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『身体が生み出すクリエイティブ』クリティブの源泉は「頭」ではなく、「身体」

「クリエイティブになりたい」そう願う人は多いのではないか。

クリエイティブな行為というと、一部の特別な能力を持った人がなせることのように思われがちだが、著者はそれを否定し、日常生活で溢れているというという。

本書ではクリエイティブな行為がどのようなプロセスを経て起きているのかを探求していく。著者はクリエイティブにおける仮説として、頭による知識の適用ではなく、身体による体感への着眼をもとに、独自の解釈をすることであると主張する。

本書は会話の相槌や車の運転などの日常生活における行為や、デザイナーやお笑い芸人といったクリエイティブな職業人の事例をもとに、クリエイディブな行為のプロセスを探求する。中でも、『IPPON グランプリ』の大喜利の実例が面白い。

テレビで実際に放映された題材をもとに、筆者自身が仮説検証のためにおこない、それを時系列で紹介されている。

実施当初の解答はお世辞にも面白いとは言えないないものだったが、発想の起点が頭から、身体(その場面を追体験する状態)への変容するにしたがって、解答の質が変化していく。

これは自分で挑戦するには少し恥じらいがある事例だが、筆者の思考の変化をともにたどっていくのも本書の楽しみの一つである。

「研究のタネを常に日常生活の中から見つけることを是として、知能の研究をしてきたと」いう著者だけあって、本書では、日本酒の味わいの解釈や、料理の作り方、街歩きや野球などの、筆者のあらゆる日常生活での行為における着眼と解釈が紹介されている。

それぞれが本書にとって必要な事例であるのだが、これほど多様な体感に対して、考えを巡らせている著者の生活にも興味が湧いてくる。

本書はクリエイティブについて学びたい人にはもちろんだが、クリエイティブは程遠いと諦めてしまっている人にこそ、オススメなのだ。

本書に書かれている「身体による体感への着眼をもとに、独自の解釈をすること」は今すぐできることであるが、実行したとしてもすぐにクリエイティブな発想が得られるようになるわけではない。

日々の生活の中でその感覚を育み続けることが重要だ。本書の中で紹介されている具体例を追体験することが、クリエイティブな能力を育むための第一歩かもしれない。


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