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今週の全米アルバムチャート事情 #209- 2023/11/11付

先週の告知通り、先週末に無事検査入院して、今は病室からこの記事を書いてます。何だか変な気分です(笑)。その間に阪神タイガースは見事日本シリーズ優勝達成、38年ぶりのアレ達成おめでとうございます!自分は38年前の優勝時は大阪におり、当日は土曜日だったけど道頓堀からほど近い本町のオフィスで仕事してました。優勝決定と同時にオフィス横の御堂筋を大勢の人が六甲おろしを歌いながら練り歩き始めたのを聴いて「ああ、阪神が優勝したんやな」と思ったのを覚えてます。岡田監督としては感無量でしょう。おめでとうございます!

"1989 (Taylor's Version)" by Taylor Swift

さて今週10月28日付のBillboard 200、全米アルバムチャートの1位は、既に先週末に入った段階でミリオン達成が見えていたテイラー・スウィフトの『1989 (Taylor’s Version)』がもうブッチギリという他ない圧倒的なポイント数で初登場1位を決めています。ポイント数は165万3,000ポイント、うち実売は135万9,000枚(即プラチナ・ディスクですね)でそのうち693,000枚は5色の色違いバージョンのヴァイナルの売上で、これは1991年にルミネ―ト社(旧ニールセン/MRCデータ社)が売上データを調査報告し始めてから最大の売上枚数になりました。これまでの記録は、去年初週で同じくテイラーの『Midnights』が記録した575,000枚というからもうヴァイナルでも完全無双状態のテイラーです。ここで1991年以降の週間売上ランキングをおさらいしましょう。過去100万枚以上の売上は25回、その中で同じ『25』で3回達成しているアデルと対抗して、6回ミリオン超えを達成しているテイラーの強さは際立ってますねえ。今回の『1989 (Taylor’s Version)』は1991年以降で歴代6位の売上になってます。

1.(337.9万枚)25 ▲11 - Adele (2015/12/12)
2.(241.6万枚)No Strings Attached ▲11 - ’N Sync (2000/4/8)
3.(187.8万枚)Celebrity ▲5 - ’N Sync (2001/8/11)
4.(176万枚)The Marshall Mathers LP ▲11 - Eminem (2000/6/10)
5.(159.1万枚)Black & Blue ▲8 - Backstreet Boys (2000/12/9)
6.(135.9万枚)1989 (Taylor’s Version) - Taylor Swift (2023/11/11)
7.(132万枚)The Eminem Show  ▲12 - Eminem (2002/6/15)
8.(131.9万枚)Oops!…I Did It Again ▲10 - Britney Spears (2000/6/3
9.(128.7万枚)1989 ▲9 - Taylor Swift (2014/11/15)
10.(125.8万枚)1 ▲11 - The Beatles (2001/1/6)
11.(121.6万枚)Reputation ▲3 - Taylor Swift (2017/12/2)
12.(120.8万枚)Red ▲7 - Taylor Swift (2012/11/10)
13.(116万枚)25 ▲11 - Adele (2016/1/9)
14.(114万枚)The Massacre ▲6 - 50 Cent (2005/3/19)
14.(114万枚)Midnights ▲2 - Taylor Swift (2022/11/5)
16.(113.3万枚)Millennium ▲13 - Backstreet Boys (1999/6/5)
17.(111万名)25 ▲11 - Adele (2015/12/19)
18.(110.8万枚)Born This Way ▲4 - Lady Gaga (2011/6/11)
19.(109.6万枚)Confessions ▲10 - Usher (2004/4/10)
20.(108.5万枚)Double Live ▲21 - Garth Brooks (1998/12/5)
21.(105.4万枚)Chocolate Starfish And The Hot Dog Flavored Water ▲6 - Limp Bizkit (2000/11/4)
22.(105万枚)The Bodyguard ▲18 - Whitney Houston / Soundtrack (1993/1/2)
23.(104.7万枚)Speak Now ▲6 - Taylor Swift (2010/11/13)
24.(102.2万枚)Feels Like Home ▲4 - Norah Jones (2004/2/8)
25.(100.5万枚)Tha Carter III ▲8 - Lil Wayne (2008/6/29)

