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レティシア書房店長日誌

エドアルド・デ・アンジェリス監督「潜水艦コマンダンテ」
 
 ミリタリー映画のオタクというわけではないのですが、潜水艦の映画だけは欠かさず観ます。そのほとんどに駄作がないのも大きいかも。これもそんな一本と思って劇場に足を運びましたが、いい意味で期待をはぐらかされました。潜水艦映画は、ヒーローが活躍して窮地を脱する物語が多く、いかに緻密にサスペンスとアクションを積み重ねるかが勝負なのですが、本作では決断を迫られる艦長は登場しますが、スーパーヒーローではありません。さらに、潜水艦といえば魚雷戦なのに、それどころか水上の戦艦との華々しい戦いもありません。
 

 イタリアの潜水艦コマンダンテ・カッペリーニ号が地中海への航海で、船籍不明の貨物船に遭遇します。相手方は艦砲を装備し、灯火管制を実施していたので、潜水艦の艦長は撃沈を指示します。が、その貨物船が中立国のベルギー船籍だっだことが判明します。艦長は悩んだ末に、船員を助けることを選択、近くの島まで送り届けようとします。しかし、潜水艦には、余分な人員を収用するスペースはないので、一部の船員は艦上に放置せざるを得ません。英国海軍がうじゃうじゃいる海域で、この潜水艦は、艦の最大の長所たる海に潜って逃げる方法が取れなくなってしまいます。そして狭い艦内では、イタリア人をファシスト呼ばわりするベルギー人との対立が危険な状況になってきます。その重苦しい雰囲気が見事に映像化されています。このやばい状況を回避するために艦長が取った行動が秀逸でした。
 

対立する人種

 ベルギー船の艦長に母国の国民的食べ物は、問うと、フライドポテトだという答え。そこで、潜水艦の料理人が艦長の協力のもとにフライドポテトを作ってゆくシーンが丁寧に描かれていきます。少ない材料で出来上がったフライドポテトを美味しそうに食べる乗組員。歌の上手い料理人がその自慢の声を披露すると、もうお祭り気分。戦争より、音楽と料理だ!という感じがよく伝わってくるシーンでした。さらにエンドクレジットが面白い。軍隊風の行進曲が聴こえてくる一方で、おそらくあの料理人らしき人物が、延々とイタリア料理の名前を言い続けるのです。戦争より、豊かなイタリア料理への賛歌ということでしょうか。
 華々しい戦闘シーンが無くても、狭い艦内で、汗と油まみれの男たちの苦悩と緊張をじっくりと描いた映画でした。第二次世界大戦の実話がベースになっています。そして、フライドポテトはアメリカのソウルフードだと思っていたのですが、ベルギーだったこと、あれだけ豊かな食材の揃ったイタリア人が作っていなかったことなど、食文化の一端を知ることのできる映画でもありました。

●レティシア書房ギャラリー案内
7/10(水)〜7/21(日)切り絵展「図鑑と地図」 後藤郁子作品展
7/24(水)〜8/4(日)「夏の本たち」croixille &レティシア 書房の古本市
8/21(水)〜9/1(日) 「わたしの好きな色』やまなかさおり絵本展

⭐️入荷ご案内
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子鹿&紫都香「キッチンドランカーの本2」(660円)
夏森かぶと「本と抵抗」(660円)
加藤和彦「あの素晴らしい日々」(3300円)
若林理砂「謎の症状」(1980円)
宇田智子「すこし広くなった」(1980円)
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今日マチ子「きみのまち」(2200円)
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「フォロンを追いかけてtouching FOLON Book1」(2200円)
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