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ミラーリングとしての挨拶

診察室に入ってきた患者さんが「おはようございます」と言えば、こちらも「おはようございます」と返す。
「こんにちは」なら「こんにちは」。

精神科医に限らず、人は意識することなく自然にこういう同調・同期行動をとっている。これはミラーリングという行動の一つで、同調された相手はささやかながらも安心感を抱く。

診察室で、私はこのミラーリングを意識的に行なう。
たとえ12時近くになっていても、患者さんから「おはようございます」と言われたら「おはようございます」と答えておいて、「あっ、ちょっと遅いおはようですね」など軽口を織り込む。こういう小さな一言で、患者さんの緊張はゆるむ。

患者さんによっては、朝イチでこちらが「おはようございます」と挨拶しているのに「こんにちは」と返すことがある。こういう時は、その人に「ミラーリング不全がありそうだ」ということを少しだけ念頭におく。
ミラーリング不全は、日常生活での人間関係で相手に微妙な違和感を抱かせ、違和感の蓄積が相手を遠ざけ、それが患者さんの生きづらさにつながっているかもしれない。

ミラーリングを意識した挨拶がどれくらい診療のプラスになっているかは分からないが、私の意識として、診療は挨拶の時点から始まっている。

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