is』のプロデュースの一択でノミネートされたフライング・ロータスと、デュア・リパBreak My Heart」やマイリー・サイラスMidnight Sky」の他、カミラ・カベロポスティの楽曲プロデュースの仕事でヒップホップからポップシーンで活躍するアンドリュー・ワットがそれぞれ初ノミネートされてます。

で、ここでの本命◎はやはりテイラーの『Folklore』で、ザ・ナショナルアーロン・デスナー(彼もノミネートされても然るべきだと思いますが)が手がけてない「My Tears Richochet」などの5曲と、ザ・チックスの『Gaslighter』での仕事が際立っているジャック・アントノフが最右翼ではないかと思ってます。プロデューサー部門では去年と今年のまだ2回のノミネートですが、プロデューサーとしては2016年第58回の最優秀アルバム受賞のテイラー1989』で既に受賞済。2020年を代表する作品『Folklore』の重要な部分を担った彼が受賞するのがまあ自然のような気がします。対抗○はこちらも2年連続ノミネート、2013年第55回は自らのバンド、ブラック・キーズの『El Camino』の仕事でこの部門受賞を果たしてるダン・オーワーバックと、2020年を代表するアメリカーナの名盤、ジェイソン・イズベルの『Reunions』と、ジョン・プライン最後の録音となった「I Remember Everything」を手がけたデイヴ・コブで迷いましたが、ここはこの2作品の素晴らしさから、デイヴ・コブに付けておきましょう。ダンもいい仕事してるんですが、今年はブルース系のアルバムなど地味な仕事が多かったので、穴×ということにしておきます。

はい、ということでBoonzzyの第63回グラミー賞大予想、いよいよあとは主要4部門を残すだけになりました。またこちらの予想が難しいんですが、何とかこの週末くらいまでにはアップして予想完結したいと思ってますのでお楽しみに。

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