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音色を通して戦争を伝える映画「おかあさんの被曝ピアノ」感想

「被曝ピアノとは」
原爆投下時1945年8月6日広島、8月9日長崎で爆心地より約3キロ以内で、原爆の爆風、放射能の被害を受けたピアノのこと


先日、長岡リリックホールにて、映画「おかあさんの被曝ピアノ」上映と演奏会を観てきました。

この映画を知るきっかけは、母親がチラシを見つけてきて、「行きたい、チケット買って」と誘ってきたので、一緒に足を運んできました。
70歳後半のウチの母親はどちらかというと(いやバリバリの)リベラルというか平和や反戦などに強い想いがあり、権力側を嫌う傾向。
私の子育てをしながら市民活動も積極的に参加していたし、思想がはっきりしている人です。今も新聞が情報源で2紙3紙読み、切り抜きしたりしている(その新聞が偏ってるということも気づいているのか否か・・)。
まあ私も少なからず影響受けているのですが。

■上映の前に演奏会からスタート

ロビーに到着するとすでに行列が。客席はコロナ対策で一つ飛ばし、それでも150人くらいのお客さんで埋まっている。客層は母親くらいか、それよりちょっと下か、親子で観に来てる方も、女性が圧倒的に多かった印象です(エアコンが効きすぎで寒いとあちらこちらで声が)。

まずは司会の方が登壇して(映画にも登場する方)演奏会からスタート。
演者は一般の方から5名の演奏がありました。
全員女性で、親子で連弾、新潟のアイドルグループNGTのメンバー(古館葵さん)、以前にも被曝ピアノで演奏したことがある幼稚園教諭を目指す女子大生など。
クラシックの代表曲や、J-POP、詩の朗読と、バラエティなピアノ演奏、少し乾いた生音がホールに響き、音色を奏でていました。
戦中戦後を生き抜いたピアノが修復され、ここ長岡に運ばれてきて今生きる演者が奏でる。戦争への想いも合わせて歴史を繋いでメロディを奏でる。
派手な演出があるわけでなく、一台のアップライトピアノ照らされるステージ、どこかに哀しさ、寂しさが残る静と暗を感じる演奏会でした。

「被曝ピアノ」に関して予備知識は、以前長岡のコミュニティFMで後藤監督(長岡出身)のトークをたまたま聴いていて頭の隅に残っていました(というか思い出した)。
TVのドキュメンタリー作品で矢川さんに出会い、被曝ピアノの存在をしり、映画化にしたいと強く思った、とのこと。

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■本編あらすじ

広島の原爆地で、被曝したピアノを修復して自ら4トントラックを運転して全国にピアノの音色を届ける活動をしている調律師・矢川光則さん(ご自身も被曝2世)の活動を追ったドキュメンタリータッチな映画(オリジナル物語)。
監督は長岡出身の後藤利弘さん、主演は佐野史郎とAKB48武藤十夢。

東京で生まれた江口菜々子(武藤)は、大学で幼児教育を学びながらも、将来に漠然とした不安を感じていた。その中、母・久美子(森口瑤子)が被曝ピアノを寄贈していたことを新聞記事から知る。
そして、矢川さんに出会い、ピアノ演奏会の活動に触れ、
おばあちゃんの身に起きたことや幼い頃の思い出、被曝2世となる母の遠ざけていた想い、伝えられなかった想いや葛藤を知り、広島の出来事を回想する。それは自身の、家族のルーツを探る旅だった、そしてそこから見えてきたことは・・・。

この予告編だけですと、結構重めの内容・構成のように見えてしまいますが(まあそうなのですが)、客席から笑いが起きたシーンもありましたし、役者の感情(日常の淡々とした気持ち、知ろうとする気持ち、避ける気持ち、見守る気持ち、それでも明るく振舞う気持ち)どの気持ちも間違いでは無く、うまく表現されていました。
母親の抱えた被曝2世という「重り」、2011年の福島でもそうですし、今回のコロナウイルスでもそうですし、被害者であるのに、なお2次被害を生んでしまうものなのがどうもこうも悲しいですね。


■感想まとめ

戦争映画と一括りにいっても、軍部や零戦の物語から市井の日々の物語まで数多あります、どれも真実でありどれもフィクションに見えてしまいもします。
私も戦争体験者ではありませんし、悲惨だったことを聞き伝えていくことなのか、忘れないことなのか、今後も戦争に巻き込まれないでいくための行動は何なのか、考えさせられます。
恒久平和のためには、今後も伝えて行かなくてはいけないでしょう(長岡も空襲地ですし)。
先の戦争のようなことはもう起きないとは思いますが(そこは楽観的なのですが)、右でも左でも不安を煽るような論調にはならずに、対立にはならずに。
戦争反対!て叫ぶことが、頑なな主張することが必要なのか(ウチの母親世代はそんな感じ)、感情論をちょっと引っ込めてロジックが必要なのか、映像や文書だけで伝えていくこれからは、今後の世代はどうしていくべきでしょうか。
8月になると戦争テーマの題材を多く目にします、これからも平和への種まきを。

矢川さん、後藤監督、制作に関わるスタッフの方々、
長岡に呼んでくれる企画をしてくれる、きっと手弁当のボランティアの方々も頭が下がります。

今後も全国上映回るようですので気になった方はぜひチェックしてみてください。
ホームページ↓
https://hibakupiano.com

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