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黒猫とさち オリオン座の帰還

なんだか今夜は眠くないなぁ
さちはベットで一人ゴロゴロしながら呟いていた
『おもしろい事が起こる気がする
何せ今日は黒猫がわたしの前を横切ったし』
誰に言うわけでもないのだけれどつい声に出してしまう

黒猫が横切ったら良くないことが起こるとは昔々言われていたけど良いことが起こるとは聞いたことがない

昼下がりのこと
なんだか今日は寒いし、ココア飲んで温まろう
お気に入りの星空のカップを取り出しココアを小鍋に入れた
あれ?!ミルクが無い!
そうだ、昨日のよるにシチューに使ったんだ
「あーもー。」
ココアはあきらめて紅茶にしようかなぁ
でも鍋にココアいれちゃったし、、、
口もココアだし、、、
仕方ない、買いに行くか。
ココア色のコートを手にして玄関に向かった
外はやっぱ寒い、やめればよかったよ

その時
目の前を黒猫が横切った
振り返った黒猫と目があった
綺麗なラベンダー色の瞳
瞳の色と同じラベンダー色のリボンを首に着けている
ちょっと古風だけど豪華なリボン
どこかの飼い猫だろうな
毛艶も良いし

「ニャーオーン」
さちを見つめながら黒猫が澄んだ声で鳴いた

『摩訶不思議なことに出会えるよ』
頭の中で声がした
びっくりして黒猫をまじまじ見つめながら「あなたが言ったの?」と聞いてみた

猫が喋るわけないし我ながらばかげているとは思ったけど他に生物はいないし

わたしの問いに応えるように今度は短くニャーと鳴いてどこかへ行ってしまった

買い物でも夕飯でも何もおこらなかった
やっぱり昼間のことは幻でもみたのかな
最近、疲れているし
もう寝ようっと
ベッドに入ったけどなかなか眠くならない

ドンと遠くで音がした
でもそれ一度きり
雷なわけないし何か大変なことならサイレンが聞こえるはず
気のせいかな

「ニャー」
この声は昼間の黒猫
気のせいではない
ううん、ぜったい間違いない
さちはベッドから飛び出して黒猫を探した
あ、いた!
廊下の突きあたり窓の近くに黒猫はいた
豪華なラベンダー色のリボンが月明かりでキラキラしてる
『一緒に行こうよ
摩訶不思議なこと起こったよ』
黒猫は楽しそう

気がつくと黒猫に先導されながら街の中心の噴水へ向かっていた
不思議と寒さは感じない


噴水の水中が輝いている
噴水を覗きこむと一段とキラキラした琴のような形のものが光っている
迷わず手を入れてそれを拾った
さちが抱えられるくらいの大きさだけど驚くほど軽い
羽の方が重いくらいだ

『さち、オリオン座を空へ戻してくれるかい?
酔っ払って空から落ちたみたいだから。
今夜は冬の星座達で久しぶりの酒盛りだったんだ。
酒に弱いくせに好きだからさ。
きっと今ごろカシオペアはカンカンだな。』

「どうやって戻すの?」

「あぁ、空を見上げてみて。
おおいぬ座の横に真っ暗な夜空があるでしょう?
青白く光るシリウスめがけて投げあげれば
後は星々が引き上げるから。」

さちは黒猫の言う通りにオリオン座を投げ上げた
一瞬目が眩んだ

「さち、ありがとう。
夜空はいつもの夜空に戻ったわ。
あなたのおかげよ。」
鈴をころがすよう声がした

夜空を見上げるといつもと変わらないオリオン座が瞬いていた

「さあ、家に帰ろう。」
黒猫が月明かりに輝いていた


うーん、朝か
なんだか変な夢見てたな
酔っ払って空から落ちたオリオン座とか喋る黒猫とか怒るカシオペアとかさ
今朝はミルクティーがいいかなぁ
大きなカップで甘〜いのにしよう

お気に入りの星空のカップを棚から取り出す
「あれえ⁉︎」
さちのお気に入りのカップにオリオン座が増えていた

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