今回の再録版はオリジナル収録曲13曲とデラックス・エディション収録の3曲「Wonderland」「You Are In Love」「New Romantics」に加えて、今回は、リリース日のスポティファイ・デイリー・チャート初登場1位だった「Slut!」を含む5曲の未発表曲を加えた21曲収録というファンには逃せない内容。さらに「Bad Blood」をケンドリック・ラマーを再びフィーチャーしたヒップ・ホップ・バージョンを追加したデラックス・バージョンもほぼ同時リリースされたのと、ヴァイナルのうち、小売チェーンのターゲット向けタンジェリン(蜜柑色ヴァイナル)・バージョンにはもう一曲「Sweeter Than Fiction」の再録バージョンも追加で収録されてるそうです。
リリース直後にはファンがストリーミングに殺到して、アップル・ミュージックとスポティファイがクラッシュしたというからテイラー人気恐るべし。NFLカンザスシティ・チーフストラヴィス・ケルシーとのオープンな交際ぶりもメディアを騒がせているテイラー祭りは当分続きそうです。

"SEVENTEENTH Heaven: 11th Mini Album" by SEVENTEEN

そしてテイラーなかりせば今週、BTS、スーパーM、ストレイ・キッズ、ブラックピンク、TXT、ニュージーンズに続く7組目のKポップ全米アルバムチャート・ナンバーワン達成だったSEVENTEENの11作めのEP『SEVENTEENTH Heaven: 11th Mini Album』は100,000ポイント(うち実売98,000枚はCDのみ)で惜しくも(といっても1位のテイラーとは桁が違いますが)初登場2位に甘んじています。これで彼らの2位は今年4月の『10th Mini Album: FML』に続いて2枚め。前回は135,000ポイントと頑張ったんですが、モーガン野郎の『One Thing At A Time』に1位を阻まれてます。

あのマシュメロをフィーチャしたオープニングの「SOS」からラストを締める「God Of Music (Instrumental)」まで全8曲とEPにしては曲多めの今回のリリース、内容はいつものようにヒップホップ風味を軽くまとったメインストリーム・エレクトロ・パワー・ポップ路線とこのところのメジャー寄りのスタイルを維持してます。楽曲のクオリティもかなり高くて、チャートでの存在感もましてきたSEVENTEEN、そろそろ次作くらいで首位取りしても全くおかしくないですね。あと、本来なら今回の第66回グラミー賞の新人賞部門にノミネートされてもおかしくないのですが、ノミネート予想ブログでもコメントしたように、Kポップにはなぜかハードル高いグラミーなのでなかなか難しいんでしょうなあ

"Larger Than Life" by Brent Faiyaz

以上トップ10内は上位2枚の初登場のみでしたが、今週11位から100位までの圏外には6枚のアルバムがエントリーしています。惜しくも11位初登場で2枚目のトップ10を逃してしまったのが、R&Bシンガーのブレント・ファイアズの『Larger Than Life』。前作の『Wasteland』(2022位2位)で初のトップ10を決めてましたが、今回はギリギリ11位。今年になって音楽配給会社のユナイテッド・マスターズ社と契約して設立した自分のレーベル、ISOシュープリマシーからリリースしたこのアルバム、デジタル・ダウンロードとストリーミングのみのためか彼にとっての初のミックステープ扱いになってるようです。

前作『Wasteland』の時は、ディアンジェロを思わせるような世界観を持ったシンガー、と評したんですが、今回このアルバムを聴いていると、もう少しメインストリーム寄りのスタイルなのかな、という感じ。ちょうどラファエル・サディークあたりを思わせるようなしなやかな歌唱と楽曲のスタイルがR&Bファンにはぐっとくるところ多数あり。だいたいオープニングの「Tim’s Intro」なんて曲の途中にあのTLCの「No Scrub」のイントロの四音のギターフレーズがループで使われてて、これだけでもニヤリとしてしまいますよね。最近いいR&Bレコードがないなあ、という方には是非聴いてもらいたい一枚です

"Dave’s Picks, Volume 48: Pauley Pavilion, UCLA, Los Angeles, CA, 11/20/71" by Grateful Dead

