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第17回日本国際漫画賞が発表されました!

2023年12月26日、外務省主催の第17回日本国際漫画賞の受賞作品が発表されました!

日本国際漫画賞は、マンガ文化を通じた国際交流と相互理解を目的に海外でマンガ文化の普及に貢献する漫画作家を顕彰する賞で、2007年に創設されました。
過去3年以内に制作された作品を対象に募集され、最優秀賞1作品、優秀賞3作品、入賞11作品の計15作品を選出します。(第17回は1作品後日入賞取り消しとなり全14作品)

今年度から「奨励賞」という賞が設けられています。

昨年度の受賞作については以下の記事で紹介していますのでよかったらぜひご覧ください。

第17回は、82の国・地域から過去最多となる587作品の応募があり、かつエチオピア、コモロ、セネガル、ルワンダのアフリカ4カ国から初めて応募があったそうです。
現在、京都国際マンガミュージアムでも「アフリカマンガ展」が開催中ですが、アフリカマンガ、アツいですね!

では各入賞作品を詳しく見ていきます!
Youtubeライブでも詳しくお話していますので、こちらもぜひご覧ください!

※以下、作家さんのお名前のカタカナ表記など正確でないこともあるかと思いますがご容赦ください…!


【最優秀賞】

『青空下的追風少年』(青空のもと、風追う少年)

作:簡嘉誠(ジャン・ジアチェン)(台湾)
発行:蓋亞文化

作者の簡嘉誠(ジャン・ジアチェン)さんは以前『時空鐵道之旅』という作品の邦訳がコミックカタパルトから出ていた作家さんです(現在は販売終了)。鉄道事故をきっかけに100年前にタイムスリップした主人公たちが台湾の鉄道の歴史をたどる物語でした。

今回最優秀賞を獲得した『青空下的追風少年』は第二次世界大戦末期が舞台。台湾と日本の二人の少年が徒競走を通じて出会い、蒸気機関車と速さを競いながら、日本の陸上競技の歴史に名を残そうと夢見る。「台湾檔案」という資料をもとに描かれた力作だそうです。

最優秀賞で台湾の作品が選ばれたのは第14回の韋蘺若明さんの葬送のコンチェルト以来です。

【優秀賞】

『Chronos Express』(時間列車)

作:Bonnie Pang(ボニー・パン)(香港)
発行:Bonnie Pang Illustrations

小説家になることを夢見て生計のために喫茶店で働いているレナは、ついに出版のチャンスをつかむ。しかし彼女はスランプになり一言も書くことができなくなってしまった。タイムリミットが迫るある夜、部屋の窓の外に電車がやってくる。この時間列車に乗っている3人の乗客の悩みを解決すれば、小説のインスピレーションを取り戻したいというレナの願いを叶えてくれるという…。

香港政府が漫画出版を支援する「港漫動力」第2弾の入選作品。
「港漫動力」については『漫海』第3号で香港漫画店の松田さんに記事を書いていただきました!

『Điệu Nhảy Của Vũ Trụ』(ザ・ダンシングユニバース)

作:Nachi(ナチ)(ベトナム)
発行:Comicola

天体擬人化マンガです。
太陽と地球が宇宙を巡るファンタスティックな物語。
上のリンクから最初の3話を読むことができます。
擬人化された太陽と地球がひたすらに可愛い。
いたいけな少女の地球と、彼女を守るお姉さんな太陽。太陽の少しスーパーヒーローのコスチュームを思わせるような衣裳も可愛いですね。
ほかの惑星のキャラクター造形も良きです。

出版社のComicolaさんは、昨年の日本国際漫画賞の入賞作『月夜の雨』を刊行されていたところですね。この作品もすごく可愛くて良かった。
ベトナムのマンガも要注目ですね!

『Just Friends』(ただの友達)

作:Ana Oncina(アナ・オンシナ)(スペイン)
発行:Editorial Planeta, SA.

