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氷室冴子作品 その2

まだまだ続きます、氷室冴子作品について。
2で終われるかな?

前回コバルトの記事で挙げた作品ですが、1番好きかもしれないです。
『シンデレラ迷宮』、『シンデレラ・ミステリー』。

ある日目覚めると見知らぬ館にいた利根。そこがどこかもわからないし、自分のことも名前以外は忘れてしまっていることに気づきます。不思議な世界をさまよう利根。訪れる館で出会うのは物語の中の登場人物たちです。ところが彼女達は私達が知っているのとは違うお話、彼女達の悲しみ、孤独を語ります。
なぜ利根はこの館に来てしまったのでしょう?利根は元居た世界に帰ることはできるのでしょうか?
といったようなお話です。それほどネタバレというわけでもないので書いてしまいますが、『シンデレラ迷宮』の方は失恋、『シンデレラ・ミステリー』では友情がテーマになっています。
よく知られた物語の登場人物を使って別の物語を作り上げるってとっても難しそうなんですが、このお話はそこがすごく良くできているんです。今手元に無い状態で書いているので間違っていたらすみません💦
例えば本当は娘を愛していた白雪姫の母親や、幸せではあったかもしれないけれど、愛を知らないままの眠り姫、心中しなかったジュリエットや辛くも助かったカルメン、そして赤毛の踊り子オディールやロチェスターを殺してしまったジェイン・エア。
それぞれに愛を求めていたり、愛するあまりの過ちを犯していたりと抱えているものがあるのですが、それが利根とリンクしていきなぜ利根がこの世界に来たかが明らかになっていきます。
この中だとオディールが無茶苦茶かっこいい。孤独で愛することなんて知らないのに男を惑わせる魅惑の踊りを踊り続けるんです。オデットに執着する父のために、オデットが父の元から去らないようにオデットが愛する男を誘惑し続ける。歪だとわかっていながら、そこから逃れられない自分の為にオデットの男を誘惑し続ける、オディールの悟ったような諦めが切ないんです。
ファンタジーっぽいっ少女小説の皮を被っていますが、描かれている女性の心理は一般文芸で描かれてもおかしくないような生々しさがあります。大人が読んでも面白いと思います。
一度は現実の世界に戻る利根ですが、友人もでき幸せに暮らしていたはずがまた物語の世界に行ってしまうというのが『シンデレラ・ミステリー』の方ですが、こちらも濃いです。現実が辛くなった時に逃げ込むための空想の世界。イマジナリー・フレンドのようなその世界の住人達。少女が大人になるために、その世界といずれ別れなければならない切なさやほろ苦さが詰まっていて、大好きな作品です。
好きなだけに長くなってしまった💦

本当にキリがなくなりそうなので、あとはコメディに全振りしている笑えるものをあっさり目に(できるかな……)紹介しようと思います。

まずはこちら

才色兼備の優等生、数子ですが、それは憧れの人、譲叔父さんのお嫁さんになる為で、実は口も性格もあまりよろしくないのです。外面完璧の彼女でしたが、譲叔父さんの結婚にショックを受けて、海外へ行った教授の留守宅を預かって1人傷心を癒すことに。ところが同じ学校の漫画家志望の家弓、食に異常なこだわりを持つ浪人生の勉となぜか一緒に住むことに。アクの強い3人、当然平穏無事とはいかず……。
といった感じのお話です。
まあ数子ちゃんがいい性格してまして。なまじ頭がいいもんだから余計にタチが悪いというか。どのエピソードも面白いんですが、演劇部の助っ人を頼まれる話がお気に入りです。
色々と陰険なことを考える数子ですが、頭がいいのがかえって災いしてというかなんというか、結局どの悪だくみも失敗するという憎めないキャラなんです。
ノリはかなり昭和的なので、今読むと古いんですが、テンポが良くて気持ちよく読めるコメディです。

そしてコバルト好きなら絶対楽しめるのが、『少女小説家は死なない!』。

ここ最近売り上げの振るわない少女小説雑誌。テコ入れをすべく、作家達に巻頭新作を競わせることに。余計な描写の多いファンタジー小説家火村彩子(ひむらさいこ)先生とそのライバル達が巻き起こす大騒動を描くこの作品。ハチャメチャ展開もいいとこで、素直に笑えます。
そして登場するライバル作家が、これはあの人?これはぜったいこの人だな、とコバルト執筆陣を思い浮かべながら読めるという楽しみも。富士奈見子は美少年が登場する耽美系小説作家、津川久緒は吉屋信子的な清純小説で、女子校や寄宿舎が舞台の微百合系。関根由子はジュニア・ハーレクイン小説で、都エリはジュブナイルポルノ、といったライバル達。前半2人はもう絶対あのお二方ですよね(笑)。コバルトにハマっていた人ならきっと楽しめます!
それにしても一部とはいえ全く作風の違う作品(全作家の作品の一部がちゃんと書かれています)を書いてしまう氷室さんがすごい!

最後は、ど田舎の名家の跡取りのなすり付け合いを描いたドタバタコメディ、『蕨ヶ丘物語』。

4姉妹の上2人は大恋愛のすえめでたく跡取りから外れ、さあ下の2人はどうなることやらといったお話なんですが、何と言ってもこの家の最高権力者、小梅おばあちゃんがいいキャラすぎて。映画『舞踏会の手帖』をやる!と言って昔自分に言い寄ってきた男達を訪ねるお話が最高に面白いです。これも昭和なノリなので、今の若い方にはもしかするとつまらないかもしれませんが……。
でも田舎の閉鎖的な感じや前時代的なところって、大抵暗くてマイナスなイメージで描かれるんですが、この作品ではそれすら笑いにしてしまうパワフルさがあって、そこも楽しいかなと、同じくど田舎出身者としては思います。

どれも本当に悪い人っていうのは出てこなくて、気楽にゲラゲラ笑いながら読めるものばかりで、楽しいんです。何より氷室さんの文章のテンポの良さがほんとに心地いいです。
ぜひ笑いたい時には読んでみてほしいです!

本当にキリが無くなりそうなのでこの辺で終わろうと思いますが、ボーイ・ガールシリーズ書くの忘れた……。『北里マドンナ』、槇修子ちゃん大好きなのに。多恵子ちゃんちょっと苦手。
番外編で原作を担当された藤田和子さんの漫画、『ライジング!』とかも書けばよかったなあ。
などと考えていると本当にキリがなくなってしまう💦
それぐらい名作揃いの氷室冴子作品。
最近は復刊されたものもあって嬉しい限りです。
とりあえず、『シンデレラ迷宮』を読み直いたくなりました(笑)。

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