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レティシア書房店長日誌


ロバート・ロドリゲス「ドミノ」
 
 
ロドリゲス監督は、派手な銃撃戦やアクションシーン満載の活劇が得意の監督で、それ以上でも以下でもないというのが個人的な思いでした。ところが、いつの間にこんなに洗練された映画を作るようになったのかと!驚きました。大爆発、激しい銃撃戦、カーチェイスだけの人ではなかった(ゴメンナサイ)。ヒッチコック監督の「めまい」のオマージュだという批評をみかけましたが、確かにヒッチコックの迷路に誘い込まれます。

 最愛の娘が行方不明になって心身のバランスを壊した刑事ダニーに、銀行強盗のタレコミが入ります。銀行に到着したダニーは、強奪される貸し金庫の中に、行方不明になった娘の写真を発見して愕然とします。そこへ、その写真を奪おうとする正体不明の男が現れます。なんだ、この不気味な男は?そしてなぜ娘の写真を奪おうとするのか?追いかけてゆくと、男はふわりとビルの屋上から飛び降ります。慌てて見下ろしても、そこに男の姿はありません。
 ここからダニーは、現実とも幻想ともわからない世界へ巻き込まれていきます。同僚の刑事には殺されそうになるわ、味方だと思っていた女性占い師をハサミで刺し殺そうとする自分自身に愕然とするわ、さらには現実の空間が歪み始めるわ、おいおいどうなるのこの映画?という展開です。え?これSF映画? 刑事物じゃなかったの?と思いながらも、サスペンスの運びの巧みさに操られてドキドキしながら画面に集中してしまいます。
 そしてラスト。映画は最初のシーンに戻って、なぞり始めます。監督の離れ業に、観ている方はもう、えっ?えっ?とパニックになってしまいます。催眠術というモチーフをここまで大きな嘘に仕立てて、観客をまんまと騙してしまう監督のテクニックには参りました。97分の映画ですが、活劇あり、サスペンスあり、SFありと盛りだくさんで満腹。大味な作品の多い昨今のハリウッドですが、こういう職人気質のオモロイ映画を作る人もいたんですね。楽しかった!

●ギャラリー案内
11/15(水)〜26(日)「風展2023・いつもひつじと」(フェルト・毛糸)
11/29(水)〜 12/10(日)「中村ちとせ銅版画展」
12/13(水)〜 24(日)「加藤ますみZUS作品展」(フェルト)
12/26(火)〜 1/7(日)「平山奈美作品展」(木版画)

●年始年末営業後案内
年内は28日(木)まで *なお26日(火)は営業いたします。
年始は1月5日(金)より通常営業いたします。
 


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