スマホによる注意の分散
スマホによっていつでも他者の情報に触れられる「常時接続の世界」で、どうすれば刺激に埋もれず大事なものを育てていけるか、というヒントが詰まった本ですね。
著者である哲学者の谷川嘉浩さんは、
・注意の分散に抵抗しよう
・孤独を持とう
というメッセージをこの本を通して発信されていました。
スマホのある生活に慣れ、無意識に手が伸びたときに「これはよくないな」と薄々感じていましたが、この習慣による弊害の1つが「言葉の使い方」であるそうです。
現代アメリカ哲学者のロバート・ブランダム氏の言葉を引用され、
「概念の把握は、語の使用の習得である」
といい、ある見方を身につけることは、その言葉の使い方を身につけることだといいます。
スマホで常に新しい情報に触れることは、まだ身についていない言葉を安易に使用するリスクが増えることにも繋がるのですね。
著者は大学院時代に先生から、
「たとえば?」「具体例は?」
と何度も質問されることで鍛えられたそうです。日頃から自分にこう問いかけることは、注意の分散に抵抗するための1つの方法になるのですね。
さらに、持続的なものを作り育てていくために「自治」の領域を持つ、という考え方を紹介されていました。
自治というのは独特なキーワードですが、外の影響から一度離れ、自分なりの仕方で、その場で許される限りの良いものをつくる、ということだといいます。
たとえば日常で実践する場合、
・延々と書き直す
・反復する
という行動を必要とする領域を持つと良いようです。
私の場合は企画書やプレゼン資料の作成がこれらにあたりますが、この本を読んでから意識的にこの時間をとると、
・しっくりくる or しっくりこない
・自然な感じがする or 不自然な感じがする
・心地良い or 違和感がある
というように、言葉と自分の関係がより深まっていく感覚があります。
スマホなしの生活や仕事はもう考えられないですが、「自治」の領域の時間を確保すると、スマホで得た情報をもっと有効に活用できるのかもしれないですね。