暗がりの顔
仕事帰りにコンビニに寄り、ポテチや鯖缶など適当に食べ物を買って家路につきました。
ほんの気まぐれで、いつもとは違うルートを通りました。表の通りと比べて街灯が少なく、薄暗い道です。
疲労のためぼうっとしたまま歩いていると、前方に何か白く光るものが見えました。何だろうと目を凝らしますが、遠くてよくわかりません。
それは徐々に近づいてきます。そしてようやく、その正体がわかりました。
青白く光る、女性の顔でした。それだけが、暗がりにぼんやりと浮かんでいます。
ぎょっとしました。手のひらにうっすら汗がにじみます。
しかしよく見ると、それは成仏することができずにこの世を彷徨う幽霊などではなく、生身の人間でした。ああよかったと、少しほっとします。
その女性は、視線が下を向いており、何かを操作しながら歩いているようでした。あれはおそらくスマートフォンだったのでしょう。その光が顔を照らしていたのです。
こちらを気にすることもなく、そのまま女性は去って行きました。
なんだよ心臓に悪いな。心の中で文句を言い、ため息を1つつきました。皆さん、くれぐれも歩きスマホはしないようにしましょう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?