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レティシア書房店長日誌

ウィル・シャープ監督「ルイス・ウェイン生涯愛した妻とネコ」

 ルイス・ウェインは、昨今人気の猫のイラストレータ、絵本作家の本家本元みたいな人物です。ルイスは1937年、ロンドンに生まれました。各種雑誌の挿絵作家として彼の人生は始まります。その後、彼の妹の家庭教師だったエミリー・リチャードソンと結婚します。当時、彼女はピーターという猫を飼っていましたが、結婚して数年後、彼女はガンに侵され亡くなります。
 病気の妻の気分を和らげようと、ピーターを擬人化したような猫の絵をたくさん描きました。彼女の死後、その絵が新聞に掲載されて爆発的な人気を得ます。ここから、猫を描く画家としての人生がスタートし、生涯に数百にものぼる作品を残しました。のちに、彼はピーターのことを「私の画家としての創造の源であり、後の仕事を決定づけた。」と語っています。因みに夏目漱石の「吾輩は猫である」に登場する絵葉書の作者だと言われています。

 劇場で見逃していたのですが、映像ソフトでつい先日観ることができました。映画は、彼の生きた19世紀末の時代風俗を見事に再現し、画家の人生を描いていきます。ルイスを演じたのは、ベネディクト・カンパーバッチ。彼の出演作品を見るたびに、あっけにとられる演技をする俳優なので、単なる画家の妻との愛情物語、あるいはサクセスストーリーではないとは覚悟していました。
 猫の画家として成功するも、人生後半、精神的不安から奇行が目立つようになってきて、言動もおかしくなってきます。小さい時から、何度も溺れる夢を見てきたルイスは、NYから戻ってくる船の中で、嵐に出会い溺れ死んでゆく幻覚に襲われるあたりの精神が崩壊してゆく様は、カンパーバッチならでは。
 けれど、ラスト、愛した妻が残したあるものに導かれるようにして、美しい世界を見つけます。観ている私たちも救われたようでホッとするような素敵なエンディングでした。
 ヒグチユウコ、町田尚子等の猫を主役にした作品を描く作家たちの元祖みたいな画家だと思いますので、機会があればぜひご覧ください。


レティシア書房ギャラリー案内
2/28(水)〜3/10(日) 水口日和個展(植物画)
3/13(水)〜3/24(日)北岡広子銅版画展
3/27(水)~4/7(日)tataguti作品展「手描友禅と微生物」

⭐️入荷ご案内モノ・ホーミー「貝がら千話7」(2100円)
平川克美「ひとが詩人になるとき」(2090円)
石川美子「山と言葉のあいだ」(2860円)
最相葉月「母の最終講義」(1980円)
古賀及子「おくれ毛で風を切れ」(1980円)
文雲てん「Lamplight poem」(1800円)
「雑居雑感vol1~3」(各1000円)
「NEKKO issue3働く」(1200円)
ジョンとポール「いいなアメリカ」(1430円)
坂巻弓華「寓話集」(2420円)
「コトノネvol49/職場はもっと自由になれる」(1100円)
「410視点の見本帳」創刊号(2500円)
「古本屋台2」(サイン入り/1650円)
RITA MAGAZINE「テクノロジーに利他はあるのか?」(2640円)
福島聡「明日、ぼくは店の棚からヘイト本を外せるだろうか」(3300円)
飯沢耕太郎「トリロジー」(2420円)
北田博充編「本屋のミライとカタチ」(1870円)
友田とん「パリのガイドブックで東京の町を闊歩する3 先人は遅れてくる」(著者サイン入り!)


     


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