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韓国ウェブトゥーン版MCU!?「スーパーストリング」とは何ぞや!

こんにちは!書肆喫茶moriの店主です!

2022年12月にAmazonプライムビデオで配信がスタートした韓国のマンガ原作ドラマ『アイランド』、みなさまご覧になられたでしょうか?

韓国・済州島にやってきた財閥の娘ウォン・ミホは悪鬼「情炎鬼」に襲われているところを謎の男バンに助けられる。さらに彼女のもとには退魔司祭ヨハンがやってきて…。済州島の歴史や伝説、密教やキリスト教などが交じり合うサイキック・ダーク・アクション!

原作マンガは、尹仁完(ユン・イナン)作、梁慶一(ヤン・ギョンイル)作画で日本でも2001年から2002年にかけて単行本化。
2022年12月から2023年2月にかけて新邦訳にて新装版全3巻が刊行された。

新装版で初めて『アイランド』を読んだのだが面白い!
さすがに20年以上前の作品ということである種の古めかしさは否定できないが(女性のファッションとか、作画の流行とか…)、とはいえヤン・ギョンイル氏の圧倒的画力!
済州島に点在するイースター島のモアイ像のような「トルハルバン」や、朝鮮王朝時代から伝わる妖怪「ベンジュレ」なども出てきて、民間伝承や怪奇もの好きにはたまらない。

ドラマ版は、原作マンガでは語られなかったバンの正体や、ウォン・ミホとの前世からの因縁、情炎鬼がウォン・ミホを狙う真相なども明かされて、原作マンガを読まれた方にぜひとも見ていただきたい!

あと個人的にはヨハン役のチャ・ウヌ君が…!(カワイイ!カッコいい!)
韓国のアイドルグループASTROのメンバーとのことで、私はK-POPにはまったくもって疎くって知らなかったんだが…良き…!

『アイランド』の原作マンガは、新装版の刊行と並行してウェブトゥーン・リブート版の連載がLINEマンガでスタートしている。

この『アイランド』、マンガもドラマも面白かったのでいろいろ気になって調べていたら、とある単語にぶち当たった。

それが「スーパーストリング」

「超ひも理論」? なにそれ?
と思って調べているうちに、韓国ウェブトゥーンでなにやら壮大なプロジェクトが進行していたことを知った。
そこで今回、記事にまとめてみようと思う。
(なお筆者は韓国語が全く読めない。誤読などがあればお知らせいただきたい…)

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同一の世界観<ユニバース>で複数のウェブトゥーンのキャラクターが共闘する「スーパーストリング」!

「スーパーストリング」『アイランド』の原作者ユン・イナン氏が設立したウェブトゥーン制作会社YLAB(ワイラップ。日本語読みではワイラボ)が企画・推進しているプロジェクトのひとつ。

複数のウェブトゥーン作品を同一の世界観<ユニバース>でゆるやかに連関させながら、各作品のヒーローをマーベルの「アベンジャーズ」のように一つの作品『SUPERSTRING(スーパーストリング)』へと結集させる…!

そしてマーベルでいうところの「MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)」とも言うべき映像化第1弾が、今回ドラマ化された『アイランド』なのだ!

ワイラップの日本語による紹介ページもご覧いただきたい。

マンガ形式で描かれた作品をウェブトゥーンにリブートしたものや、ウェブトゥーンとして新規に制作された作品が混ざっているが、以下では韓国でのウェブトゥーン発表順に日本語でも読むことができる作品を紹介していく。

WESTWOOD VIBRATO

ユン・イナン原作、金宣希(キム・ソンヒ)作画。
南アフリカ・ケープタウンにある楽器修理店「ウエストウッド・ビブラート」で楽器を修理する「コーネリア」を主人公とする音楽ドラマ。
日本では2010年から2012年にかけてサンデーGXで連載され、全4巻の単行本が刊行された。
『WESTWOOD VIBRATO』連載時点では「スーパーストリング」の構想はまだなく、この作品内で他の作品との連携はないが、後述する『テロマン』の中で本作のキャラクターが登場する。

