『嫌われる勇気』自分が変わる心理学
世の中はとてもシンプルであり、人生もまたシンプルである。
それは人が客観的な世界に生きているのではなく、自らが意味づけをほどこした主観的な世界の中で生きているからだ。
だからこそ、自分自身が変われば、世界はシンプルな姿を取り戻すという。これがアドラー心理学の核となるメッセージである。
では、自分自身が変わるためにはどうすれば良いのか。
その答えが「嫌われる勇気」だ。
本書は哲人と悩める青年の対話を通じでアドラー心理学を紹介する。
自分自身が変われば世界はシンプルな姿を取り戻す、といわれても、簡単にはいかないだろう。なぜなら、人には過去のトラウマや未来への不安、対人関係における劣等感があるからだ。
しかし、アドラーはこれらを否定する。
アドラー心理学では、「過去に〇〇があったから、現在××である」といった「原因論」を否定し、「現在××であるのは、自分に□□という目的があるからだ」という「目的論」を提唱する。
つまり、過去のトラウマや未来への不安、他者への劣等感自体が問題なのではなく、その背後にある自分の目的が問題であるということだ。
この目的論を理解すれば、自分が変われば世界がシンプルな姿を取り戻すということが腑に落ちるだろう。
本書の中での対話は、読者の疑問や反論を代弁してくれる。悩める青年の、哲人の回答に対する困惑や感情的な反応がなんともリアルに思える。
書籍に向かい合う自分を、二人が対話をしている場に同席しているイメージで読むと、臨場感が湧いてさらに面白く読めるだろう。
内容もさることながら、各章に挿入されているイラストも、物語の流れや、青年の心境の変化な見事に表現している。一見の価値ありだ。
この本は、現状に不満を感じ、一歩踏み出したい人に読んでほしい。幸福に関する哲学に触れたい人にもオススメだ。
原因論から目的論への転換は、理屈ではわかるが実施は難しいだろう。なぜならば、目的論においては全てが自分の責任になるからだ。
本書の中で、「馬を水辺に連れていくことはできるが、水を呑ませることはできない」という言葉が紹介されているが、『嫌われる勇気』はあなたを水辺に連れて行ってくれることだろう。
あとは、あなたの勇気次第である。
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