見出し画像

覚せい剤は、「やめられない」も「やめられる」も正しくない

覚せい剤は、「やめられない」も「やめられる」も正しくない。

「覚せい剤は一度使ったらやめられない」と言う人がいるが、実際にはそんなことはない。精神科で仕事をしていると、「興味本位で何回か使用したことがある」という人は想像以上に多い。とはいえ、人生を台なしにしてしまうくらいにハマってしまう人がいるのも事実だ。

では、そういう人たちについて「やめられない」と言うとき、どういう状況をさすのか。 

たとえば、一度は覚せい剤を断ったものの、10年後に再使用した場合。

「覚せい剤はやっぱりやめられない」

と言われるかもしれない。

でも、ちょっと待って。
これをタバコに置き換えてみよう。

10年禁煙した人をさして、「タバコはやっぱりやめられない」なんて言うだろうか。

「10年やめてたけど、また吸い始めた」

と、こんなふうに言うのではないだろうか。

逆に、覚せい剤を「やめられる」とは、どういう状況をさすのか。

一生にわたり、再使用しないことを「やめられる」と言うのか。もしそうなら、当事者が死んだときにしか「やめられた」という評価はできないはずだ。だから、いまやめている人を代表例にあげて「やめられます!」と主張するのは誠実ではない。

では、どう表現するのが正確か。

適切な治療と援助を受けることで、「やめ続けることができる」。

今日一日だけは、使わずに終える。
これを一日ずつ積み上げる。
こうして「やめ続ける」ことはできるし、「また使っちゃった」としても、再び「やめ続ける」に取り組むことができる。

覚せい剤は「やめられない」わけでも「やめられる」わけでもない。

「やめ続ける」ことができるのだ。

これを、いま苦しんでいる本人や家族に伝えたい。


そして、繰り返し発信したいことがある。

依存症からの回復は、3歩進んで4歩下がることもある。
しかし、その3歩は、決してムダではない。3歩ぶん、道は踏み固められた。
その道が、次の前進を少しだけ楽にしてくれる。
だから、あきらめないで。
ほら、立って。
まずは、今日の一歩から。

この記事が参加している募集

仕事について話そう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?