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レティシア書房店長日誌

「フォロンを追いかけて」

 ジャン=ミッシェル・フォロンは、20世紀後半のベルギーを代表するアーティスト。ジャズギタリストのスティーブ・カーンのアルバムを集めていた人(私も集めていました)にはお馴染みで、彼のアルバムのほぼ全てが、フォロンの作品を使っていたのです。

 そのフォロンの作品が、「空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン」というタイトルで東京を皮切りに、全国巡業することになりました。(大阪は2025年あべのハルカス美術館で開催)
 1934年ブリュッセルに生まれ、ルネ・マグリットの壁画に感銘を受けたフォロンは、55年にパリ郊外へ移住して、ドローイングを描く日々を送っていました。フランスでは注目されなかったのですが、作品を投稿したアメリカの有力誌で脚光を浴び、60年代初頭には表紙を飾るまでの人気作家になっていました。
 その後、グラフィック・デザインなど活動の幅を広げたフォロンは、ヴェネツィア・ビエンナーレやサンパウロ・ビエンナーレにベルギー代表として参加するなど、国際的に高い評価を獲得していきます。版画や水彩画、ポスター、文学作品の挿絵など様々なジャンルにわたる作品は、ユーモア溢れる線画、豊かな色彩、幻想的な詩情に溢れていて、眺めているだけで不思議な気分になります。
 しかし、一見美しさに満ちた作品の裏側には、環境破壊や人権問題など厳しい現実への告発が潜んでいました。日本では1980年代と90年代に、大規模展覧会が全国を巡回しました。それから30年ぶりの展覧会に合わせて、「フォロンを追いかけてtouching FOLON」が2冊に分けて出版されることになりました。今回入荷したのは「Book1」(新刊2200円)です。

 1冊目はフォロンを「知る」旅がテーマです。1955年、21歳で故郷を離れパリにやってきたフォロン。色彩豊かな作品へと発展する前の初期ドローイング50点に、マルセル・プルーストが答えたことで有名になったという34の質問帖(Le questionnaire de Proust)へのフォロンの回答を添えています。
 フォロンの人柄や思考、社会への問題意識、私たち人類に対する信頼や希望が、作品とともに立ち上がってきます。彼の最初の妻であるコレット・ポルタルによる寄稿が収録されていて、二人のパリでの出会い、創作活動や日々の暮らし、家族についての追憶を通してフォロンの姿が描き出されています。
 これを機会にフォロンのこと、知っていただければと思います。

●レティシア書房ギャラリー案内
6/19(水)〜6/30(日)書籍「草花の便り」出版記念原画展 西山裕子
7/10(水)〜7/21(日)切り絵展 後藤郁子
7/24(水)〜8/4(日)「夏の本たち」croixille &レティシア 書房の古本市

⭐️入荷ご案内
Kai「Kaiのチャクラケアブック」(8800円)早乙女ぐりこ「速く、ぐりこ!もっと速く!」(1980円)
つげ義春「つげ義春が語る旅と隠遁」(2530円)
山本英子「キミは文学を知らない」(2200円)
たやさないvol.4「恥ずかしげもなく、野心を語る」(1100円)
子鹿&紫都香「キッチンドランカーの本」(660円)
夏森かぶと「本と抵抗」(660円)
加藤和彦「あの素晴らしい日々」(3300円)
Troublemakers (3600円)
若林理砂「謎の症状」(1980円)
宇田智子「すこし広くなった」(1980円)
おぼけん「新百姓宣言」(1100円)
仕事文脈vol.24「反戦と仕事」(1100円)
降矢聰+吉田夏生編「ウィメンズ・ムービー・ブレックファスト
(2530円)
「些末事研究vol.9-結婚とは何だろうか」(700円)
今日マチ子「きみのまち」(2200円)
秋峰善「夏葉社日記」(1650円)
「B面の歌を聴け」(990円)
「本と本屋とわたしの話vol.21」(300円)
辻山良雄「しぶとい10人の本屋」(2310円)
辺野古発「うみかじ8号」(フリーペーパー)
夕暮宇宙船「小さき者たちへ」(1100円)
「超個人的時間紀行」(1650円)
柏原萌&村田菜穂「存在している 書肆室編」(1430円)

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