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マイ・ディア 親愛なる物語 氷室冴子

先日の少年少女古典文学館の記事ですこし氷室冴子さんに触れましたが、今回はその氷室冴子さんが家庭小説・少女小説のガイドブックとして書かれた本について書いて見たいと思います。
ちなみに氷室冴子さんのことはコバルト文庫やティーンズハートといった、少女むけライトノベルのことを書いてから書こうと思っていました。
ですが、19世紀の挿絵の記事でいただいた、ミランヨンデラさんのコメントにあった、イラストレーターのきたのじゅんこさんつながりでこの本のことを思い出しました。
表紙、挿絵がきたのじゅんこさん。うっとりしちゃいますね〜。
この本は家庭小説・少女小説を愛する氷室さんが、角川書店に家庭小説のレーベル創刊を働きかけて実現した時に、ガイドブックとしてお書きになったものです。
各作品の魅力、また家庭小説・少女小説ならではの楽しみが紹介されているのですが、氷室さんがどれだけこうした作品を愛してらっしゃるかがひしひしと伝わってきます。
服の仕立てやドレスのリメイク、お茶会のためのお料理やピクニックのお弁当。こうしたもののディテールがきっちり描かれているのが魅力だという氷室さんの言には大賛成です!
子供の頃、繻子のドレスに天鵞絨のリボン、膨らんだ袖や腰に結ばれたリボンベルトなんて描写にうっとりしたものです。
この本の中で特に印象的だったのが、『リンバロストの乙女』で主人公のエルノラが母に持たせてもらったお弁当について書かれた箇所を引用していたところです。
残念ながら手元にない本なので引用できないのですが、覚えている限りではこんがり焼けた雛鳩やスパイスを使ったケーキ、砂糖漬けの果物などが入ったお弁当だったと思います。それがもう本当に美味しそうに描かれてるんですよ。ここだけでも読んでほしいぐらい!
『若草物語』や『少女パレアナ』、『あしながおじさん』など、この本を読む前に読んでいた本もありましたが、『昔気質の一少女』や『八人のいとこ』、上述の『リンバロストの乙女』、その前作の『そばかすの少年』なんかはこの本で知りました。吉屋信子さんを読むきっかけもここからでした。
ちなみに角川の家庭小説・少女小説レーベルは、マイ・ディア・ストーリーズという名前で、赤のギンガムチェックの装丁というこれまた女の子心をくすぐるもので。
揃えたかったんですが、このシリーズに収録されている作品のいくつかは、すでに他の出版社から出ているものを買っていたり、母が後生大事に嫁入りにまで持ってきていた少女向けの文学全集に収録されていたりしたので、揃えるという野望は果たせず……。

ファンシーグッズ花ざかりだった私の小学生時代。こんな可愛い装丁の本そりゃ欲しくなります。
何冊かは買ってもらったんですが、実家でも見当たらないのでもしかするともう処分されちゃったかな?残念……。
この本に紹介されている作品を追いかけて読みましたが、読んでから氷室作品を再読すると、氷室冴子さんがこうした作品からどんなふうに影響を受けたのかもよくわかってより楽しかったです。
『クララ白書』のドーナツ作りの楽しさや出来上がったドーナツの描写なんかはまさにって感じで。
ちなみに本を紹介するエッセイって初めて読んだのこれじゃないかと思います。
本に関するエッセイはたくさん出ていますが、家庭小説・少女小説に的を絞ったものってあまり見かけないし、氷室さんの愛に溢れた紹介が本当に素敵なので、ガイドとしては決定版じゃないかな?なんて思います。
もし古書店なんかで見かけられたら、ぜひ手に取って頂きたい1冊です!

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