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レティシア書房店長日誌

本の雑誌編集部編「本屋、ひらく」
 
 
街から本屋が消えてゆくと言われて久しいのですが、新しい本屋を開店させた人たちがいます。この時代に本屋を開いた22人が、日々の商いの中から綴った言葉を集めたのが本書です。(新刊/本の雑誌社1870円)

 ⑴関東(東京・神奈川)、⑵東北・関東、⑶中部・関西、⑷中国・四国・九州、の4章に分けて各地の店主の開店までの道のりやこれからが語られています。
 京都では、烏丸五条下った場所にある絵本専門店「本屋ともひさし」が登場。店主の高橋さんの実家で、創業から100年ほど「神職装束店」として商いをされてきた町屋です。2019年末に閉店されました。「二代目店主である父の高齢に伴い、装束店廃業がカウントダウンに入ったとき、『店の間』が閉じてしまえば実家の町屋(町家)は『死んだ家』になる、という危機感がありました。実際、店の間の奥の方は物置と化しており、陳列棚の床板は白蟻にやられてミルフィーユ状態、電気配線も古い『ガイシ』を使っていたため漏電の危険性が高い.......と惨憺たる有様でした。」という状態から、家を片付け、2021年10月に開店しました。
 高橋さんは以前から当店のお客様だったので、開店の報を聞いて駆けつけました。古い大きな町屋に、店主が選んだ絵本や児童書が配置されていて、暖かな感じのお店でした。本屋の経験もない女性が奮闘して開店までこぎつけたのです。何より本屋さんが大好き、という店主のチャレンジが楽しみです。
 以前、京都の川端二条にギャラリー&カフェ「UNITE」というお店がありました(残念ながら閉店)。そのステキな空間で本を読んでいた大森さんが、東京で本屋を開店しました。その名前は「UNITE」。カフェのオーナーから譲り受けてもらったそうです。HPで見ると、カフェも併設していて読書に最適のいい雰囲気みたいです。大森さんは、本は「どこで買うか」と同時に「どこで読むか」が大事だと言います。
「しかし、現実の時間間隔から離れて読書に耽ることのできる場所はなかなか見つからない。そういった場所を求めて、いつも彷徨っていた自分が思い起こされる。」そんな時に出会ったのが京都のカフェ「UNITE」だったのです。自分が持つことのできた居場所をもう一度蘇らせたわけです。
 登場する22人、22軒の本屋さんの物語はどれもとても興味深かったです。開店までの楽しさ、しんどさは私にも覚えがありますが、それでも本屋を開こうとするのは何故? ぜひご一読ください。

●ギャラリー案内
11/15(水)〜26(日)「風展2023・いつもひつじと」(フェルト・毛糸)
11/29(水)〜 12/10(日)「中村ちとせ銅版画展」
12/13(水)〜 24(日)「加藤ますみZUS作品展」(フェルト)
12/26(火)〜 1/7(日)「平山奈美作品展」(木版画)

●年始年末営業後案内
年内は28日(木)まで *なお26日(火)は営業いたします。
年始は1月5日(金)より通常営業いたします。
 


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