見出し画像

第15回日本国際漫画賞の受賞作品が発表されました!

2022年1月12日、外務省主催の第15回日本国際漫画賞の受賞作品が発表されました!

日本国際漫画賞は、2007年に創設された、マンガ文化を通じた国際交流と相互理解のために、海外でマンガ文化の普及に貢献する漫画作家を顕彰する賞です!
詳しくは以下の記事にも紹介しています。

第15回は、2018年から2021年までに制作された作品を世界各国から募集。
76の国・地域から過去最高となる484作品が集まり、その中から最優秀賞1作品、優秀賞3作品、入賞11作品の計15作品が選ばれました!

調べてもよくわからない作品もあるのですが(…💦)、なかなか面白いラインナップでしたので、わかる範囲でご紹介していきます。

Youtubeライブでもお話していますので、こちらもぜひご覧ください!


【最優秀賞】

『JOURS DE SABLE』(砂の日々)

作:Aimée de Jongh(エメー・デ・ヨング)(オランダ)
発行:DARGAUD BENELUX

フランスのACBD批評家賞、フナック・フランスインターBD賞でも最終ノミネートに残った作品です!

1937年、ワシントン。大恐慌の影響を受けた農民を取材する南部の農村を訪れた写真記者が困窮する人々を目の当たりにする…。

ストーリーも興味深いですが、試し読みからページでもうかがえる色彩の美しさがとても印象的です。

英語版(タイトル『Days of Sand』)も出るようです。英語ができる方はこちらもチェックしてみてください。

作者のエメー・デ・ヨングは、『最高の夏休み』の作者ジドルーとの共作である『L'Obsolescence programmée de nos sentiments(身体の老いとともに感情もまた老化する)』第12回日本国際漫画賞で優秀賞を受賞しています!

倦怠期を迎えた熟年夫婦。夫は若い女と浮気。妻との間に再び愛を取り戻すことができるのか…?
老年夫婦の性愛を描いた作品です。

英語版(タイトル『Blossoms in Autumn』)もありますので、こちらもどうぞご覧ください。


【優秀賞】

『MOONCHOSEN(Избранница Луны)』
(月に選ばれし娘)

画:Nataliia Rerekina(ナターリア・レレーキナ)(ウクライナ)
作:Gilbert Brissen(ギルバート・ブリッセン)(ウクライナ)
発行:Bubble Comics

Netflix映画化もされた『刑事グロム VS 粛正の疫病ドクター』の原作コミックをはじめロシアのオリジナルコミックをたくさん出版しているBubble Comics
そのMANGA作品のひとつである『MOONCHOSEN』が優秀賞です!

個人的にロシア産MANGAは気になってしょうがないので、とても嬉しいです!

“Moon Infant(月の幼子)”が空で泣くとき奇跡が起きる…? 
彼らは”Moon Chosen(月に選ばれし娘)”を守ることができるのか…?
とても美しいファンタジー作品です。

ロシア語版のほかに英語版でも刊行されています!


『Malgré tout』(それでも、やっぱり)

作:Jordi Lafebre(ジョルディ・ラフェーブル)(スペイン)
発行:DARGAUD BENELUX

今回選ばれた15作品の中で唯一読んだことがある作品です…!!(嬉しい)

長年、市長を務めたキャリアウーマンのアナ。
本屋で船乗りで物理学者で、根無し草なジノ。
そんな二人のとっても素敵なラブロマンスものです!

この作品の素晴らしいのは、凝ったストーリーテリング
まず年老いた二人が雨がそぼ降る夜にあいびきをする第20章から物語は始まり、時をさかのぼって二人が初めて出会う第1章へと向かっていきます。
過去の二人に何があったんだろうとドキドキワクワク心を躍らせながら読み進められます。

そして二人がとっても魅力的なんです!
こんなふうに年を重ねたいと思うような、チャーミングなキャラクターに描かれています。

今回の受賞作は『Always Never』というタイトルで英語版も出ています!

