店主と、本のある暮らし April 2022
こんにちは。いどうほんやKOKOです。
Instagramにて連載中の、【店主と、本のある暮らし】を
noteにも投稿していきたいと思います。
本との出会いや、交流のきっかけになればとても嬉しいです。
としょかんライオン
April 4, 2022
本屋の開業と同時に、司書としての仕事も始めました。
本好きな子どもだった私にとって、司書は憧れの職業でした。
でも、小さい頃から図書館が好きで、よく利用していたのかというと、実はそうではありません。
中学、高校の頃はほとんど近寄らず、上手に利用できるようになったのは大学生になってからです。
なぜか。
お腹が鳴って、図書館中に響きわたった(気がする)から。
というのは冗談だとしても、あの頃のあの図書館は静かすぎました。
みなさんは、図書館では静かにしなければならないという決まりを窮屈に感じたことはありませんか?
もちろん、静かに過ごしたいし、騒いだり走ったりしている人がいたら困ります。
誰もが、安心して気持ちよく過ごすために、決まりはとても大切なものです。
これは大前提。
でも、静かにってどのくらい?一言もしゃべっちゃダメなの?笑っちゃいけない?
自分がたてる、靴の音や椅子をひく音にも(お腹の音にも)びくっとして冷や汗をかく。
今なら笑い話ですが、その頃はよく考えもせず、勝手に不安に思っていたのです。
ルールを大事に思うあまり、考えることをやめてしまうと、
知らぬ間にルールに支配されかねないということには、気を付けなくてはと感じます。
例えば、ルールを守ることで、逆に安心や安全が脅かされてしまうとしたら?
きちんと自分で考えて、判断できるようになることはとても大切だし、ルールを変えていく柔軟さも必要です。
自分にとって、とても大事な決断を迫られたときに、
「だってそういうルールだし。」「そうしちゃいけないって言われたから。」
そんな言い訳をして、
本当は大事だと気付いていることを実行できない、なんてことがないように。
久しぶりに『としょかんライオン』を読んで、そんなことを考えたのでした。
***
『としょかんライオン』
作:ミシェル・ヌードセン
絵:ケビン・ホークス
訳:福本 友美子
発行:岩崎書店 2007年初版
はなをくんくん
April 7, 2022
今年の冬は、大雪と感染症の影響で、我が家も冬眠状態でした。
この雪はいつ解けるのだろうかと心配していましたが、春はちゃんとやってくるものですね。
お隣の玄関先には、雪の合間から芽を出したクロッカスが咲いています。
『はなをくんくん』に登場する動物たちのように、鼻が利くわけではありまんせんが、朝、玄関を出た瞬間に、「あ、春の匂い!」と感じることはありませんか?
この時私の中には、まだ歩道の脇に雪が残る中、新しい靴を履いて、春物の上着を着て、どきどきわくわくしながら曇り空の下を歩いて行く幼い自分のイメージが浮かびます。
そして、鼻から胸いっぱいに息を吸い込みたくなります。
あ、でも、そろそろ花粉症にも気を付けなくては!
それからヒグマにも、くれぐれも気を付けましょう。
***
『はなをくんくん』
文:ルース・クラウス
絵:マーク・シーモント
訳:きじま はじめ
発行:福音館書店 1967年初版
からすのパンやさん
April 12, 2022
今日は「パンの記念日」。
毎月12日は、パンの日なのだそう。知らなった!
パンの絵本はたくさんありますが、今日手にとったのは『からすのパンやさん』です。
改めて読んでみると、子育てと仕事の両立についての描写があることに気が付いて、はっとします。長年の悩みの種でもあったこの問題。
からすのおとうさんとおかあさんは、心配はするけれど、不機嫌になったりはしない。“そんなこんなで”とやさしく軽やかに対処して、家族でパンやさんを楽しんでいきます。
そんなこんなでパンやさんは大繁盛!
