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『意識はいつ生まれるのか 脳の謎に挑む統合情報理論』 ジュリオ・トノーニ, マルチェッロ・マッスィミーニ

『意識はいつ生まれるのか 脳の謎に挑む統合情報理論』ジュリオ・トノーニ,  マルチェッロ・マッスィミーニ著

イタリア出身神経科学者らによる一般向けの統合情報理論。

量子の世界だと波だったものが観測された瞬間から粒子化し物質となって目の前に現れる。
意識もその感覚に近いのかもしれない。

臨床では多くのMCS(最小意識状態)のバリエーションがある。

ジュリオ・トノーニとマルチェッロ・マッスィミーニらは生理学立場から意識の単位をΦとし、ニューロンの電気活動量ではなく様相に着眼した。

2つの公理とそこから命題を提唱し、これら公理と命題から情報の統合力によって意識の概念を定義づけようとしている。

統合情報理論の命題①
ある身体システムは、情報を統合する能力があれば、意識がある。

第一公理
意識の経験は、豊富な情報量に支えられている。つまり、ある意識の経験というのは、無数の他の可能性を、独特の方法で排除したうえで、成り立っている。いいかえれば、意識は、無数の可能性のレパートリーに支えられている

第二公理
意識の経験は、統合されたものである。意識のどの状態も、単一のものとして感じられる、ということだ。ゆえに、意識の基盤も、統合された単一のものでなければならない。

統合情報理論の命題②
意識を生みだす基盤は、おびただしい数の異なる状態を区別できる、統合された存在である。つまり、ある身体システムが情報を統合できるなら、そのシステムには意識がある。

脳死判定の点数にはかなり細かい規定があるが、このあたりも今後変化していくかもしれない。

例えば、ALSやギラン・バレー症候群のように筋肉が動かずとも意識はある。他人の意図が筋肉に電気信号で伝わる前にその電気信号のキャッチは可能である。

エードリアン・オーウェン率いるケンブリッジ大学の神経科学者のチームの実験によって立証されている。大脳を損傷した被験者のfMRIの解析実験、ニューロン活動結果が2006年9月、『サイエンス』誌に掲載された。

神経学会報告でも2000年代になってようやく脳波の活動電位測定環境が揃い始め、ひと昔前とは比較にならないほど解明が進んでいるのが見て取れる。

「ペソアやタブッキは「ありえたかもしれないがそうならなかったものへの郷愁」を語る。「ありえたかもしれないがそうならなかったもの」を大切に感じる文学的認識は、「多様な状態の選択肢のレパートリーなくして意識なし」という意識の発生要件に、じつは水面下で規定されているのだろうか。」(訳者、花本知子氏のあとがき)

人間は本能的にこうしたものを知っているのかもしれない──神の領域。──一昔前はそうだったわけだが、量子力学の発展とともにさまざまなサイエンス分野における事象が解明されている。

神経生理学者ジョン・エックルス(1963年、ノーベル生理学医学賞受賞)がそうであったように、基礎生理では結局気持ち(感情)的には二元論に陥ってしまうかもしれないとしても、近い将来に意識の概念が科学的に明確に確立するのだろう。

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