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レティシア書房店長日誌

『ちゃぶ台』編集室  ミシマ社の雑誌ができるまで

 ミシマ社によるレティシア書房ジャックは、約6年ぶり。壁は上から下まで、棚といい、ウィンドー(写真上)といい、元気いっぱいのミシマ社色で染められています。本日より「『ちゃぶ台』編集室  ミシマ社の雑誌ができるまで inレティシア書房」が始まりました。(12月8日まで)
 「自分たちの手で、自分たちの生活、自分たちの時代をつくる」を掲げてミシマ社が創刊した、生活者のための総合雑誌「ちゃぶ台」が来年10年になるのを記念して、雑誌が出来上がるまでの様子が展示されています。
 

2015年に「ちゃぶ台」が登場したとき、在京の、決して大きくない出版社が雑誌を出すの? 大丈夫かいな?と正直思いました。大手出版社の雑誌が魅力を失くして、売上げが下がっていった時代でした。第1号は、「移住仕事」がテーマ。もちろんすぐに読みました。あっ、これは面白い!紙面構成、執筆している人たちの顔ぶれ、テーマの決め方、どれもユニークで、今を、そして未来を見つめる姿勢が雑誌の隅々にまで行き渡っていました。
 「ちゃぶ台」は趣味系の雑誌でも、実用系の雑誌でもありません。いわゆる論壇誌でもなく、文芸雑誌でもありません。これまでの号のテーマを書いておきます。2号「食・社会」、3号「学びの未来・新しい地元」、4号「菌をもっと!・やわらかな経済」、5号「ぼくらの宗教・みんなのアナキズム」、6号「非常時代を明るく生きる」、7号「ふれる、もれる、すくわれる」、8号「『さびしい』がひっくり返る」、9号「書店、再び共有地」、10号「母語ボコボコ、土っ!」、11号「自分の中にボケを持て」、12号「捨てない、できるだけ」、そして最新号が「三十年後」です。6号から表紙には「生活者のための総合雑誌」という文言が印刷されるようになりました。
 

急速に変化してゆく社会、環境そして人間の心。押し寄せてくる膨大な情報の洪水の中で溺れそうになる毎日。そういう”私たちの時代”に、何をどう考えてゆくのかを手助けして、全く思ってもいなかった世界へと連れてゆく媒介者のような雑誌なのです。
 「Titleは、小さくて駅から離れているので家賃を抑えられますし、人件費も私と妻の給料だけです。そうすると、お金を稼ぐためにやりたくないことまでやる必要はなくなり、純粋に本を売ることだけを考えていればいいわけです。そうした『良心にもとる仕事はしない』ことが、平川さんのいう共有地の土台をつくるのだと思います。」これは、書店Title店主辻山良雄さんと、「小商いのすすめ」の著者平川克美さんとの対談、「小商いをはじめたら、共有地ができてしまった」(9号に掲載)で、辻山さんの発言です。小さな書店の使命が「良心にもとる仕事はしない」ことだということを教えてもらいました。
 雑誌って一回読んだら、ゴミ箱行きの運命なのですが、「ちゃぶ台」は、時々読み直すと、新しい考え方や気づかなかったことを教えてくれるのです。それを可能しているのは、この雑誌の執筆者たちの思想がしっかりしているからなのです。それこそ、良心にもとるような原稿は書いていないのです。私も書店員の端くれなので、本屋の新しい姿を模索した9号は何度も読み返しました。他の号では、面白そうな記事を拾い読みしてきました。11号の山極寿一さんへのインタビュー「山極先生、ゴリラは『ボケ』るんですか?」は、特に面白い記事でした。パラパラめくって読んでみて、納得がいったら、執筆者の別の本を読みたくなるはずです。
 そんなこんな魅力がいっぱい詰まった「ちゃぶ台」を、より多くの人に知ってもらおうと、なんと二日間かけてディスプレイしてくれたミシマ社スタッフの熱意が店内に満ちています。それだけでも味わいにぜひお越しください。
 「戦争がそもそも起きない生活のあり方に近づくための一助にでもなれば、という祈りも込めて本誌を編集している」9号制作中に起きたロシアによるウクライナ侵攻を前にして、三島邦弘編集長が書かれていました。実際侵攻直後に、小山哲氏・藤原辰史氏とともに「中学生から知りたいウクライナのこと」を書籍化して、「ちゃぶ台」10号につなげています。こういう人たちが編集している雑誌、こちらもずっと長くお付き合いしたいと願っています。

●レティシア書房ギャラリー案内
11/27(水)〜12/8(日)「ちゃぶ台 in レティシア書房」ミシマ社
12/11(水)〜12/22(日)「草木の色と水の彩」作品展

⭐️入荷ご案内
GAZETTE4「ひとり」(誠光社/特典付き)1980円
スズキナオ「家から5分の旅館に泊まる」(サイン入り)2090円
「京都町中中華倶楽部 壬生ダンジョン編」(825円)
「オフショア4号」(1980円)
青木真兵&柿内正午「二人のデカメロン」(1000円)
創刊号「なわなわ/自分の船をこぐ」(1320円)
オルタナ旧市街「Lost and Found」(900円)
小峰ひずみ「悪口論」(2640円)
SAUNTER MAGAZINE Vol.7 「山と森とトレイルと」

いさわゆうこ「デカフェにする?」(1980円)
「新百姓2」(3150円)
青木真兵・光嶋祐介。白石英樹「僕らの『アメリカ論』」(2200円)
「つるとはなミニ?」(2178円)
「ちゃぶ台13号」(1980円)
坂口恭平「自己否定をやめるための100日間ドリル」(1760円)
「トウキョウ下町SF」(1760円)
モノ・ホーミー「線画集2『植物の部屋』(770円)

モノ・ホーミー「2464Oracle Card」(3300円)
古賀及子「気づいたこと、気づかないままのこと」(1760円)
いしいしんじ「皿をまわす」(1650円)
黒野大基「E is for Elephant」(1650円)
ミシマショウジ「茸の耳、鯨の耳」(1980円)
comic_keema「教養としてのビュッフェ」(1100円)
太田靖久「『犬の看板』から学ぶいぬのしぐさ25選」(660円)
落合加依子・佐藤友理編「ワンルームワンダーランド」(2200円)
秦直也「いっぽうそのころ」(1870円)
折小野和弘「十七回目の世界」(1870円)

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