作者のジョルディ・ラフェーブルさんは、邦訳もある『最高の夏休み』でもとっても表情豊かな家族の物語を描かれていますね。『最高の夏休み』は2021年に刊行が開始されたバンド・デシネ誌「ユーロマンガ」でも連載中です。


『小丑醫生-最後一次說再見-』
(クリニクラウン―「またね」を最後にもう一度―)

画:柯宥希(顆粒)(台湾)
作:逢時(台湾)
発行:鏡文學(MIRROR FICTION)

優秀賞の3作目は台湾の作品です。

ピエロの恰好をして病気の子どもたちにパフォーマンスをおこなうクラウン・ドクター。
主人公の女子高生は、難病の妹の死に間に合わなかった後悔を抱えている。そこでクラウン・ドクターに出会って…。

作画の柯宥希さんは『Lovely無所不在』『許個願吧!大喜』『有何不可』という作品で台湾のマンガ賞である金漫賞に過去6回も入賞しているほか、『許個願吧!大喜』は第5回日本国際漫画賞でも優秀賞を受賞しています!

『有何不可(いいではないか)』が以下のサイトから日本語の試し読みができますよ!


【入賞】

『IOGI』(井荻)

画:Václav Šlajch(ヴァーツラフ・シュライフ)(チェコ)
作:Jean-Gaspard Páleníček(ジャン=ギャスパール・パーレニーチェク)(チェコ・フランス)
発行:Ladislav Sutnar Faculty of Design and Art

東京在住の詩人パーレニーチェクが日本の日常風景をテーマに脚本を書き、チェコの美大生20人がそれをマンガ作品として制作したものです。

2021年にチェコセンター東京で開催された展示「logi チェコ・コミックに描いた日本の日常」で公開され、冊子も配布されたものになります。

もうすぐ開始されるサウザンコミックス第5弾もチェコ・コミックだし、チェコのマンガもとても気になります!


『雪屋-PHANTOM-』(雪の宿)

作:猫僧(中国)
発行:融创千万间

主人公の少女は母親がレイプされて生まれた。
少女は父親に似てきたために母親から首を絞められる。
意識を失った少女がたどり着いた「雪の宿」では願いを一つ叶えてくれるという…。

なかなかハードな始まり方をする作品ですが、面白いのが制作をしている「融创千万间」という会社。
中国・日本に拠点があるアニメ・マンガの制作会社だそうです。

本作は快看漫画でウェブトゥーンとして公開されています。


『BLOOD TIES』(血縁)

作:Yitan(ジータン)(チリ)

日本在住(?)チリ人アーティストによる本格ジャパニーズ・ホラー・ウェブトゥーン『3.33時の話(3.33 AM STORIES)』の中の短編です。

主人公の女性が目覚めると、古びた日本家屋の廃墟にいた。
この家に何やら見覚えがある、と思ったとき人影が横切り…。

とにかく画力がすごい!

作者のインスタには日本漫画のファンアートもたくさんアップされていて、とても楽しいです。


『友情の泡』(Friendship bubbles)

作: Toku!(ペルー)

こちらの作品は情報を検索しても見つかりませんでした…💦
情報をお持ちの方は教えてください!


『谷围南亭』(ホーンテッドホテル鬼南亭)

作:墨飛(Mofei)(中国)
発行:快看漫画

2018年から2021年まで快看漫画で連載されたウェブトゥーン。

主人公の美大生が宿泊したホテルは、なんと300年前の死霊の世界につながっていた!
7億PVを超える人気の中華ホラーファンタジーです。

なんとこちらの作品は2021年末からLINEマンガで先行配信されています!
出版権を小学館が獲得しているようなので、単行本がいずれ発売されるのかもしれません。

作者の墨飛(Mofei)さんの作品は少年ジャンプ+でも読めます!


