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レティシア書房店長日誌

「篠山紀信、横尾忠則を撮る」

 篠山紀信が亡くなりました。日本の写真界に大きな影響を与えた人でした。「篠山紀信、横尾忠則を撮る」(新刊3740円)は、2014年に「横尾忠則現代美術館」で開催された「記憶の遠近術〜篠山紀信を撮る」の公式図録です。

 もともと横尾と篠山は、「私のアイドル」というタイトルで写真集を作ろうと考えました。横尾と、彼にとってアイドル的なスターたちとの2ショットが基本的なコンセプトで、1968年、三島由紀夫との撮影からスタートしました。そこからさらに広がり、知人、恩師、思い出深い人たちと共有した時間に焦点を当て、紆余曲折を経てやがて写真集「記憶の遠近術」というタイトルで1992年に完成しました。
 「それは『私のアイドル』というよりも、むしろ篠山の写真による『横尾忠則伝』とでもいうべきものです」と本書の巻頭に書かれていますが、篠山が写真を通して、稀代の現代美術作家である横尾を丸ごと撮した意欲作品だと思います。三島との2ショットは、やはりこれか!と思いましたが、作家、俳優、映画監督、ミュージシャンなど多くの人が登場し、どれも面白くて、どの写真も堪能しました。篠山と横尾、巨匠となった二人ですが、若かった頃の才気走った感覚が刺激的です。


 さてもう一冊、横尾忠則の本を入荷しました。「Henri Yokoo Usso/アンリ・ヨコオ・ウッソー」(新刊3960円)です。
 19世紀末から20世紀初頭のわずか25年ほど活動し、当時はほとんど評価されなかった画家アンリ・ルソー。幻想的で、浮遊感漂う作品を残してきたルソーの作品を、横尾が解釈して描きなおしたものを集めたのが本書です。もともと、彼は長期間にわたって「ルソーシリーズ」という作品を描いていましたが、最新作も含めて完全収録したのが本書です。
 ルソーの作品と横尾の作品が並んで配置されています。「アンリ・ルソーには、横尾氏がどうしても意識せざるを得ない魔術性がありました。それは確かに、未だ謎の多いこの作家のみが持っていた描くことのデモーニッシュな部分であったに違いありません。」と本書の解説に書かれていますが、”魔術性”が描き出された作品が並んでいます。南伸坊のコメントが書かれているのが楽しい。
 店にはルソーの画集(800円)もありますので、じっくりご覧ください。


●レティシア書房ギャラリー案内
1/24(水)〜2/4(日) 「地下街への招待パネル展」
2/7(水)〜2/18(日) 「まるぞう工房」(陶芸)
2/28(水)〜3/10(日) 水口日和個展(植物画)
3/13(水)〜2/24(日)北岡広子銅版画展

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