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【100分de名著を語ろう】伊集院さんの『名著の話』の話

こんにちは。5月29日(日)07:15です。まだ朝は涼しいです。

5月度は、アリストテレスの『ニコマコス倫理学』について語り合いました。お越しいただいた全てのみなさまに、心から御礼申し上げます。ありがとうございました。

5月30日の「100分de名著」は、第4回分が再放送されるはずです。したがって、その直後の木曜である6月2日については、放送内容のフォローから離れて、伊集院さんの近刊『名著の話』(KADOKAWA)についての話し合いとする予定でいます。このnoteは、その話し合いで参照いただけるように作成しています。ご笑覧ください。


さて、この著作は、既に100冊以上が紹介されてきた「名著」の中から三冊を厳選して、それぞれの解説者さんと伊集院さんとの対談で構成されています。選ばれた「名著」と解説者は、以下の目次をご参照ください。

カフカ『変身』 ”虫体質”な僕らの観察日記 川島隆

・僕は、ひきこもりの経験があって――今思えば完全に鬱なんですけど――あのとき僕は突然役に立たなくなっちゃったんだ、虫になっちゃったんだ、という読み替えができたんです(伊集院)。

・でも、カフカの面白さを人に理解してもらうにはどう伝えたらいいのかは全然わからなかった(川島)。

・ところが伊集院さんとお話ししたら、いまおっしゃったように「俺の話だ」と受け取ってくれました。あっ、これって伝わるんだと(川島)。

・世の中と、ある程度の触れ方はしたいという感じがよく出てる(伊集院)。

・読者はオーダーメイドの虫を自分の中でイメージすることになる(伊集院)。

・そこでどんなニュアンスを付け足すかは翻訳者の裁量に任されている部分が大きいのですが(川島)。

・僕にとって、『変身』のもうひとりのキーパーソンは妹なんです(伊集院)。

・つまり、妹は虫でいる自由を認めちゃったから、そこに主人公は安住しちゃったんじゃないかと(伊集院)。

・そこで家族がサポートするかもしれない。でも、家族がその負荷に耐えられなくなると、主人公のように「あれ」扱いされてしまうんですよ(伊集院)。

・人間関係に安住できる人間とそうではない人間がいて、カフカは明らかに後者でしょう(川島)。

・安定すると不安が生じることをすごく凝縮して書いたような話なんです(川島)。

・私がここ何年か人としゃべってみた実感からすると、日本でカフカに共感できる人間ってどんどん増えているじゃないかと思います(川島)。

・まさにボーダーラインにいる感じだから、みんな落っこちないように不安を感じながら生きているという(伊集院)。

・文学研究も、謎を解くことが目的じゃないんですね。少なくとも、私にとってはそうです(川島)。

・一つの文学作品を、どうやったらみんなで豊かにしていけるかということを考えるのが文学研究だろうと思います(川島)。

・ところが『変身』について誰かと話すということは、人とのつながりが立たれることについて、誰かとしゃべることができることになる。それが面白いんです(川島)。

・これを読んだら、語らずにはいられない。力のある作品、力のある文学を読むと、いやおうなく動かされる。それは言葉になるんですよ(川島)。

柳田国男『遠野物語』 おもしろかなしい、くさしょっぱい話たち 石井正己

・こんな、切れっ端をいっぱい集めた感じのもの(略)「まとめサイト」ってっ感じがする(伊集院)。

・面白いのは、佐々木(喜善。引用者注)としては「柳田国男に怪談を語った」という程度だったことです(略)ところが聞き手である柳田は、その話を遠野の土俗的な文化として受け止めたのです(石井)。

・「この話を事実にするために重要なのは、地名と人名と数字である。それで事実化していく、本当にあったことにしていくんだ」という方法が生まれます(石井)。

・「データであり、文学である」という感じはすごくよくわかります(伊集院)。

・佐々木は見てもいないことを見てきたかのように話せる話し手であり、柳田はそれに加担した共犯者です(石井)。

・『遠野物語』は前近代と近代のきわどい狭間で生まれたんだということに気づきます(石井)。

・現実の衝撃を前にして、『遠野物語』が再び立ち現れる。決して古びず、つねに新しいんです(石井)。

・なにか今の時代、『遠野物語』で描かれる世界のように、一見、論理的じゃないと思えたことが、じつは論理的だったということを、人々が解釈し始めている気がするんです(伊集院)。

神谷美恵子『生きがいについて』 人生の締め切りを感じたとき出会う本 若松英輔

・しかし、この言葉がある確かな意味をもって私たちの口にのぼるようになるに至るには、神谷美恵子の仕事を待たねばならなかったのです(若松)。

・人は、思想や哲学から人生を始めるのではない。切実な感情のうごめきこど、その人の本当の人生の始まりを告げ知らせる、というのです(若松)。

・決心しようとすると迷います(略)「決める」のではなく「決まる」ことも少なくない(若松)。

・でも僕は空気を100パーセント読んでいくと、かなり正しいところまで行くはずだと思っているんです(伊集院)。

・偶然はしばしば、たまたま訪れたように見える必然であるといえると思います(若松)。

・この本は、読むべきときになんとなく向こうからくるような(伊集院)。

・「願い」と「使命」が一つになる(略)「生きがい」は、徹底的に質的なものだということだと思います(若松)。

・そして、「生きがい」の発見とは、いつか行わなくてはならない人生の宿題でもある(若松)。

・そうすると、僕たちは生きがいの誤用にずいぶん踊らされているかもしれない(伊集院)。

・「生きがい」を見失うという危機から心を守らなくてはならない。これまでは自分の「職業」だったのが、今回、本当に「生きがい」になった人がたくさんいらっしゃると思うのです(若松)。

・彼女が考えた「生きがい」は情報化できない(略)「表現」に向いていなくて、むしろ「体現」されることが多い(若松)。

・その後の自分が、自分の言葉を真実にする、ということがある。むしろ、そのために私たちは生きているのではないでしょうか(若松)。

・やっぱり自分がそもそも何が好きなのかということを手放しちゃいけないんがないかなと(伊集院)。

あとがき

・司会は安部みちこさんで、僕はただの伊集院光なのです。

・何より、お読みいただくことで、本書を「紙」から「本」にしてくださった読者のみなさまに感謝しております。

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抜書きは以上です。感じたところがあれば、ぜひ2日の席上でご発言になってみてください。お会いできますことを楽しみにしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。




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