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レティシア書房店長日誌

映画「大地よ アイヌとして生きる」
 
 アイヌとして生き、様々な活動をする宇梶静江のドキュメンタリー「大地よ、アイヌとして生きる」(金大偉監督)は、とても心に残る映画でした。
 宇梶静江は、1933年北海道のアイヌ集落で生まれました。56年アイヌの出自であることを伏せて上京し、その後、結婚。俳優宇梶剛士は息子で、この映画のナレーションをしています。
 60年代から詩作を始め作品を発表を始めます。60歳代でアイヌの布絵に出会い、アイヌ刺繍を学び直し、古布絵の創作活動を開始します。その一方で、アイヌ民族の精神や、生き方についての啓蒙活動も始め、洞爺湖で行われた34回主要国首脳会議に先立ち開催された「先住民族サミット」アイヌモシリ2008に共同代表として参加しました。
 アイヌの哲学ともいえる大自然への畏怖、リスペクト、共生を彼女の語りと美しい北海道の大自然を捉えた映像が、ゆっくりと心の中に染み込んできます。

 ところで、最近始まった福島の原発処理水の放出について、首相の言葉にひっかかっていました。中国の言いがかりともいえる批判も問題ですが、何かと言えば科学的根拠に基づくという文句を繰り返す首相にも、なんか違う、と思っていましたが、この映画をみてその違和感が何かわかりました。自然の海になかった原発の残りものを、自然の海に返す。そこには、自然へのリスペクトもなければ、共にあろうとする精神もありません。ましてや、海の神様が私たちを守り、育ててきたという思いはありません。科学的根拠という言葉が錦の御旗になって、自然より人間が上という考えが見えます。
 映画の中で彼女はこんなことを言っています。
「地球は人間が作ったものではない。でも、一部の権力者がそう思って、勝手なことをやっている。そして、そういう人間をわたし達は許している。」肝に命じておかなければならない言葉です。

 「私たちまだ、この自然の中に抱かれた溢れる喜びを、取り戻すことができる!宇梶さんの美しい詩と共に、私たち自身がその力を思い出さなければいけない、と思います。今を生きる、これからを生きるすべての人に『大地よ』を観て、そしてもう一度大自然の豊かさを感じてほしいです。」これは、加藤登紀子さんの推薦文です。

店内には宇梶静江著「アイヌ力よ!」(藤原書店/新刊2420円)を在庫しています。もし興味を持たれたたら、ぜひお読みください。


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