続いて33位はお馴染みのグレイトフル・デッドのライブ音源コレクター、デイヴ・ラミューさんによるライヴ音源集第48弾『Dave’s Picks, Volume 48: Pauley Pavilion, UCLA, Los Angeles, CA, 11/20/71』。CD3枚組です。
第43弾の1969年録音のサンフランシスコのアルバムは、さすが地元のしかもデッド最盛期の音源ということもあって、11位ともう少しでトップ10まで行きましたが、その後は徐々にランクを下げてますね。まあ今回もこれまで同様25,000枚限定リリースなので、なかなかトップ10は難しいでしょう。今回はこれもまだ絶頂期の1971年、LAでの音源で、CD3枚目はボートラとして、その前年1970年10月のミズーリ州セントルイスでの音源が8曲収められてます。

"Danse Macabre" by Duran Duran

そして57位には昨年ロックの殿堂入りを果たしたデュランデュランが前作『Future Past』(2021年28位)から間をおかずにリリースした16枚目のアルバム『Danse Macabre』。これが今回いろんな意味で話題盤なんですよ。

まず2曲めにはデビュー当時の「Girls On Film」あたりの活きの良さを彷彿させるカッティング・ギターが支配的な「Black Moonlight」、ここで彼らはナイル・ロジャーズと8年ぶりに共演してます。そして今回の最大の話題は何とビリー・アイリッシュとフィニアスが「Bury A Friend」を提供していること。そもそも今回はハロウィーンをテーマにしたということでゴスな雰囲気を盛り上げる楽曲になってます。この他にもマネスキンの女性ベーシスト(サマソニでナニを見せてくれたあの子ですw)ヴィクトリア・ディアンジェリスをフィーチャーしたトーキング・ヘッズの「Psycho Killer」、ザ・スペシャルズの「Ghost Town」、ストーンズの「黒くぬれ!」といった楽しい選曲のカバーに加えて、自分たちの過去曲も3曲セルフカバー。更にはリック・ジェームズの「Super Freak」の一節を取り込んだ「Super Lonely Freak」などなど、なかなか彼ら楽しみながらやってるなあ、というのが伝わるそんなアルバムですね。

"Chronicles Of A Diamond" by Black Pumas

一方69位にエントリーしてきたのは、2021年第63回グラミーの主要部門にいきなり脈絡なくノミネートされて以来、グラミー賞の季節になると何かと話題に上ってくる白黒混合のR&Bロック・デュオ、ブラック・プーマズのセカンド・アルバム『Chronicles Of A Diamond』。前回半ば反則気味にデラックス・バージョンが最優秀アルバム部門にノミネートされたファースト『Black Pumas』は86位でしたから、グラミーで名が売れた効果は間違いなくあったんでしょう。

先行シングルの「More Than A Love Song」は既にロックのトリプルA(アダルト・オルタナティブ)チャートで5週間1位をマークしてますので、既にそれなりのリスナー層は確保しているようです。ちょうど90年代にテレンス・トレント・ダービーが出てきた時の彼の楽曲スタイルに通じる、R&Bとジャズとロックがブレンドされたスタイルなので、広く受け入れられるタイプのアルバムなんでしょうね。全体聴いた感じではもう一つ飛び抜けたものが欲しい感じもしましたが。

"To Be Eaten Alive" by Mariah The Scientist

ぐーっと下がって93位には、これが初のチャートエントリーとなる、アトランタ出身の女性R&Bシンガーソングライター、マライア・ザ・サイエンティスト(本名:マライア・アマーニ・バックルズ)のサード・アルバムになる『To Be Eaten Alive』。1997年生まれですから、きっとご両親はマライアにあやかって彼女を命名してに違いありません。芸名の「ザ・サイエンティスト」というのは、彼女がバケ学が大好きで、麻酔医を目指して奨学金ももらってNYのセント・ジョンズ大学で勉学に励んだ時期があったことによるものらしいです。

