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レティシア書房店長日誌


岩本慎史「オアハカの動物たち」(大福書林2750円)

 「オアハカ」ってどこ?メキシコの首都メキシコシティから南東へ400キロに位置する州です。ここは織物、刺繍、陶器等々の工芸品の産地。カラフルな色彩が特徴的な木彫りの工芸品「オアハカン・ウッド・カーヴィング」があります。もともと、ヨーロッパやアメリカからやってくる観光客向けに製作されたお土産品でした。それが時代を経るに従って技巧がグレードアップし、職人の数も増えて今やメキシコを代表する工芸品となりました。
 「ハエのように両手をこするカエル、ジャガーの体にロバの耳、そして髭のはえた人の顔、首のものすご〜く長いキリン。現代美術の気鋭も驚く水玉模様で埋め尽くされたウサギ.......。極彩色が大胆かつ繊細に施され、奇妙でいて人懐っこいさまざまな木彫りの動物たち。」と、本書で写真家の富田昇が書いています。
 モチーフは動物が主ですが、それ以外にも様々なジャンルの作品が存在していて、ここで取り上げられているのは、1960〜80年代の作品です。そして、この時代の作品を、堀内誠一、柚木沙弥郎、濱田荘司、猪熊弦一郎、柳宗理等の錚々たるアーティストが収集していました。本書の著者もまた蒐集家の一人です。


 「とにかく情熱が溢れてるね。牛だか犬だかわからないけど、『いきもの』って感じがするね」とは、柚木沙弥郎の言葉です。その色彩感覚、不思議な表情、見ているだけでなんだか愉快な気分になってくる作品がズラリと並んでいます。命溢れる木彫りは、確かに「生き物」です。一体でも部屋にあれば、気分が上がること間違いなしですね。
 なんと、和田誠も、彼が描いていた週間文春の表紙のいくつかに、オアハカン・ウッド・カーヴィングのジャガーを登場させています。(写真有り)
 

 実物を見てみたい!と思った方。大阪吹田の「国立民族学博物館」には常設コーナーがあるそうですよ。また、姫路市にある「日本玩具博物館」でも見ることができます。
 なお、本書著者の蒐集した作品の写真展が「ホホホ座・浄土寺店」で開催されます。(11月1日から19日まで。)まずは本書を見て、愉快な気分になってください。

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