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今週の全米No.1アルバム事情 #31 - 2020/6/13付

ジョージ・フロイド事件、そしてBlack Lives Matterは日々世界中で大きなうねりになっているようですね。改めて全ての不当な差別と不当な警察暴力がこの世からなくなりますように。

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さて今週末のBillboard 200チャートの1位ですが、余裕の横綱相撲で、予想通りレディ・ガガの新譜『Chromatica』が274,000ポイント(実売205,000枚)という、リル・ウジ・ヴァートEternal Atake』の288,000ポイント、エミネムの『Music To Be Murdered By』の279,000ポイントに続く今年3番目のポイントで堂々1位初登場。これで彼女のNo.1アルバムは、『Born This Way』(2011)、『Artpop』(2013)、トニー・ベネットとの『Cheek To Cheek』(2014)、『Joanne』(2016)そして『A Star Is Born』サントラ(2018)に続いて6枚連続。6枚のアルバムを9年と2日の期間で1位にキメたのは、女性アーティストではテイラーの10年9ヶ月の記録を超えて史上最短記録(男性やグループではビートルズガース・ブルックスなど11組のより短い記録あり)。

まあガガのアーティスト・パワーに加えて、このアルバム本来4月リリース予定だったのがコロナで延期になってて期待が高まっていたこと、先行シングルの「Stupid Love」(3月に最高位5位)や先週初登場1位のアリアナとのコラボシングル「Rain On Me」の大ヒットで地合は最高だった、ということもあってまあ当然の1位だったといえます。そして今回のガガの凄さは、フィジカルやデジタルの売上も高い上に、ヒップホップやラテン以外では今年最高のストリーミング・ポイントになる8,716万ストリームをマークしていること。この総合力のデカさ、さすがガガ、といったところでしょうか。

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そして今週2位に初登場したのは、いやあこの人も何だかんだいって強いねえ、というジミー・バフェット。この人、ある意味今やアメリカの特にシニア層に取っては国民的歌手みたいな位置づけになってて、シングルヒットなんてここ15年くらいまったくないんだけど、例のマルガリータヴィル・ブランドのレストラン・チェーンと、リゾート地でのツアーでは常にリゾート客を中心に集客力抜群のライヴを展開してるという存在感で、アルバムを出せばそれなりに売れ続けてます。でも今回2位の『Life On The Flip Side』(75,000ポイント、実売74,000枚)は2004年の『License To Chill』の1位以来の久しぶりの大ヒット。この力強い2位初登場も、やはりコンサート・チケットとのバンドル・オファーがかなりの貢献したらしいのですが、もともと今回のツアーは5月から10月にかけての予定だったのが5月6月の日程はコロナの関係でキャンセルされたらしいので、もしそれがなければ余裕で1位初登場だったかもしれませんね。いやあこのトロピカル感、これはこれで今の世相を明るくしてくれていいですねえ。

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そして今週8位に初登場してきたのは、昨今のラテン人気を反映して、プエルトリコ出身のラッパー兼シンガーのアニュエルAAことエマヌエル・ガズメイ・サンティアゴの2枚目のアルバム『Emmanuel』(39,000ポイント、実売3,000枚)。彼はトップ40的には6ix9ineの「BEBE」(2018年30位)やミーク・ミルの「Uptown Vibes」(2018年39位)、同じラテン系はパナマのシンガー、セックの「Otro Trago」(2019年34位)にフィーチャーされてはいますが、まだピンでのクロスオーヴァー・ヒットはない、でもラテン系では無茶苦茶最近露出してる奴。この間のバッド・バニーといい、最近こういうラテンの人達も余裕でトップ10登場してるのって、やはり「Despacito」やカーディBの「I Like It」の大ヒットがマスに与えた影響ってデカいんだなあ、と改めて感じますね。その中であのエンリケ・イグレシアスをフィーチャーしたフットボール賛歌、ちょっと見てみましょう。

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そして今週最後のトップ10内初登場は、最大の話題版。10位に初登場したラン・ザ・ジュエルズの『RTJ4』(38,000ポイント、実売30,000枚)。ラン・ザ・ジュエルズは、2000年のアウトキャストの名盤『Stankonia』に参加してシーンにブレイクしたキラー・マイク(黒人ラッパー)と同じ頃からニューヨークのオルタナ・ヒップホップシーンで活躍してきたエル-P(ヨーロッパ系白人ラッパー兼サウンドプロデューサー)によるヒップホップ・デュオ。彼らの作品はファーストから一貫してその社会の矛盾や差別を批判して赤裸々に語るフロウと、最近のチープなトラップとかじゃなくてロック的なサウンド・プロダクション(実際レイジ・アゲンスト・ザ・マシーンザックとかとのコラボも多い)でシーンの評価は極めて高くて、作品は常にその年の年間ベストの上位にランクされる、そんな連中。

そして今回、驚くべきは「Walking In The Snow」という曲ではあのジョージ・フロイドの「I Can’t Breathe」というフレーズと、警察ののど輪責め(Chokehold)をフローに織り込んでいるという先見性というか(作品は昨年秋に書かれたらしい)。そういう時代性もあって今回彼らにとっての初のトップ10作品になりました。でもこのアルバム、彼ら自身のウェブサイトではフリーでダウンロードできて、それはこのチャートポイントには反映されてないらしいので、それも加味すると実はかなりの大ヒットアルバムになってる可能性もありますね。そしてこちらは、あのサザン・ソウルの大御所、メイヴィス・ステイプルQOTSAジョッシュ・オムをフィーチャーしたナンバー。こちらも迫力満点です。

久々に賑やかな今週のトップ10、いつものおさらい行ってみましょう(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト)。

1 (-) (1) Chromatica - Lady Gaga
2 (-) (1) Life On The Flip Side - Jimmy Buffett
3 (2) (14) My Turn - Lil Baby ▲
4 (1) (2) Wunna - Gunna
5 (3) (3) High Off Life - Future ●
6 (6) (5) Dark Lane Demo Tapes - Drake
7 (5) (3) The Goat - Polo G
8 (-) (1) Emmanuel - Anuel AA
9 (7) (7) Blame It On Baby - DaBaby
10 (-) (1) RTJ4 - Run The Jewels

さて来週の1位予想ですが、6/5-6/11リリースのラインアップは正直小粒。ヒップホップの可能性を考えたとしてもあまり来そうなやつがなくて、この分だと来週はガガがストリーミングを更に延ばして1位に居座り、っていうのが一番ありそうなシナリオのような気がします。ではまた来週。

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