ケイトラナダや、ワンダガールロンドン・オン・ダ・トラック、ナインティーン85といった今脂の乗ってるR&B・ヒップホップ系のサウンドメイカーを配してしっかりした音作りのトラックに乗せて、ちょっと前のKミッシェルや去年のマニー・ロングあたりのコンテンポラリー王道R&B路線を達者な歌唱力で歌い上げるマライア、なかなかいいです。もともとトーリー・レインズに見出されて彼のレーベルからデビューしたらしいですが目が出ず、今回はエピックと契約、自分のインディ・レーベル、バックルズ・ラボラトリーズからリリースしたこのアルバムがブレイクしたというもの。ご存知のように去年5月から服役中のヤング・サグと最近付き合ってたらしく、このアルバムのラスト・ナンバー「Ride」では、珍しく歌ってるヤング・サグと微笑ましいデュエットを聞かせてくれます。R&Bファン、要注目ですね

"The Maverick Way Complete: Complete Vol 02" by Maverick City Music, Chandler Moore & Naomi Raine

そして今週最後の100位までの初登場はギリギリ96位にエントリーしてきた、アトランタを拠点に活動し、ここ数年グラミー賞のCCM(コンテンポラリー・クリスチャン・ミュージック)やゴスペル部門のノミネート常連になっている、CCMグループ、メイヴェリック・シティ・ミュージックの『The Maverick Way Complete: Complete Vol 02』。

ただこのレコードについての情報・データがネット上に一切なくて、どういうレコードなのかがよくわからないんだけど(そういうのも今どき珍しい)、タイトルから察するに何となく彼らのこれまでのパフォーマンスの集大成盤みたいなものなのかな。グループのリーダーであるチャンドラー・ムーアナオミ・レインがアーティスト名にクレジットされている通り、この二人とグループにいろんなCCMのアーティストが共演した、いかにもホワイト・ゴスペル、といった感じの楽曲が全22曲収められていて、スポティファイでは聴けますね。全部聴くと結構お腹いっぱいになります(笑)。

ということで今週の100位までの初登場は合計8枚でした。一方Hot 100の方は当然というかテイラーのドカ盛り状態で、トップ3は首位発進の「Is It Over Now? (Taylor’s Version) [From The Vault]」を筆頭に初登場で独占、トップ10は既チャートインの「Cruel Summer」(これはアルバム違うけどね)も含めて8曲、トップ40には20曲がチャートイン、今回の収録曲22曲全曲が43位までにすべて登場するという完全制覇状態でした。一方、上位初登場が一部に期待されていた、ビートルズ「最後の新曲」Now And Then」は残念ながらHot 100にはチャートインせず(UKでも初登場42位)、わずかにデジタル・ソング・セールス・チャートで首位を取ったに留まりました。ビートルズ、タイミング悪すぎ。では今週のトップ10おさらいです(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。

*1 (-) (1) 1989 (Taylor’s Version) - Taylro Swift <1,653,000 pt/1,359,000枚>
*2 (-) (1) SEVENTEENTH Heaven: 11th Mini Album - SEVENTEEN <100,000 pt/98,000枚>

3 (2) (4) For All The Dogs - Drake <95,000 pt/312枚*>
4 (4) (3) Nadie Sabe Lo Que Va A Pasar Mañana - Bad Bunny <73,000 pt/678枚*>
5 (5) (35) One Thing At A Time - Morgan Wallen <64,000 pt/1,988枚*>
6 (9) (7) Nostalgia - Rod Wave <46,000 pt/133枚*>
7 (6) (54) Midnights ▲2 - Taylor Swift <45,000 pt/13,000枚>
8 (7) (219) Lover - Taylor Swift <44,000+ pt/13,000枚>
9 (8) (10) Zach Bryan - Zach Bryan <44,000 pt/3,900枚*>
10 (11)(47) SOS ▲3 - SZA <42,000 pt/1,922枚*>

予想通りのテイラー祭り大盛り上がりとなった今週の「全米アルバムチャート事情!」いかがだったでしょうか。では最後にいつもの来週1位予想(チャート集計対象期間:11/3~9)ですが、これはひとえにテイラーのポイント減衰を上回る新譜があるかに尽きますが、前回のテイラーのミリオン超え『Midnights』のように2週目90%ダウンしたとしてもまだ165,000ポイント。一方新譜の方でこれに張り合う可能性があるのが、右派カントリーのジェーソン・オルディーンBTSジョングクのソロ。これは絶対ジェーソンには取ってほしくないので、テイラー首位キープか、ジョングク1位であれば許します(笑)。ではまた来週。

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