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レティシア書房店長日誌

ロバート・コノリー 映画「ブルーバック」

 オーストラリアで広く読まれている作家ティム・ウィンストンが、1997年に発表した児童文学作品「ブルーバック」が、今回映画化されました。ターコイズブルーの海に育てられた海洋学者の母と、同じ道を進んだ娘の物語です。
 若き海洋生物学者のアビーは、母親のドラが脳卒中で倒れたという連絡を受け、調査中の海域から西オーストラリアに戻ってきます。病院から二人が暮らした海辺の家に母を連れ戻し、世話を始めます。そして、この家で過ごした多感な少女時代に思いを馳せていきます。映画は、この家での母と娘の過去と現在を巧みに描いていきます。
 

 アビーは、8歳の誕生日にロバーズヘッドという入り江に母親に連れて行かれ、海底で青い大きな魚ウエスタン・ブルーグローバー(体長1.7m、体重40kgに達するベラ科の一種)に出会います。その魚をブルーバックと名付け、仲良くなっていきます。一方、ここにも開発の波が押し寄せ、母親たちは反対運動を開始します。その姿に賛同しながらも、馴染めないアビーは、大学進学を機に母の元を離れます。久々に戻ってきた我が家で、老いた母親と、大きな恵みを与えてくれる海への思いを深めていきます。
 映画に登場するブルーバックは、日本で象徴的に言えば、辺野古のジュゴンか、諫早湾のムツゴロウのような位置付けです。残念ながら、ジュゴンもムツゴロウも生息しにくい環境へと追い込まれていますが、オーストラリアでは、実際に浜辺は守られて、今も美しい環境です。この国の海洋に対する姿勢が見えてきます。

海中で出会う二人

 映画は、そんな美しい海をあます所なく捉えていきます。そして海中で出会うウエスタン・ブルーグローバーですが、これCGではなくて、リアルな人形を製作したそうです。ふわりふわりと海中を漂う大きな魚を見ているだけで、心が落ち着いてきます。

●レティシア書房ギャラリー案内
12/26(火)〜 1/7(日)「平山奈美作品展」(木版画)
1/10(水)〜1/21(日) 「100年生きられた家」(絵本)
1/24(水)〜2/4(日) 「地下街への招待パネル展」
2/7(水)〜2/18(日) 「まるぞう工房」(陶芸)


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