ACBDコミック賞2023グランプリが発表されました!
フランスのバンド・デシネの批評家とジャーナリストの協会ACBD(l’Association des Critiques et journalistes de Bande Dessinée)による「ACBDコミック賞2023」のグランプリが9月12日に発表されました。
「ACBDコミック賞」はフランス語に翻訳されたアングロサクソン文化圏のマンガ作品を表彰する賞です。
過去の受賞作品については以下の記事にまとめていますのでご覧ください。
「ACBDコミック賞2023」は2022年8月から2023年7月にフランス語圏で出版された作品を対象にしています。8月21日にノミネート5作品が発表され、その中から9月9日までにACBDメンバーによって最優秀賞が選出。10月27日から29日までフランスのサン・マロで開催される第42回ケ・デ・ビュル・フェスティバル(le festival Quai des Bulles)で授賞式がおこなわれます。
ちなみにケ・デ・ビュル・フェスティバルは、フランスではアングレーム国際漫画祭に次ぐ大きなイベントです。
では2023年のノミネート作品を見ていきます!
(以下、書名がフランス語と英語で異なるものは、英語のタイトルをカッコ書きで併記しています)
最終ノミネート5作品
Come Home Indio
作:Jim Terry, 訳:Jérôme Wicky, 発行:Komics Initiative
2020年にアメリカ図書館協会によるトップ10グラフィック・ノベルに選ばれたジム・テリーの自伝。
ウィスコンシン州のネイティブアメリカン、ホーチャンク族のコミュニティとシカゴにある学校の友だちのどちらにも馴染めなかった少年時代。孤独と疎外感から逃れるためにアルコールに依存してしまうが、多くの先住民から長年訴えられてきたダコタ・アクセス・パイプラインの抵抗運動に参加することで希望を見出していく。
Dans les yeux de Billie Scott (The Impending Blindness of Billie Scott)
作:Zoe Thorogood, 訳:Basile Béguerie, 発行:Bubble Éditions
アイズナー賞2023で新人賞も受賞したゾーイ・ソログッドさんのデビュー作。
アーティストであるビリー・スコットは数か月後に初めての展示会を控えていたが、2週間で失明する運命だった。緊縮財政下のイギリスで、運に恵まれず取り残される人々が直面する問題を描く。
Demon Days (『デーモン・デイズ』)
作:Peach Momoko (桃桃子), 訳:Mathieu Auverdin, 発行:Panini Comics
今回選出されている作品の中では唯一日本語で読めるコミックです。
日本人アーティスト桃桃子さんによる純和風マーベルコミック! マーベルのヒーローたちが日本の神々や妖怪に姿を変えて登場。マーベルコミックについて詳しくなくても楽しめます。
Do a Powerbomb
作:Daniel Warren Johnson, Mike Spicer, 訳:Cédric Calas, 発行:Urban Comics
伝説の女子プロレスラーを母に持つロナは、母親の影に隠れながらも自身もプロレスラーになりたいと思っている。そんな彼女のもとに最大にして最も危険なトーナメントへの参加依頼がやってきて、すべてが変わる…。
女子プロレスものという異色のコミック。
Echolands tome 1
作:W. Haden Blackman, John H. Williams III, 訳:Laurent Laget, 発行:Panini Comics
過去の歴史が忘れ去られた未来の世界。その過去を紐解く鍵を握るのは、無謀な泥棒ホープ・レッドフッド。しかし彼女のもとには横暴な魔法使いが差し迫り、やがて世界間戦争へと展開していく。ホラー映画の吸血鬼から古典的なギャングやサイボーグのエルフ、ローマの半身にレトロなロケット船まであらゆるものを詰め込んだアドベンチャー。
作画は『プロメテア』や『サンドマン 序曲』のJ.H.ウィリアムズIII。
グランプリ
以上5作品の中からグランプリに選ばれたのは……
『Echolands tome 1』!!
作画のJ.H.ウィリアムズIIIのアートは本当に超絶凄いのでこちらの作品もめちゃくちゃ気になります!!
選外だけど注目7作品
最終ノミネート5作品には惜しくも残らなかったのものの、選考委員会で注目すべき作品として7作品が挙げられていましたのでこちらも簡単に紹介します。
Catwoman Lonely City
作:Cliff Chiang, 訳:Jérôme Wicky, 発行:Urban Comics
10年前、バットマン、ジョーカー、ナイトウィング、ゴードン長官の命が奪われ、キャットウーマンのセリーナ・カイルは刑務所におくられた。それから10年、変貌を遂げたゴッサム・シティにセリーナ・カイルが舞い戻る。
Elric
作:Roy Thomas, Michael T. Gilbert, Philip Craig Russell, 訳:Alex Nikolavitch, 発行:Delirium
マイケル・ムアコック原作のファンタジー小説「エルリック・サーガ」のコミカライズです。エルリック・サーガはバンド・デシネ版も2巻まで邦訳されていましたが、根強い人気なんですね。
Miracleman
作:Alan Davis, John Totleben, Garry Leach, 訳:Mathieu Auverdin, 発行:Panini Comics
マーベルのヒーロー「ミラクルマン」のコミック。
Red Room
作:Ed Piskor, 訳:Nicolas Bertrand, 発行:Delcourt
エンタメとしてネット上に殺人現場をライブストリーミングするという、現代風刺も含まれた衝撃的な作品のようです。『ヒップホップ家系図』の邦訳があるエド・ピスコーの作品ですね。
Le Secret de la force surhumaine (The Secret to Superhuman Strength)
作:Alison Bechdel, Holly Rae Taylor, 訳:Lili Sztajn, 発行:Denoël Graphic
『ファン・ホーム』のアリソン・ベクダルがフィットネス愛を語る最新作。ACBD批評グランプリ2023やFnac France InterBD賞2023にもノミネートされていましたね。
The Nice House on the Lake tomes 1 et 2
作:James Tynion IV, Alvaro Martinez Bueno, 訳:Maxime Le Dain, 発行:Urban Comics
アイズナー賞でもノミネートされてましたね。湖畔の家を舞台にしたホラー作品。
Ultramega
作:James Harren, Dave Stewart, 訳:Benjamin Rivière, 発行:Delcourt
疫病のために怪獣化してしまった人類と戦う3人のウルトラメガ。『ウォーキング・デッド』の制作会社Skyboundの作品です。
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フランスにおけるアメリカン・コミックの割合はそれほど多くない(マンガ市場の1割くらい?)という話を聞いたことがありますが、それでも色んなアメコミがフランス語に翻訳されてますね。オリジナルは英語なので気になる作品があったらぜひ読んでみてください。
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