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盛夏のアート見聞録(1)

私は、基本的に花より団子派である。実利が無いとなかなか動かないし、見て楽しむものはあまり好まない。

しかし、である。そんな私でも年に3回ぐらいは「素敵なものが見たい!」と思う日がある。それが一昨日だった。件の顔芸漫z......もとい金融ドラマを見ていた時も、何を思ったか徹夜で『イカロスの翼』を読んでいた時も、美術館に行きたい、と強く思っていた。

そもそも、この時世に美術館に向かうのは果たしてどうなのだろうか。丁度一昨日の午後も、とある繁華街でバカ騒ぎの延長戦上のある種のバイオテロを決行しようとしていた頭がお花畑な方々もいたようだが、それとこれとは訳が違う。感染が増加している地域の住民なので無論家で黙って過ごしているのが世間様にとっては公衆衛生上ベストなのだろうが、私は別に美術館ジャックなぞする気はさらさら無いし、目的地の美術館はさすがに歩いていけるような距離ではないがそれなりに近所であり、体調も良いし、ちゃんとマスクはするし、厚生省の接触確認アプリはコンビニに行くときですらいちいち起動させているぐらいだ。なにより黙って作品を鑑賞したいだけである。両親や周囲の人間にも相談してみたが、全員が私に肯定的だったので、まあ良いだろうと判断した次第なのだ。

そんなこんなで向かったのは「東京都現代美術館」である。最近まで改修工事で閉館していたのは小耳に挟んでいたが、いつの間に復活していたのやら。

……ここまでで賢明な読者諸兄はとうにご賢察されているとは思うが、私はアート関連のことはまるでズブの素人なのだ。ちなみに美術の評価はほぼ3である。そんな人間がたいしたことなんて書けるわけもない(無論そんなことは自分が一番分かっているが)。途中ふざけているような箇所も多々あり、一貫してド素人が主観に頼り切って書きなぐっている文章である。その点、ご承知の上で読み進めて頂けると幸いである。

昨日の時点では、3つの特別展が開催されていた。各展示については下記公式サイトをチェックされたい。
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/

私が選んだのはこれである。

てっきり購入時にはまだ選ばなくてもいいものだ、とばかりに思っていたのでチョイスに深い意味はない。



以下、展示作品の写真や内容の描写が含まれます。
いわゆるネタバレです。ご留意ください。

最初に向かったのはこちら。

もちろん美術音痴の私は、このエリアソン氏について何も知らないのだが、前書きによると環境保護的な視点からの作品を生み出しているらしい。違ってたらすみません。

展示スペースに入る私をいの一番に迎え撃ったのは、これ。

「あなたの移ろう氷河の形態学(過去)」2019
「メタンの問題」2019
「あなたの移ろう氷河の形態学(未来)」2019
グリーンランドの氷河の氷を紙の上で溶かし、顔料で着色したらしい。
第一印象としては、ずいぶん柔らかい表情の作品だ、ぐらいにしか思わなかったのだが、そんな手法が採られているなんて思いもよらない。説明を読んでからは思わず脳内で唸ってしまった。エリアソン、お主、なかなかやるではないか。
しかし、私の唸りは展示室を出るまで止まらなかった。

「クリティカルゾーンの記憶(ドイツ-ポーランド-ロシア-中国-日本)no.1-12」2020
この展覧会を開くにあたり、作品はベルリンから日本まで陸路と海路で運ばれた。その揺れを記録して12枚の作品に仕上げたというのだ。
これには度肝を抜かれた。大げさに聞こえるようだが本当である。
交通インフラは、基本的に乗り心地が重要な評価点になってくる。それを逆手に取った発想には、正直なところ感嘆しかない。エリアソンすごいわ。さっき知らないとか書いちゃってすみませんでした。

続いて
「あなたに今起きていること、起きたこと、これから起きること」2020
これは写真を撮り損ねてしまったのだが、簡単に説明しておくと、来場者の影を複数色のハロゲンランプで壁に映し出し、それが作品となっている。これもなかなか面白い。

そして順路を進むと見えてきたのは氏のスタジオを再現した
「サスティナビリティの研究室」である。

なるほどなぁ、と思わせるアイデアや、これ売ってたらちょっと欲しいかも……と考えてしまうようなものまでいろいろある。

隣のスペースにはこんなものが。

「おそれてる?」2004
氏の色相探求から生まれたというこの作品。写真左側の丸いガラス板がゆっくり回っていて、それをライトで投影しているのだが、私の視界に入った直後、ちょうどこの形となったのだ。本当は動画で見て頂くのが一番分かりやすいと思うが、仕様上難しいので諦めることにする。どうしても見たい、という方はTwitterでご連絡いただきたい。

さらに進むと、大きな天幕が降りているスペースに出てきた。すわ、何事?と思い中に入ってみると、これがこの展覧会のための新作、
「ときに川は橋となる」2020 であった。
この展覧会で、一番衝撃だったと言っても過言ではない。今までの私の「現代アート」の概念を覆した。純粋な感動しか残らなかった。この感情を、私が言葉になぞ表すのは到底無理である。
あえて記録にも残さなかった。もし写真なり動画なりで残して、後で見返したら、最初に見た瞬間の感動が上書きされてしまうような気がしたからだ。
そういうわけで、このnoteでもあえて深く言及するのは控えさせていただく。

最後はこちら。

「ビューティー」1993
暗い空間の中、頭上からミストが降ってくる。なんとも幻想的であった。あとめっちゃ涼しい。打ち水的な感じで、何ともいい。

この後も色々見て多少は考えもしたので、また続けることにする。

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