見出し画像

レティシア書房店長日誌

瀬田なつき監督作品「違国日記」
 
 ヤマシタトモコ原作のコミックの映画化です。私は、このコミックを全く知りませんでしたが、かなり熱狂的な支持者がおられたみたいです。本作品で主役を演じる新垣結衣も、彼女の親友役で登場する夏帆も作品ファンだったとか。
 

映画「違国日記」

 朝は、中学校の卒業を前に突然の事故で両親を亡くします。葬儀の席では、親戚たちの心無い言葉にさらされます。朝は、自分が親戚の間をたらい廻しにされる不安からか、ふと「たらい」ってどんな漢字を書くのか?と口に出します。その時、母の妹で小説家の高城が朝に漢字を教え、「あなたを盥廻しにはさせない」と啖呵を切って、自分の家に連れて帰ります。実は高城は、朝の母とは仲が悪く長い間疎遠になっていたのですが、親戚の言い方に腹が立って衝動的に行動に移したのです。
 「あなたを愛せるかどうかはわからない。でも私は、決してあなたを踏みにじらない。」と、これから始まる二人の生活を前に、高城は宣言します。
とはいうものの、共同生活はお互い戸惑いの連続。その様子を、瀬田なつき監督は情緒過多になることもなく、すこし距離を置いたところから描いていきます。
 人見知りで、部屋の片付けが苦手。散らかし放題の高城のマンションのなかで起こる二人の会話が、丁寧に重ねられていきます。蛇足ながら、彼女の部屋に積み上げられた本は、国書刊行会や東京創元社から提供されているらしいので、興味のある方は凝視してください。
 やがて、朝は高校に進学し、新しい出会いを経験します。中学時代からの親友えみりからは、好きな女性がいて付き合っていると告白されたり、努力して学年トップの成績を勝ち取った千世が、海外留学の選考で女子であるだけで落選したことで学校へ抗議する姿を見たり、入部した軽音楽部で知り合ったギターの上手い三森と校内ライブで一緒に演奏したりと、すこしずつ視野を広げていきます。その姿を、高城は眩しい想いで見守るうちに自分自身も育っていきます。そして映画は後半、大きな展開を見せます。ここは、映画館でぜひ。とてもいいシーンが続きますよ。
 原作者は、人と人は絶対に分かり合えない、それでももがきながら関係を作っていくところに物語が生まれると雑誌のインタビューで話しています。
映画は、二人がゆっくりと、関係を深めてゆく様子をどこかストイックな視点を交えて、静かに描いていきます。見終わったあと、深い充実感に満たされました。

休業のお知らせ 7月1日(月)〜5日(金)までお休みいたします。

●レティシア書房ギャラリー案内
6/19(水)〜6/30(日)書籍「草花の便り」出版記念原画展 西山裕子
7/10(水)〜7/21(日)切り絵展「図鑑と地図」 後藤郁子作品展
7/24(水)〜8/4(日)「夏の本たち」croixille &レティシア 書房の古本市

⭐️入荷ご案内
Kai「Kaiのチャクラケアブック」(8800円)早乙女ぐりこ「速く、ぐりこ!もっと速く!」(1980円)
つげ義春「つげ義春が語る旅と隠遁」(2530円)
山本英子「キミは文学を知らない」(2200円)
たやさないvol.4「恥ずかしげもなく、野心を語る」(1100円)
子鹿&紫都香「キッチンドランカーの本」(660円)
夏森かぶと「本と抵抗」(660円)
加藤和彦「あの素晴らしい日々」(3300円)
Troublemakers (3600円)
若林理砂「謎の症状」(1980円)
宇田智子「すこし広くなった」(1980円)
おぼけん「新百姓宣言」(1100円)
仕事文脈vol.24「反戦と仕事」(1100円)
降矢聰+吉田夏生編「ウィメンズ・ムービー・ブレックファスト
(2530円)
「些末事研究vol.9-結婚とは何だろうか」(700円)
今日マチ子「きみのまち」(2200円)
秋峰善「夏葉社日記」(1650円)
「B面の歌を聴け」(990円)
「本と本屋とわたしの話vol.21」(300円)
辻山良雄「しぶとい10人の本屋」(2310円)
辺野古発「うみかじ8号」(フリーペーパー)
夕暮宇宙船「小さき者たちへ」(1100円)
「超個人的時間紀行」(1650円)
柏原萌&村田菜穂「存在している 書肆室編」(1430円)
「フォロンを追いかけてtouching FOLON Book1」(2200円)

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?