10代のある夏、母親に無理やり行かされた夏のキャンプ。人との付き合いが苦手なエリカはそこでエミという少女と出会い、仲良くなる。そして30代になった二人は、あの夏の運命の出会いを思い出し、あったかもしれない可能性について考える…。

百合マンガ…なのでしょうか…?
作者のAna Oncina(アナ・オンシナ)さんは2015年にバルセロナ国際コミックフェアでthe Popular Prizeを受賞し、2017年にはフォーブス誌でヨーロッパで30歳未満の最も影響力のあるクリエイターのひとりに選ばれたアーティストだそうです。

出版元のPlaneta Comicsは、日本のマンガをはじめスペイン語版マンガやグラフィック・ノベルを出すほか、マンガ雑誌「Planeta MANGA」を刊行し、スペイン産MANGAも積極的に発表されています。クオリティの高そうな作品も見かけていてとても気になっています!

『Just Friends』は英語版も出ているようですね。

【奨励賞】

『spectrum』(スペクトラム)

作者:Ahlem Khedri(アーレム・ケドリ)(チュニジア)
原作者:Samah Kamil(サマ・カミル)(サウジアラビア)
発行:Manga Arabia

残念ながら入賞作を紹介しているサイトを見つけられなかったのですが、以下のArab Newsの記事を読むと、自閉症スペクトラムと診断された女の子リナと、彼女にしか見えない奇妙な生き物との交流を描いた作品のようです。

作者のAhlem Khedri(アーレム・ケドリ)さんのSNSなどは以下のリンク集から見ることができます。サイレント・マンガ・オーディションのサイトでは、アーレム・ケドリさんの作品も読むことができますね。すごく可愛いです。サイレント・マンガ・オーディションについては以前に記事を書いたことがありますが、海外マンガへの貢献が半端ないですね。

「مانجا العربية(Manga Arabia)」というサウジアラビアの会社が運営するマンガアプリでアーレム・ケドリさんの作品が公開されているようです。アプリをインストールしないと見れずアラビア語もさっぱりなので内容は確認できていませんが、アラビア語のマンガ、とても興味深いです。

【入賞】

『Limbo』(リンボ)

作者:Ana C. Sánchez(アナ・C・サンチェス)(スペイン)
発行:Editorial Planeta, SA.

死者の魂を見え交流できるオーロラは、その特殊な能力を生かしてお金を稼いでいたが、ある日、奇妙な手紙を受け取る。その手紙には「魂の精」を集めろ、と書かれていた。「魂の精」とは何なのか、本当に存在するのか疑わしく思うオーロラだったが、それらを付け狙うものたちが現れて…。

作者のAna C. Sánchez(アナ・C・サンチェス)さんはこれまでにもAlter EgoSiriusというめちゃくちゃ可愛い百合マンガを描いておられて、いつか読みたいと思っていたマンガ家さんです。
今度の作品は少年マンガみたいですね!

優秀賞を受賞した『Just Friends』と同じくPlaneta Comicsの作品です。

『二零七之骨』(207番目の骨)

作者:林奕辰(リン・イーチェン)(台湾)
発行:自費出版

「奇獨」という特殊な一族の男たちは、普通の人より骨が1本多い胎児を妊娠させる。その骨は剣となり、胎児は生まれるときに母親の腹部を切り裂き、屈強な「挾骨者」となる。死んだ母親の魂は「楽園」にたどり着き永遠の幸福を享受するという。そんな一族の伝統の束縛と死の運命から逃げ出す女の物語。

予告編を見る限り、因習村とマッドマックス味のあるポストアポカリプスと巨大ロボットものを掛け合わせたような雰囲気です。ちょっと見たことのないごっちゃ煮感が何とも魅せられます。

以前Youtubeライブでもご紹介した台湾の第14回金漫賞で年度漫画賞にも選ばれた作品です。

『Before Becoming the Buddha』(ブッダとなる前)

作者:ADISAK DAS PONGSAMPAN(アディサック・ダス・ポンサンパン)(タイ)
発行:自費出版

ブッダの伝記マンガ3部作の第1巻。
この作品も残念ながら作品自体のサイトを見つけられなかったのですが、作品を紹介しているタイ語の記事を見つけましたのでリンクを貼っておきます。ナイスバディでイケメンマッチョなブッダの物語みたいです。

『Girypto Nomad 77: Underground Assault』(ノマド77:地下世界の激闘)

作者:Lam Quek Chung @ Leoz(マレーシア)
原作者:Lee Kok Chen @ Tadatada(マレーシア)
発行:KADOKAWA GEMPAK STARZ SDN BHD