『The Philosophy of Gachapon』(ガチャポン哲学)

作:Summerluckkim(タイ)

こちらも作品の情報も出てきませんでした…💦
作者さんのインスタグラムにはたくさんのかわいいイラストや、日本アニメ・マンガのファンアートを見ることができます!


『白蚁』(白蟻)

作:采蘑菇的司马公公(中国)
発行:漫友文化

作者さんのWeiboや情報は出てくるのですが、この作品は検索されません…。

最近絵柄を変えたっぽいのですが、水墨画っぽいイイ感じの絵柄です。
涂鸦王国(中国のpixivっぽいサイト?)でたくさんイラストを見ることができます!


『The African child versus covid-19』(COVID-19と闘うアフリカの少年)

作:Cyprien Kondi Sambu(ブルキナファソ)

こちらも情報が見つからない作品です…。
アフリカでの新型コロナウイルスのストーリーというのはとても興味深いです。


『異人茶跡4 茶迷大稻埕』(異人茶跡4:茶に夢中 大稻埕)

作:張季雅(台湾)
発行:蓋亞文化

19世紀、台湾の烏龍茶を世界に広めた立役者であり台湾茶の父と呼ばれる二人の人物を描いた歴史もの!

台湾アイデンティティを追求する作品をたくさん掲載しているCCC創作集でこの作品が読めます!

『異人茶跡』は台湾のマンガ賞金漫賞に何度も入賞していますね!

第1巻の邦訳が昨年までは電子書籍で発売されていたのですが、いまはちょっと読めなさそうです…。


『蜉蝣之島 Mayfly Island』(カゲロウの島)

画:葉長青 Evergreen Yeh(台湾)
作:李尚喬 Li Shang-Chiao(台湾)
発行:慢工出版社 Slowork Publishing

気候変動で大陸が海の底に沈んでしまった近未来。
台風をともなって移動する浮島「蜉蝣」は人々に不吉なものとして恐れられていた…。

アニメ制作スタジオ「Studio REALS」企画の台湾オリジナルアニメ『蜉蝣之島』の前日譚として制作されたものだそうです。
アニメもちょっと気になりますね。

どうやらこのアニメの前進にあたる「KRAFT」という作品は2017年にクラウドファンディングをして失敗に終わっているようです…。新たに再スタートしたのが『蜉蝣之島』のようですが、雰囲気は伝わってきますね。

今回の入賞作品については、以下の太台本屋さんのご紹介に詳しいです!

こちらのサイトで日本語の試し読みもできます!

発行している出版社「慢工出版社 Slowork Publishing」は、海外マンガ情報誌『漫海』創刊号でイラストレーターのかつしかけいたさんが興味深いとおっしゃっていた出版社!そういう意味でも気になります!
『漫海』のかつしかけいたさんのインタビュー記事は本当に面白いので、こちらもぜひお読みください!


『Ama : Le souffle des femmes』(海女 女たちの息吹)

画: Cécile Becq(セシール・ベック)(フランス)
作:Franck Manguin(フランク・マンガン)(フランス)
発行:Sarbacane

こちらで最後の作品です!
なんと日本の「海女」を題材にした作品です!

1960年代後半、東京出身の女の子が小さな離島に行く。
そして海女のリーダーをしている女性の養女となり、海女として生きる。

この作品を出版しているSarbacaneは、最近フランスのマンガ賞でちょくちょくみかける出版社です。


~*~

ざざっと見てきましたが、いかがでしたでしょうか?
私も読んでいるのは1冊だけ。検索しても情報が出てこない作品もありましたが、なかなかにバラエティ豊かで面白い作品ばかりでしたね。
ウェブトゥーンやアニメと連動した作品があったのも興味深いです。
日本語や英語で読めるものもあるので、気になる作品はぜひ読んでみてくださいね。

それではみなさん、引き続き海外マンガを楽しんでいきましょう~!


海外マンガの情報発信とお店を続けていくために大切に使わせていただきます!応援よろしくお願いします!