雑記・不条理作品

久々の更新です。

今回から「今月のオススメ」コーナーのピックアップ始めました。
それに合わせてその他は「現在の文庫」「過去の文庫」に分けました。

今月のテーマは「不条理」。

「不条理」とは以下Wikipedia引用

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/不条理

不条理(ふじょうり)は、不合理であること、あるいは常識に反していることを指す。英語の absurd、フランス語の absurde、ドイツ語の Absurdität の訳。これらはいずれもラテン語の absurdus を語源とする。このラテン語の意味は「不協和な」(cf. Cicero, De Oratore, III, 41)。

不条理とは何よりもまず高度の滑稽である。なんらかのものあるいは人とうまく調和しないことを意味する。不条理とは通常の予測を外れた行動または思想であり、不条理な推論とは非論理的な推論である。


要は原因不明で無意味なアクシデントに直面したら登場人物や世界がどうなるかというのが不条理の世界…という風に自分は解釈している。
SFやファンタジーじみたものもあればひたすら現実的な無秩序もあり、ホラーやパニックのように劇的なものもあればひたすら何も起こらないものもある。不条理自体がテーマなのでハッピーエンドやスッキリしたカタルシスのあるようなものは少ないし、オチのない尻切れトンボも少なくない。実験作や問題作も多いので読み応えのあるものが多いと思う。

ポピュラーなところでカフカやカミュ。もう少しコアなところでべケットやイヨネスコ。
日本なら安部公房あたりが有名だろう。

是非ともカフカを文庫に入れときたかったが、あいにくあまりもってないので青空文庫のリンクを貼っておく。
https://www.aozora.gr.jp/index_pages/person1235.html

今年のコロナショックでカミュの「ペスト」を読んだ人もいるかも知れない。代わりに開高健の「パニック」を入れておいた。

安部公房さんは一時かなり読んでいたので多数に持っている。教科書で読んだ時はかなりインパクトを受けた。「壁」から「砂の女」あたりを読んだ際には散々振り回された挙句そんな結末ってありかと未知の体験を味わった。
大学時代に勅使河原宏監督の映画化作品も見たが、なかなかいい。特に仲代達矢さんの怪しさや武満徹さんのミステリアスなBGMが凝った「他人の顔」はお気に入りだ。

同じようなテイストを味わったので小山田浩子さんも追加。「工場」の何とも言えない息苦しさや不気味さがカフカ的と定評があるが、現実のような幻想のような感じは一度読んだら忘れられないものがある。
寡作ゆえ今回納めた「工場」「穴」「庭」が全著書だ。さらに「庭」はまさに今週文庫版が出たらしい。続刊を期待する。

桐野夏生作品は登場人物全てが救いようがない見苦しさを抱えていて社会は無慈悲でひたすらみんなで仲良く堕ちていくような作品が多い。高校時代にちょうど出た「I'm sorry mama」「リアルワールド」を初めて読んだ際にトラウマになり以後読んでいなかったが、岩波書房のアカウントがあまりにも最新作の「日没」を勧めて来るので久々に読んで見たら見事にハマってしまった。閉塞感や極限状態の人間の描写がうますぎる。それこそ不条理にブチこまれたら最後なるがままになっていく過程とその結末に想像力の豊かさを感じた。
「OUT」「グロテスク」など代表作が社会派として取り上げられているが、不条理色が強い「日没」を中心に「残虐記」や「東京島」を入れさせてもらった。そもそも社会派でないフィクションなんてあるんだろうか?

村田沙耶香作品はクレイジーでエグいと言われているが、先の濃ゆいメンバーと並べるとどっこいどっこいと言ったところ。むしろ注目すべきは性や死生観の生々しい感覚とその冷徹な表現だろう。
「コンビニ人間」はコンビニでしか働けない労働者の悲哀の話かと思ったらとんでもない。むしろ逆だった。健康的でまともな「人間らしい」生活には馴染めなくてあらゆる「人間らしさ」にツバを吐きまくった作品が多い。スタート地点からどこかズレた人物がありとあらゆるアクシデントにブチ当たりつつ、なるべくして獣道を突き進んでいく様は独特のものがある。

小説ばかりで固めたかったが、活字が苦手という人も多いので漫画も追加。

吾妻ひでおさんは不条理ギャグ漫画の先駆者と言われている。一番有名な「失踪日記」を入れておいた。このような波瀾万丈な人生を送りながらも最後まで家族やファンに愛されて天寿を全うしているのだから羨ましい気もする。

不条理ギャグといえば唐澤なをきや吉田戦車が有名だが、コレもあまり持っていない。唐澤なをきはまた新年の年賀状に版画をつくるのだろうか?

しりあがり寿さんは中でも外せないだろう。
冗談なのか真面目なのか真剣に破壊に徹しているのかそのいずれともとれるナンセンスさとシリアスさが持ち味だ。弥次喜多シリーズのイメージが強いが、終末観漂う作品は傑作揃い。勢い任せながらオチが付いているのも読みやすい。
個人的には「徘徊老人ドン・キホーテ」がお気に入りだ。
「テリー・ギリアムのドン・キホーテ」を先日見て監督の真骨頂を感じたが、ナンセンスに定評のある作家にドン・キホーテの狂気を描かせたらとにかく相性抜群なのだ。
「ジャカランダ」が不条理とその中の救いを描いていて印象的かも知れない。3.11の震災の時にピックアップされていたし、氏自身も震災に対する取り組みが積極的だった。

最後につげ義春さん。全てが唯一無二の意欲作でガロや実験漫画の代名詞的存在だ。
それにしても不条理ギャグ漫画を描く漫画家は割と作家自身が漫画になりそうな人が多いのはなぜなのか?吾妻ひでおさんもそうだが、赤塚不二夫さんも。

ギャグにせよシリアスにせよ自分の中で不条理と思しき作品を選んでみたつもりだ。
オススメという形を取ったが、正直自分自身が疎いのでこれこそ名作という不条理作品のオススメがあれば教えて欲しい。

まとまって何かを書くほどのことがなかったので新しく文庫を納めたついでに雑記として書かせてもらった。

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