秘密と破壊工作員を地下深くに抱える人里離れた国ポルカディア。ノマドのNo.77は行方不明のノマドの捜索を命じられるが…。SF美少女アクション。
ウェブトゥーンも公開されています。

で、この作品。カドカワグループが展開している「GIRYPTO(ギリプト)」というコミック業界では世界初のオープンソースIPの一貫として生み出された作品のようです。ちょっとNFTとかに疎いのでこのプロジェクトのインパクトがよくわかってないのですが、なんかすごそうです。

『জাতির পিতা বঙ্গবন্ধু』(建国の父 ボンゴボンドゥ)

作者:Mahbube Elahi Chowdhury(M・E・チョードリー)(バングラデシュ)
作者:イエモト・キエッタ
発行:NRB Scholars

1971年のバングラデシュの独立に向けて、国父ボンゴボンドゥと呼ばれる初代大統領シェイク・ムジブル・ラフマンの人生を描いた歴史マンガ。下の記事によると、ベンガル語、英語、日本語で刊行されており、アニメ化も予定されているとのこと。

『Lautaro, el ascenso』(ラウタロ)

作者:Claudio Muñoz(クラウディオ・ムニョス)(チリ)
原作者:Francisco Inostroza(フランシスコ・イノストロザ)(チリ), Felipe Benavides(フェリペ・ベナビデス)(チリ)
発行:SM

1553年12月25日、現在のチリのビオビオ地方であるトゥカペルで、マプチェ族とスペイン人が対峙した。植民地支配をもくろむスペイン人のペドロ・デ・バルディビアと、彼に立ち向かうは先住民マプチェ族の英雄ラウタロ。スペイン征服の歴史を変えたアラウコ戦争で最も有名な人物の一人であるラウタロの生涯を描く。

『当我们离太阳更近』(太陽へ更に近づく時)

作者:卢静妍(Lu Jingyan)(中国)
発行:北京電影学院

とあるバーでバーテンダーとして働く女性、英仙は、とあるシンガーを待っていた。夜の街に滲む抒情的な人間ドラマ。

北京電影学院アニメーション学院の2022年度漫画学生の卒業作品のひとつ。

『Go On!! Tan Jiu's Short Manga Stories Collection』(行け--生活に負けるな!)

作者:坛九(中国)
発行:Mosspaca Studio(幕星社)

SQ 君の名前から始まるの壇九さんによる漫画短編集。とのことですが、日本語でタイトルとか書かれてるんですが、調べ方が悪いのかもしれないのですが、まったく情報が分かりません…! 誰かご存じの方、この作品を読む方法を教えてください…!

仕方がないので壇九さんがSNS上に公開されていた、めちゃ良き短編漫画『Summer Night』を貼っときます…! 女子ふたりの表情がすごく好き…!

『友繪的小梅屋記事簿 第二集』(友繪の小梅屋備忘録 第2巻)

作者:清水(台湾)
脚本協力:三色坊 Haku(台湾)
発行:蓋亞文化

第1巻が邦訳されている『友繪の小梅屋備忘録』の第2巻。
時は日本統治時代。日本料亭の娘である女学生の友繪は、第1巻では女学校の園遊会で提供するメニューを準備するために和食、洋食、台湾料理と奔走したが、第2巻で出会うのは横暴な財閥の娘! 
1920年代に実際にあった建築史跡を描き、当時の食文化を詳しく調査して描かれる台湾歴史グルメマンガ!

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以上いかがでしたでしょうか?
実はこの発表を見て、優秀賞を受賞した香港マンガは購入しました…! ちょっと個人的に香港マンガがアツいです…!
そしてスペイン産MANGA。気になりつつもまだ手を出していなかったのですが、そろそろ手を出すべきかと思ってます…!
中国、台湾のマンガは応募作品自体も多かったようですが、クオリティ高いですね。個人的には『二零七之骨』がすごく気になっています。
そしてベトナム、サウジアラビア、タイ、マレーシア、バングラデシュ、チリと今年もバラエティに富んだ入賞作品。ネット上で読むことができる作品もいくつかあるので気になった方はぜひご覧ください!

参考資料

▼過去の日本国際漫画賞受賞作

▼参考にした記事






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