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【読書会】須賀しのぶさんの『革命前夜』を読む①②

こんにちは。

諸般の事情で延期が重なってしまった『革命前夜』(須賀しのぶ著)の読書会は、11月15日(月)と22日(月)に、第1回と第2回を開催することができました。

物語は、昭和が終わった日に、旧東独のドレスデンに降り立ったピアノ留学生が、そのドレスデンやライプツィヒなどで出会う人々と織りなすドラマといったものでした。まだ2章までしか読んでいないので、内容については、この程度のご紹介に留めておきたいと思います。

作者の須賀しのぶさんは、上智の史学科を卒業されているので、歴史考証はお手のものなのでしょう。他の作品でも、ドイツやポーランドの現代史を取り上げられています。

この『革命前夜』は、ピアノ留学生が主人公なだけに、クラシック音楽について、かなり詳述されています。主人公は、主としてバッハを学ぶために東独を選んでいるのですが、そのバッハはもちろん、最初の2章だけでも、ラフマニノフ、フランク、リスト等の名だたる作品群が「採用」されています。読書会の出席者さんにお教えいただいたのですが、そうした作品群が、Spotifyで「プレイリスト」として公開されています。聴きながら読むというのもいいかもしれませんね。


さて、この作品はかなりの「意欲作」ではありますが、それだけに読書会では手厳しい意見が多く寄せられました。それは単にDisっているのではなくて、意欲作であることを評価し、期待しているがゆえの厳しい意見だったと思います。

例えば、若いヴァイオリニストが手にしているのが「カール・ヘフナー」という製造業者のものとされていますが、そのクラスの奏者が手にするヴァイオリンとしては似つかわしくないとする意見がありました。

ぼくが感じたのは、確かによい素材は「がんばって」「取材」している。しかし、それを料理し切れていないのではないかということでした。

バッハの「最高傑作」とされる「マタイ受難曲」は、メンデルスゾーンによって「発掘」された大傑作でした。その演奏について、メンゲルベルクやローゼンシュトックといった指揮者による歴史的名演奏にも迫っています。そうした「伏線」が、どう回収されるのかは、これからのお楽しみではあるのですが、今のところはまだ、「とってつけた」印象以上のものを与えてはくれていません。

また、作中の登場人物が、「ドイツ語で語っていない」という指摘もありました。30年前のドイツ人ではなくて、現代の日本人の語りでしかないというのです。

実に興味深いご指摘だったので再現してしまうと、例えば『天平の甍』(井上靖)や『大地の子』(山崎豊子)などに出てくる「中国人」は、もちろん日本語での表記ではありますが、明らかに「中国語」で語っている(ことを彷彿とさせる)のだそうです。

こうした事どもは、須賀さんに対する「期待」から出てくる、つまりは「伸び代」があることを念頭においた上での「注文」だと思います。

これまでで、全7章中の2章までを読みました。まだ起承転結の「承」に入りかけているところくらいだと思っています。ご興味をお持ちいただけましたら、また来週(11月29日)以降にもご参加くださいますと幸甚です。どうぞご検討ください。

今回は以上といたします。最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。それではまた!



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