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読んだ本の感想

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卍丸的な読書感想文集
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#サルトル

『非-知』と現代社会の危機

はじめにジョルジョ・バタイユが提唱する「非-知」の概念は、合理性や理性主義に対するラディ…

卍丸の本棚
2か月前
12

絶対的空間の欠如と回復──非暴力の企て

妻と週末に庭の柿をいくつか収穫した。キッチンに無造作に置かれた柿と同化するかのような西日…

卍丸の本棚
7か月前
9

『恋する虜』 ジャン・ジュネ

 デモクラシーとは、他民族排斥に立脚し、自民族中心的な平等を謳うものかもしれない。 宗教…

卍丸の本棚
8か月前
18

カフカとカミュ、そしてゼーバルト

『カフカ短編集』『審判』『城』を久しぶりに再読している。 カミュが『フランツ・カフカの作…

16

須賀敦子さんのイタリア文学論を読む  第2回 現代詩論編

はじめに前回の中世詩論に続き、今回は須賀敦子さんのイタリア文学論から現代詩論について。 …

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『無垢の博物館』 オルハン・パムク

はじめに2008年のノーベル文学賞トルコ人作家、オルハン・パムク。(パムクのノーベル賞受賞ス…

20

『箱男』 安部公房

はじめにひとり安部公房祭 第五回『箱男 』 1973年作 何度目かの再読になる。 脚フェチの箱男はこの物語の中で箱男とされていることを知っているメタフィクション系小説。 安部公房自身が講演でこのようなことを語っていたと思う。 時代背景時代背景的には三島由紀夫が自決してから3年後。 日本では学生運動がひとつの社会風潮化しはじめて、高度経済成長期終盤となりオイルショックがあったりと、世界経済的にも大きな混乱をきたしたり、ベトナム戦争の最中の時期だろう。 箱を脱ぎ捨てたいけ

『他人の顔』 安部公房

はじめに『砂の女』の次の長編で、「失踪三部作」の2作目となる。 三島由紀夫は本作について、…

10

『壁』安部公房

ひとり安部公房祭 第ニ回『壁 』 はじめに本書は三部構成で《壁》モチーフにしたそれぞれ独…

10

『砂の女』 安部公房

ひとり安部公房祭 第一回『砂の女 』 再読してみた。 渡航先で現在隔離中のため砂的な自由と…

9

僕にとってのエルノー文学の魅力

はじめに7作品を読んでみて、今感じているエルノー文学の魅力 ①欲望の蕩尽性 ②個の全体的な…

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幻影の書

著者 ポールオースター 訳者 柴田元幸 出版 新潮文庫 ポール・オースターは本書で読むのが…

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歴史を家族で語り継ぐこと、文学のなせる事─野火を読んで思ったこと

はじめに2022年の終戦記念日。 特別な思いが僕に僅かながら生まれた日であったかもしれない。 …

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ねじの回転の独りよがりな解釈

はじめに サルトルは『存在と無』で、「二重の相互的受肉」の敢行が性的欲望の対象の所有へと転換あるいはすり替えられることを次のように言っている。 性的欲望は人間の逃れられない欲望のひとつであり、種の保存のためにも重要な欲望でもある。(嗜好性は人それぞれであるとしても) あらゆる欲望はエロティシズムに収束していくようにも思える。そして、欲望は、時として、社会的格差によるひずみによって、はじき飛ばされもする。 現代におけるエロティシズムの格差と文明批判についてはフランス人作家