見習いたいです。
さて、絵本を閉じようとして、作者のあとがきが目に留まりました。
そこには、かこさとしさんがこの作品を作るにあたって、ロシアのモイセーエフ舞踊団の演目「パルチザン」から影響を受けたことが書かれていました。
調べてみると、モイセーエフ舞踊団は、ウクライナ出身の舞踊家モイセーエフがソ連時代に創設したもので、モイセーエフは各地の民族舞踊を基に、多くの演目を残したようです。
思わず、ドキりとしてしまいます。
かこさんはこの作品から、“一人ひとりの人物描写が、こころにくいまでに人間的なふくらみとこまやかさで舞踊的にえがきつくされていること”に心打たれ、“個々の生きた人物描写と全体への総合化の大事”さを学び、からす一羽一羽の描写にそれを試みたそうです。
“生きた人物描写”という表現にも、胸を締め付けられます。
かこさんのことばから、モイセーエフの作品、表現、芸術に、同時に現在の世界の情勢に思いを巡らせます。
いつだってどこでだって、それぞれ尊重されるはずの個性があり、人生があるはず。
パンの日に読んだ『からすのパンやさん』は、私に多くのことを考えるきっかけを与えてくれました。
***
『からすのパンやさん』
著:かこ さとし
発行:偕成社 1973年初版
ハリネズミは月を見上げる
April 18, 2022
「自己肯定感」という言葉を最近よく耳にします。
「ジココウテイカン」て、なんだかカクカクしていて堅いことばに感じるのは私だけでしょうか。
言葉の意味とのイメージがかけ離れている気がします。
それこそ、ハリネズミのハリのような。
「自己肯定感」は、自分を大事にすることで、それはイコール、相手も大事にできることだと考えています。
自信に満ちた行動や、前向きな自己主張は、とても魅力的で周りに勇気と活力を与えることがある一方で、ときに人を傷つけることもありますよね。
それが理解できていないときの行動の原動力というのは、「自己肯定感」とは違う、真逆の感情なのではないのかなと思うのです。
ハリは、自分を守ることもあるし、大事な人を守ることもあるけれど、人を傷つけることもある。
大人になっても悩むことばかりです。
なんだか、考えがまとまらなくなってきました。
言いたかったのは、もっと単純なことなのですが……
つい先日、大好きな人と久しぶりに会っておしゃべりができました。
短い時間だったけれど、素敵なひとときだったなあ。
誰かを好きだ、魅力的だ、話したい!
そんな風に思うときと、自己肯定感の高まりは、密接に関係しているような気がします。
すごく魅力的で大好きな人と過ごすときの自分が、ありのままの自分なら、すごくうれしいし、素敵なことですよね。
その日、待ち合わせまでの時間に読んでいたのが、『ハリネズミは月を見上げる』でした。
***
『ハリネズミは月を見上げる』
著:あさの あつこ
発行:新潮社 2020年初版
水曜日の手紙
April 20, 2022
今日は郵政記念日。
そして、水曜日!
そうだ、私の読みたいリストの中に、ちょうどぴったりのがあったはず!
読み始めるなら今日しかないだろうと思いたって、さっそく買いに行きました。
そう、だから、まだ読んでいないのです。
これから、読み始めます。
紹介文によると、どうやら、絵本作家を夢見ていた登場人物がいるようです。
出会いの予感にわくわくしています。
***
『水曜日の手紙』
著:森沢 明夫
発行:角川書店 2021年初版(文庫)
好きなものを売って10年続く店をつくる
April 24, 2022
お店を始めると決めてから、たくさんの本を読みました。
起業の本、移動販売の本、まちづくりの本、デザインの本、本の本。
個性が光る、小さなお店が紹介されている本や雑誌も読みました。
でも、なかなか、実際のまち歩きや、お店巡りができなかったなぁ……。
これから、素敵な場所やお店や人に、そして本に、たくさん出会えたらいいなと思っています。
まずは3年、頑張って続けられますように。
皆様よろしくお願いいたします。
***
『好きなものを売って10年続く店をつくる』
著:碓井 美樹
発行:KADOKAWA 2021年初版
さくららら
April 26, 2022
エゾヤマザクラやソメイヨシノが満開の、中島公園。
公園内にある、北海道立文学館では、4月16日から6月5日までの間、
「花*彩々―文学の中に咲く―」という特別展が開かれています。
のぞいてみると、数々の北海道ゆかりの文学作品から、季節を感じる描写がたくさん紹介されていました。
どの作品を見ても、見事に、北海道らしさが伝わってくるものばかり。
まさに、文学の中に咲いているといった感じです。
何気なく過ぎていく季節も、絵や写真やことばによって、
額に入れて大事に飾っておきたいほど美しいのものに変わるこの感覚が、いいなあと思う春の日でした。
展示の中で紹介されていた『さくららら』。
雪の4月から始まる、北海道の春を感じられる一冊です。
今年の桜さんは、ちょっと早めに咲きましたね。
***
『さくららら』
文:升井 純子
写真:小寺 卓矢
発行:アリス館 2021年初版
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