私の夜はあなたの昼より美しい

2011年から2012年にかけてユン・イナン氏企画のもとYLAB名義にてグランドジャンプで連載された。連載時点では「スーパーストリング」の構想はなかったが、その後、続編がウェブトゥーンとして公開され(未邦訳)、『アイランド』のウォン・ミホが登場するなど直接的な関与が明らかになった。
ソウルの夜の街で生きるホステス「ハ・シウ」たちを描いたサスペンス。

深淵の空~DISTANT SKY~

『WESTWOOD VIBRATO』と同じユン・イナン原作、キム・ソンヒ作画コンビによる作品。LINEマンガ掲載。ユン・イナン氏のウェブトゥーン初作品であり「スーパーストリング」の幕開け的作品。
事故に遭い気を失っていた少年が目覚めると世界は崩壊し闇に包まれていた。出会った同級生「シン・ヘユル」、廃墟のソウル、暗闇で襲い掛かる謎の虫、スマホの明かりを頼りに主人公のサバイバルが始まる。
途中まで読んでいたが、とにかく闇が深い…!お部屋の明かりを消して、スマホの明かりだけで楽しみたい、ドキドキハラハラのサバイバル・ホラー。

プリンスの王子さま‐CAFE DE CHOCOLAT‐

残念ながらウェブトゥーンは未邦訳だが、ドラマの字幕版を日本でも見ることができる。

妹ユナが乙女ゲームにドはまりしたことに腹を立て、元凶のゲーム会社キャッスルソフトに乗り込んだ完璧人間の兄シヒョンだったが、社長のモンリョンは危険な男だった…。BLではないがBL臭を漂わせたコメディ作品であり、能力者が登場するわけでもなく、他の作品との関連性も明示されていない。「スーパーストリング」から除外されたという説もあるようだが、日本語紹介ページに作品名が残っているので本記事では紹介する。
なお「スーパーストリング」と同様に、同一世界観を有したロマンス作品を集めた「レッドストリング」の1作目でもある。(「レッドストリング」については後述)

BURNING HELL

『アイランド』のユン・イナン作、ヤン・ギョンイル作画コンビにより2008年にビッグコミックスピリッツにて連載。連載当時は「スーパーストリング」の構想はまだなく…以下略。
日本の極悪犯罪者「ジュウ(ジュー)」は韓国の極悪人に出会う。ふたりの犯罪者の激闘を描いた時代劇。
なお併録されている『神の国』はNetflixドラマキングダムの原作マンガ。

テロマン

HAN DONG-WOO(ハン・ドンウ)作、KO JIN-HO(コ・ジンホ)作画、LINEマンガ掲載。
「スーパーストリング」の他の作品のキャラクターも多数登場し、最も重要な作品と言える。
気の弱い少年「ミン・ジョンウ」は不幸を「見る」超能力を持っていた。ある日、家政婦のリリアとともに向かったデパートで来店客を巻き込む不幸を見てしまい、人々を救うために「テロリスト」となる決心をする。

読み始めたがめちゃ面白い…!
人々の不幸を見てみぬふりができない心優しき少年がテロリストの汚名をかぶり警察に追われるわ、真犯人にも狙われるわ。ジョンウに味方する謎の格闘家政婦リリアやその知人のボンチュン(どんな知人なのかは謎)のキャラクターも楽しい。不幸を「色」として判別することができるという設定もフルカラーのウェブトゥーンならでは。

復活する男

チェ・ヨンテク作、キム・ジェハン作画、LINEマンガ掲載。
『テロマン』と並び「スーパーストリング」でトップ人気を誇る作品。『テロマン』とのクロスオーバー(共演)作品『テロ対復活』(後述)も制作されており、重要作品のひとつと言える。
無職で借金だらけの男「ソク・ハン(ソク・ファン)」。ある日借金取りに殺されたソク・ハンは3日後に生き返っていた。死んでもなぜが3日後に復活する男ソク・ハンのアクション・バトル。

