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「◯◯でもいい」と「◯◯しかない」は天と地の違い

映画を見に行きました。
公開から日が経っているので、上映している映画館も減ってきてるし、まだ上映していても早朝や夜だけだったり。
「終了予定」が載っているところも増えてきて、あわてて時間をやりくりして行ってきました。

平日でしたが、サービスデーだったからでしょうか、それなりにお客さんが入ってます。
78席+車いす席2
小さめのお部屋でした。

私はC列、前から3列目。
本当はもう少し後ろが良かったのですが、それより後ろはそこそこお客さんが入ってて、満員じゃないのに、並ぶのも悪いし、チャンプがいるので、前を通るのも気になるし、ってことで、まっ、3列目くらいなら、と。

で、字幕メガネ装着し、映画、堪能しました。

ただね、とっても気になったことがありまして、、、。
このシアターの車いす席は一番前の真ん中2席。
2列目からは階段になっているから、だと思うのですが。
帰りがけ、ちょっとそのスペースで腰をかがめてスクリーンを見てみたのですが、、、。

いやぁ!
「見た」というより「見上げた」でした。
座席に座ってたら、結構お尻を前に出して後ろにのけぞらないとスクリーン全体、見えないんじゃね?ってくらい。
(1人だったし、スタッフの人の視線があって、写真、撮れなかったけど)

これはないなぁ。

そりゃ、どうしてもこの映画館でしか観れない、でも他の席は満席、でも、どうしても観たい!というような状況なら、一番前のこの席を取る人もいるでしょう。
でも、席が空いてるなら、よっぽどの理由がない限り、この最前列は取らないよねっていう感じ。

でも、車いすで来たら、たとえ他の席がガラガラでも、ここになるわけです。
車いすを使用している人には体幹が弱い方もいるでしょう。
そんな人がこんな場所で2時間、体をのけぞらせてスクリーンを見上げるなんて!

でも、車いす席でない、もっと観やすい席で観たい!と、スタッフに段差を上げてもらうお願いをしたら
「車いす席があるんだから、そこで観ればいいだろ!」
「スタッフに迷惑かけてまで、わがまま言うな」と叩かれてしまうのでしょうか。
…どこぞのシアターでの炎上のように。

なんだか、哀しくて、なんだか悔しくて、、。
ふと、聴導犬と一緒に行ったレストランで、雨も降り、すごく寒いのに、テラス席(屋根付き)に案内されたことを思い出しました。
他のお客さんは待ってでも室内の席に案内されているのに、、、。
「入店拒否はしないけど、あなたたちの席は外ね」と言われた気がしたあの時のことは今でも忘れられません。

それと同じ。
「車いす」という理由だけで、誰も選ばないような席でしか鑑賞できないっておかしくないでしょうか。

そういうことがあるから、「障害者割引があるんでしょ」って言われるかもしれません。
では、「皆さんと同じ金額を出すので、好きな席を選ばせてください」と言ったらいいのでしょうか。
でもそれもきっと「わがまま」ってことになるんでしょう。


今日、どうしても観たいから「この席でもいい」と最前列に座るのと、いつ来ようが「この席で観るしかない」と最前列に座るのは、全く違うのです。


バリアフリーだ、合理的配慮の提供だ、というのは、ある意味、バリアありきのこと。

いつでも誰でも好きな席を「選ぶ」ことができる。
そもそも、そんな風に施設を、社会を作ることを目指したらいいのに。

この席を設定した人は、この場所で2時間スクリーン全体を見上げることを試してみたのかしら。
「たとえ他の席が空いていても、あなたはここでしか観れません」って言われることを想像してみたのかしら。

もし、そんな「想定」をしていたら、「こりゃ、他の方法を考えなきゃ」って、思ったかもしれません。

「この席に」と自分で選ぶのと、選択肢なく「この席で」と決められてしまうこと、そこには大きな違いがあると思うのです。

私は講演でも出前授業でもいつも言ってます。
障害があってもなくても、美味しいものを食べたい、好きなところへ出かけたい、エンタメを楽しみたい、、そんな気持ちは同じなんだということを。

環境が、社会が、いろいろな人の存在を想定して創られていたら、もっと多くの人たちが人生を楽しみ、また活躍できるに違いありません。
障害者がまるでお荷物や邪魔者、迷惑をかける存在のように言われるのは、それはその人のせいじゃないと思うのです。
そのひとが活躍できるように社会が整ってないせいだと思うのです。

それってもったいないこと。
障害があったって活躍できる人もいるし、障害があったって、消費者になれます。
観やすい映画館なら、「映画観に行こう」と出かけ、チケットを買う人も増えるかもしれません。
あそこのお店なら気持ちよく美味しいものが食べられる、と思えば、普段はしない外食にお金を使うかもしれません。
CMに字幕があって惹かれたら、それまで使ってなかったその商品を手に取るかもしれません。

施設を、店舗を、社会を誰もが使いやすく造るということはマーケティングの対象を拡げるってことなるんじゃないでしょうか。
…経済の仕組みには疎い私ですが、そんなふうに思うのです。

映画館を後にする時、私は何人もの車いすユーザーの友人の顔を思い浮かべ、「歩けるというだけで、好きな席で映画を観れて、なんだか申し訳ない」と、罪悪感すら感じてしまいました。

映画や舞台が大好きだから、その楽しさや興奮を多くの人に味わってもらいたいと思う私です。

最後に、、。
日本有数の劇場である「帝国劇場」の改築にあたり、すべての人が使いやすい劇場に!と署名活動が続いています。

車いすの人だって、自分の懐具合や希望に合わせて席を選びたい。
聞こえない人だって、推しの俳優さんの出る舞台をしっかり楽しみたい。
そんな声を劇場や国にあげていきます。

署名サイト「劇場をアクセシブルに 鑑賞に障害がある人もない人も一緒に楽しめる劇場を作ってください!!」
https://www.change.org/AccessibleTheatre

私も活動に参加しています。
ぜひご一読&ご協力をお願いします!

今回も長くなりましたが、最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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