【読書メモ】『続・ゆっくり、いそげ』(影山知明、クルミド出版)
クルミドコーヒー、というかフェスティナレンテには生き残って欲しいのでECで珈琲豆を購入し、そういえばまだ読んでいなかったのでこちらも買った。
クルミド出版の新レーベルcallsの一作目。内容は前作『ゆっくり、いそげ』の考えを進めたもの、ではあるのだが実はまだ途中で、読者からの反響を元にして調整・変更していくというあたらしい出版の形を目指している。音楽の世界で言うコール&レスポンスのように本を作ろうということであり、レーベル名はここから来ている。その内容を反映している装丁も、背が剥がれやすくなってるなど作成途中感のあるもので通常であれば「壊しちゃったかも?」なんて思ってしまうけれど、意図がわかれば愛おしく思えてくるから不思議だ。
内容については頷くことがとても多く、というかサプスクリプションで本屋を作っているBOOKSHOP TRAVELLER でやりたいことを言語化して、進化させたような、そんなイメージ。
目的のために組織を作り人を育てるのではなく、人のために組織ができ目的も人のために設定されるあたらしい組織論であり経営論。
前作の時も思ったけれど個人店では意識してもしなくても自然とやっていることを、組織単位でしかも持続的に大きくしつつ実践していることで、それは著者の影山知明さんがコンサルティングファーム、ベンチャーキャピタルを経てきたことが関係しているように推測する。
ともすれば精神論に陥りがちな個人店のノウハウを一般化・理論化できるのは、やはり前職でゴリッゴリにビジネスの世界にいたからだろうと思うのだ。
特に「自動車か(エンジニアリング)、植物(ブリコラージュ)か」の対比やエンジニアリングの考え方の論理的帰結として「いのちの規格化」に陥るという指摘は納得感が強い。
小商いとか身の丈とかそういった言葉の先にあるものを見せてくれる本である。
影山知明さん。一度取材でがっつりお話を聞いたけどまた伺いたいなあ。
以下、気になった箇所を引用する。覚書として。
"「あるもの」に着目をし、それらの組み合わせから何かを創造していく技術や知恵のことを「ブリコラージュ(bricolage)」という。" p.26
"どんないのちも、成長とともに必ず縮減を並走させている。" p.45
"場が力を持つための五つの条件"から
"目的がなくともふらっと行ける場であること。"
"多様な人が参加できる場であること。"
""主"の存在"
"主客同一の要素があること。"
"楽しく、遊びの要素があること。"
p.118-p.124
"「人を集めるには?」ではなく、「人が自然と集まるようなお店をつくるには?」"p.189
"「エントリーマネジメント」という考え方"p.194
"システムをつくるには、それをつくるための原初的な「問い」がいる。"p.228