見出し画像

そりゃないよ、竜ちゃん 『竜ちゃんのばかやろう』

上島竜兵さんの義兄と一緒に仕事をしたことがある。

ブックオフ副店長として勤務していた23歳のとき、新規店舗立ち上げの手伝いに行った。
そこで、少し年上の男性と話していたら、「ダチョウ倶楽部って知ってます?」と聞かれた。
1999年、当時の私にとってダチョウ倶楽部は「あまり面白くないわりに、ちょっと売れてる三人組」という印象だった。
「はぁ、一応、知ってます」
「上島竜兵ってわかります?」
「あの太ってる人」
「そうそう。僕の妹がね、彼の妻なんですよ」
「え!?」
芸能人が身近にいる人は初めてだったので、少しテンションが上がった。
「どんな人なんですか!?」
「めっちゃいい人。けっこう売れてるんだけど、ぜんぜんそんな感じしない。芸能人っぽくなくて、ほんと腰が低い人なんだよ」
「へぇぇ」

その後もダチョウ倶楽部についての私の評価はあまり高くなかったが、医学部受験のための浪人時代だったか、ナイナイのオールナイトニッポンを聞いていたら、岡村さんが、

「ダチョウ倶楽部ってすごいよな。上島さんがボケで一番面白いって感じになってるけど、そのボケの準備するまでジモンさんがワケのわからんことして肥後さんが突っ込んで時間稼ぎすんのよ」

みたいなことを言っていた。
それからは3人を意識して観察するようになり、ダチョウ倶楽部のテレビ出演も増えて、いつのまにか「一流の二流芸人」というすごい位置づけになっていた(「一流の二流」というのは、私にとってかなり強い褒め言葉で、私自身も「一流の二流医師」になりたいと思っている)。
そして、いつのまにか3人をちょっと好きになっていた。

つい最近は、家族全員でハマったテレビドラマ『真犯人フラグ』に上島さんが出演。
演技する上島さんを観るのは初めてで、妻と二人で「演技めっちゃうまい」「マジすごい」「これから俳優としての仕事が増えるんじゃない?」などと言い合った。「俺、上島竜兵の奥さんのお兄さんと仕事したことあるよ」
「ダチョウ倶楽部って、上島がボケるために、寺門と肥後が〜」
そんなことを語って聞かせもした。

それからたったの数ヶ月。上島さんは、いなくなった。

竜ちゃん、そりゃないよ……。

奥さんの辛さ悲しさがにじむ本だった。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?