アイランド

冒頭でも紹介したユン・イナン作、ヤン・ギョンイル作画『アイランド』
ウェブトゥーン版にリブートされ、第2部からは「スーパーストリング」の世界観を反映させた続編が新たに描き下ろされている。
ドラマは意味深で続編を感じさせるラストだったし、ワイラップの公式ページでも『アイランド』の主人公ウォン・ミホが、マーベルにおけるS.H.I.L.D.やトニー・スタークのようなスーパーヒーローたちを取りまとめるような役回りなのかと思わせる重要人物として紹介されている。
新装版の刊行、ドラマの配信と同時期に日本のLINEマンガでも連載がスタートした。現時点(2023年3月)ではまだ第2部まで公開されていないが、ぜひとも第2部も邦訳してほしい。

新暗行御史

ユン・イナン作、ヤン・ギョンイル作画作品としては日本での代表作とも言える。2001年から2007年にかけてサンデーGXで連載され、単行本全18巻が刊行された。「暗行御史(アメンオサ)」と呼ばれる秘密の官吏が悪を挫き人々を救う勧善懲悪ファンタジー。
ウェブトゥーンにもリブートされLINEマンガで掲載されている。ウェブトゥーン版ではラストが変わっているらしい。

カンタウ

イ・ジョンムン原作、シン・ヒョンウク作、ヤン・ギョンイル作画、LINEマンガ連載。
『アイランド』『新暗行御史』のヤン・ギョンイルが描く巨大ロボットSF。
1976年に描かれたイ・ジョンムン作の韓国ロボットマンガの記念碑的作品『鉄人カンタウ』を原作としており、少年が巨大ロボットに乗り込み宇宙からの来襲者と闘う。
とにかく作画がすごいのでヤン・ギョンイルファン、ロボットファンは一読いただきたい。

ハウスキーパー

『復活する男』のチェ・ヨンテク作、柚弦(ユヒョン)作画、LINEマンガ掲載。
AIロボットが異常に発達した世界。少年ネビルはスクラップヤードで廃棄された家庭用メイドAIを拾い修理して「ハスティ(ハスティー)」と名づける。しかし人類は謎のウイルスに侵されてゾンビ化していっていた。そのときハスティがとった行動は…?

P.V.P

ヘソン原作、イ・ソクジェ作画、LINEマンガ掲載。『復活する男』に登場する「チョン・ヨンハ」を主人公とするスピンオフ作品で、チェ・ヨンテク氏がプロデューサー。
最強の男になりたい高校生ヨンハがハンリム道場で鍛錬に明け暮れるバトル・アクション。

テロ対復活

『テロマン』のHAN DONG-WOO(ハン・ドンウ)作、KO JIN-HO(コ・ジンホ)作画、LINEマンガ掲載。
『テロマン』の「ミン・ジョンウ」と『復活する男』の「ソク・ハン」、ふたりのヒーローが出会う、「スーパーストリング」最初の大型クロスオーバー作品。(※クロスオーバー:他作品のキャラクターが共演すること)
『アイランド』『新石器女(未邦訳)』『ELECTRONICS HORROR(未邦訳)』の主人公たちも登場する。

ジャングルジュース

ヒョンウン原作、ジュダー作画、LINEマンガ掲載。『カンタウ』のシン・ヒョンウクがプロディーサー。原案は2007年にユン・イナン作、ヤン・ギョンイル作画で少年サンデーに掲載された『JUNGLE JUICE!』
人気者の大学生「チャン・スチャン(ジャン・スチャン)」には秘密があった。それは謎の薬物「ジャングルジュース」によって昆虫の能力を手に入れてしまったこと…。

※※※

『新石器女』『ELECTRONICS HORROR』などの未邦訳作品もあるものの、今回調べてみて意外に日本語でも読める作品が多いことに驚く。
ユン・イナン氏がLINE Digital FrontierのCCOを務めていたこともあるためかLINEマンガで読める。気になるものはぜひお読みいただきたい。

2023年ヒーロー大集合のアベンジャーズ的作品『SUPERSTRING』始動!?

