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『「西荻だから住めている」という自覚がある。』

BREWBOOKS店主 尾崎 大輔さん インタビュー(2022.6.8)



-お店の奥の棚には、いろんな屋号のついた本棚がありますね。

尾崎 これは「シェア型本屋」とか「間借り本屋」と呼ばれる形態の一つで、うちは、新刊書店ですが開店当初から一部の棚を、個人の方等に貸し出しています。現在、29枠のスペースがありますが、並べ方は自由であり、そこに個性が現れています。ご自身の蔵書を並べる方もいますし、あるテーマを定めて本を並べる方もいて、見ているとその人を感じ取れるおもしろさがあります。

久我山の地ビールと、個性あふれるシェア本棚


 
-たしかに、人となりが浮かんでくるような感じがします。
    本屋そのものはいつ頃からやっているのですか。

尾崎 2018年10月末に開業しました。もともと会社務めでしたが、以前から西荻で暮らしていて、「いずれこのまちと関わりのある仕事をしたい。」と思っていました。小さい頃から、こじんまりしたお店にあこがれがあり、自分が好きな本とビールを置くお店をしようと思い至りました。

-2階にもスペースがあるのですか。
尾崎 はい。2階は、たたみが敷かれたスペースになっていて、普段は、ビールを飲むことができる他、月に数回、読書会や句会、漫画を読む会や短歌の会などを定期的に行っています。お店で主催する形ですが、句会などは常連さんと話す中で立ち上がった企画で、初心者歓迎。継続して参加している人と新規参加の方の割合はだいたい7:3くらいになっています。

-おもしろそうですし、気軽に参加できそうです。
   1階にはどのような本が並んでいるのでしょうか。

尾崎 特にジャンルを定めていないので幅広いのですが、文芸が多めで、国内外の小説やエッセイを置いています。人文系は社会学やコミュニティ、芸術関係などがあります。

立ち寄りやすく、本を手に取りやすい店内

特徴的なのは、“ZINE”‘(リトルプレスや同人誌と呼ばれることも。)を置いていることでしょうか。出版社に頼らずとも、自分で本がつくれる時代となって、作家だけでなく、伝えたいことがある人の一つの表現の形とも言えると思います。都内では年に2回ほど“文学フリマ(文学作品展示即売会)”が行われていて、私もZINEを作って参加したり、そのイベントで知り合った人のZINEを店頭で販売させていただくこともあります。ZINEが大きな売上になることはあまりないですが、直接作り手とやりとりすること自体も楽しんでいます。

一人ひとりの表現がつまった”ZINE”の棚

-本屋として大事にしていることがあれば教えてください。
尾崎 やはり、「お客さんをだますような本は置かない」ってことでしょうか。例えば、政治的な偏りや差別を含む本や、科学的根拠に乏しい医療関係の本などふつうの感覚なら置かない本は、私自身も関心がないので置いていません。

-先ほど、西荻のまちを好んで住んでいるという話がありましたが、
    地域への思いなどお聞かせください。

尾崎 自分には、「西荻だから住めている」という自覚があって、いま話題になっている道路拡張などの影響で、もし駅前が別の街と同じようになってしまうとしたら、この場所でお店をやることの意義が失われてしまうと思います。
道路拡張や再開発に関しては、聞いているといろんな意見があり、一概にこうすると良いということを言うことは難しい、ということも現実だと思います。例えば、私のように一人暮らしであれば、気軽に通えるお店も、子どものいる世帯にとってはベビーカーが入れたり、子どもと一緒に来ていい場所は限られる。そんな話をお客さんから聞くと、まちの違う側面もみえてきます。

こうした、さまざまな立場のひとの意見を聞きながら調整することは時間もかかりますが、それこそ、政治家の仕事だとも思うので、難しいことだけど、期待はしたいと思っています。

本棚を整理する店主の尾崎さん

お店情報:BREWBOOKS
営業時間:平日・土 12:00 – 22:00 / 日祝 12:00 – 20:00
※新型コロナウィルス感染症の影響を踏まえ、しばらくの間19:00クローズとさせて頂きます。
定 休 日:毎週月曜、第2火曜、第4火曜
所在地:杉並区西荻南3−4−5
https://brewbooks.net/


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