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【エッセイ】燃え上がる夕日のように

真っ赤な太陽の光が、自分の体を包み込んでいく。まるで、気分が沈んでいることを、責められているようだ。失敗続き、嫌いなことの多い人生だったが、この瞬間だけは行き急ぐ必要があるように思えて仕方ない。

なぜなら、自分と中心にして燃え上がるような感覚。火刑にでも、されているような、そんな錯覚を覚える。視界が徐々に染まり、唐突にその世界は、業火の灯へと姿を変える。

僕は普通に生きているだけなのに。その事実を、非難されているような、そんな気さえしてくる。
そんな僕の隣を、子供たちは楽しそうに走り抜けていく。世界が赤く染まることが、良いことのように。特別で、楽しくて、うれしいことのように。まっすぐと、「まぶしー!」と元気いっぱいに叫び、夕日に向かうのだ。

そんな彼らの元気さを、活力を、僕はいつの間に失ったのだろう。休日は引きこもり、平日は仕事に向き合う。ただ、それだけの毎日。特別なことが起こるかと、何か変わるのかと、ただ老人のように待ち続ける毎日だった。

そんな自分を自覚しているからこそ、心の声が自分を批判するのだろう。だからこそ、「待つな」と太陽にすら責められる錯覚をする。危険色は、僕の心の声を映し出しているようで、なんだか心強い。

僕の心は、夕日のように燃えた。激しく燃え上がり、別人のように走りだそうとした。それまでの僕を、置き去りにして。体ではなく、心が一歩踏み出したのだ。

まぁ、すぐに転んだけど。ちょっとだけ、痛かったな。
でも、その痛みは成果だ。自分が踏み出した証だ。何も恥じることはない。あの地獄の業火に感じた、明るい光はもうない。そこにあるのは、真っ暗な闇だけだ。頼りない、淡くぼんやりとした明かり。それを頼りに、今度は少しだけ傷を負いながら、自分をさらけ出し始める。

ここからが、僕の時間だと。僕の、生きる時間が始まったといわんばかりに。
その薄暗い、頼りない光をもとに、今日も僕は歩き始める。また、明るい世界があると信じて。その淡い希望を、自身の胸に抱きながら、ただ歩くのみ。


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