さてこのようにさまざまな「スーパーストリング」関連ウェブトゥーンが公開されているが、その集大成ともいえる、マーベルでいえばアベンジャーズ的なものになるだろうと注目される作品が2023年中にLINEマンガで配信開始予定になっている。
それがユン・イナン作、Boichi作画の『SUPERSTRING』だ。
2022年6月にLINE Digital Frontierのプレスリリース記事が公開された。

作画のBoichi氏はORIGINで「第22回文化庁メディア芸術祭マンガ部門」大賞受賞、稲垣理一郎作のDr.Stoneはアニメ化もされご存じの方も多いはず。ものすごい画力のBoichi氏のウェブトゥーン作品ということで否が応にも期待が高まる。
ストーリーは「多様な次元のヒーローたちが地球で戦争を繰り広げる世界で、家族を守るために孤軍奮闘する、ある青年の話」とある。果たしてこれまでの作品のヒーローたちがどのように関連してくるのか、本作の主人公である「青年」とはいったいどのような人物なのか、公開されたスチールカットの人物は誰なのか、いまから楽しみでならない。

※2023年7月25日追記。
『スーパーストリング-異世界見聞録』は4月発売のサンデー21号より誌面版が連載されるとともに、7月25日にウェブトゥーン版がLINEマンガにて掲載開始された。なお、誌面版の単行本第1巻は8月18日発売予定。

「スーパーストリング」他メディア展開は!?

冒頭でご紹介した『アイランド』ドラマ化のように、「スーパーストリング」作品はウェブトゥーンのみならずドラマ、アニメ、映画と他メディアへの展開が計画されている。

そのひとつが2021年に配信されたスマホ用RPGゲーム「SUPER STRING」だ。日本語対応もしていたのだが、残念ながらサービス終了してしまった。

映像化としては第1弾ドラマの『アイランド』が2022年12月にAmazonプライムビデオで配信されたことを冒頭で紹介したが、第2弾と考えられるのが『テロマン』の2Dアニメだ。放送日は未定ながら、3月13日に予告編動画がアップされた。

それ以外に制作準備中なのが『復活する男』実写映画化、『ハウスキーパー』3Dアニメ化。
『深淵の空』のドラマ、『テロマン』映画、『アイランド』の3Dアニメも契約締結はされているようで続報が楽しみだ。

同一世界観<ユニバース>を共有する「ブルーストリング」「レッドストリング」

「スーパーストリング」は超能力を持ったスーパーヒーローが結集するシリーズであるが、ワイラップでは同様なウェブトゥーン群として「ブルーストリング」「レッドストリング」も展開している。

ブルーストリングはワイラップの2番目の世界観。10代20代の青少年の日常や青春がメインテーマになっている。
レッドストリングのターゲットは女性読者だ。「運命の赤い糸」をテーマにロマンス作品を中心としたラインアップになっている。

スーパーヒーローものはアメコミのマーベル、DCはもちろん、日本公開もされたインドネシアコミック原作の映画グンダラ・ライズ・オブ・ヒーローが出版社ブミランギットによってMCUならぬBCU(Bumilangit Cinematic Universe)を展開しているように比較的馴染みがある。

しかし青春ものやロマンスものウェブトゥーンでどのように世界観をつなげていくのか、アベンジャーズ的な展開もあるのか、とても興味深い。
「ブルーストリング」「レッドストリング」「スーパーストリング」ともなにやら関りがあるようなので、また機会があればまとめてみたい。

なおワイラップのWebサイトでは300ページ超の『ワイラップ・ユニバース百科事典』が無料公開されている。「スーパーストリング」のみならず「ブルーストリング」「レッドストリング」作品についても詳細が書かれているようだ。韓国語を解さない筆者にはちんぷんかんぷんであるが、興味のある方はご覧いただければと思う。

【参考記事】

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