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レビューのレビュー:「ブルシット・ジョブ」のグレバーの新刊発売!

月に 1 度の頻度で、注目書籍のレビューのレビューを紹介していきます。
特に、未翻訳の洋書や、なかなか全ての本屋には在庫がなさそうではありながらも、これから注目が集まるであろうと本を中心に扱っていくつもりです。

1. The Dawn of Everything / David Graeber & David Wengrow

急死の直前のグレバーが記した新著「The Dawn of Everything」が2022年11月にリリースされた。本書は、人類の歴史観を覆す本になっているようだ。ユヴァル・ノア・ハラリ「サピエンス全史」ジャレッド・ダイアモンド「昨日までの世界」、フランシス・フクヤマ「政治の起源」など数々の名著の中で、人類に歴史に関する共通の見方がある。それは、「人類の歴史が長く続けば続くほど、社会はより複雑に、豊かに、そして文明化する」ということである。そしてその自然な帰結として、平等さ犠牲になり格差が広がることが不可欠であるということである。Graeber とWengrowは、これは普遍性を帯びた歴史観ではなく、西洋的の歴史のパースペクティブを取りれているにすぎないと指摘する。


2. 何もしない / ジェニー・オデル

バラク・オバマ元米国大統領が2019年の「お気に入りの本」として注目された本書がついに早川書房から翻訳本が出版された。アテンション・エコノミーの中、常に我々の注意力が奪われている状態である中、我々はどのようにその流れに抗っていけばよいのか。アテンションをコントールする手段としてマインドフルネスか?いやマインドフルネスもアテンション・エコノミーの世界でうまくやりきる方法でしかないかもしれない。解決策は、「何もしないことだ」これが 著者 Jenny Odell の主張である。


3. 息吹 / テッド・チャン

映画「メッセージ」の原作作家で知られる著者テッド・チャンの最新作である息吹が出版された。今回のリリースされた息吹は、いくつかの短編から構成されるものである。池田淳一氏のレビューでも書かれているようにブラウン大学で物理学とコンピューターサイエンスを学び、テクニカルライターを生業とするテッド・チャンらしく、アルゴリズムと社会変革が大きなテーマになっている作品が多いが、今回もその片鱗を感じさせる作品である。

「ここでチャンらしさを生み出しているのは、彼の依拠する科学が、コンピュータ・サイエンスであることだ。つまり、計算機科学であり情報科学である。その特徴は、まさにアルゴリズムを通じて世界に対して、演算出力として影響を与え、気づかぬうちに社会を書き換えていること。再帰的に社会を生成し続けている、ということだ。」

来月もお楽しみに。

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